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計画には書けないこと

 福祉サービスを利用していく中では

「アセスメント」を行ない、「計画」に基づいてサービス利用をしていく。そして、定期的に「モニタリング」でサービスの達成度を確認していく

 ことは、当たり前のように行われている。

 ただ、利用者と話し合った内容が「すべて」計画に反映されているわけではない。

「これから、どんな生活がしたいですか」
「サービスを利用して、どんなことができるようになりたいですか」

 と、相談員は聞く。そして、利用者は

「自宅で静かに暮らしたい」
「仕事をしたい」
「○○ができるようになりたい」

 と、答えるかもしれない。
 ただ、本人の希望であっても「計画」に載せにくいこともある。

「この事業所を辞めたい」
「早く死にたい」
「何もしたくない」

 「前向きな」「ポジティブな」計画を目指しているが、「後ろ向きな」「ネガティブな」計画になることもある。では、なぜ載せてはいけないのか。

 1つは『自立支援』という言葉の押しつけみたいなことである。もう一つは『支援者の責任』『利用者の責任』である。

 福祉サービスを利用して、お金が関係していることだから、少しでも役立てないといけないと思っている。また、利用者も支援者もポジティブな方向を見て支援しているから、ネガティブな面を見せてしまうと、メンバー間のまとまりがなくなってしまう。

 ただ『利用者の意思尊重』と考えると、ネガティブな意見も出てきてしまうことは、予想できる。そうなると、支援者は、その言葉を聞きながらも、何とかいい方向に向かわせようと考える。

本当の思い

 利用者本人は、本当に「ネガティブに」思っているのかも考えないといけない。「なぜ」そう思ってしまったのか。背景には何があるのか。

①周り(家族、社会)からの影響
 「あなたには無理」と思ったり、「周りの人の方がすごい。自分なんて…」と、自分を低く見てしまう。周りのことは気にしなくてもいいと言われるけれど、どうしても自分の位置が気になってしまう。

②体調の波
 精神的に落ち込んでいる時に、聞き取りをしてしまった。何も考えたくない時に、あれこれ聞かれてしまうと、適当に答えてしまい、あとで後悔する。
 支援員は、利用者のちょっとした仕草にも注意する。

③構ってもらいたい
 「こんなことを言ったら、自分に目を向けてくれるかな」と大げさに意見を言うことで、構ってもらいたい。だけど、支援員はそこも良く分かっていることがあるから、サラッと対応するとますます大げさになっていくかもしれない。

④サービスに対する不信感
 「こういうことしかしてくれないんでしょ」と、サービスを利用する意味を理解しておらず、自分の希望通りにできないことに対する不信感につなげていく。

 だけど、本当に「福祉サービスなんて使いたくない」「自分のやりたいことはこれ(福祉サービスを利用すること)では叶えられない」と思っていることもある。そんな時には、支援員が何を言っても利用者は同じことしか言えない。

「計画」には、福祉サービスのことしか載せてはいけないのか?

 そんなことはないはずだけど、どうしても「サービス優先」になってしまう。いざ、生活について書くとしても

生活上の課題が解決されることで、福祉サービスの利用につながっていく

何とか福祉サービスを「生活」に結びつけようとしている

 とも思える。

 福祉サービスでカバーできるところまでは、支援しようと思っている。例えば、「遊び」に関する課題が書かれているとしても、そこに向かうモチベーションを高めるために福祉サービスを利用することもあっても良いと思う。

 また、計画は「個人情報」を含んでいる。見た人にとっては望ましいことも望ましくないことも書かれている。精神衛生上よくないことも書かれていたとしたら、見た人は必死に止めようとする。また、市役所にも提出するとなると、ますます真面目なお手本みたいな計画になってしまう。

それでは、本人の言われるがままの「計画」にしてみると、どうだろうか?

 何とも伸び伸びとした、自由な?計画ができるはず、だけど、この計画が実行できるなら、福祉サービスは必要ない、と思う。そして、期限がないように思う。永遠にできるということは、サービスとして考えると、終えることができない=「未達成」になってしまう。そして、支援が十分になされていないとみなされてしまうかもしれない。

 そして、こんなことは書くのはどうかと思いますが、支援員としては「達成したくない計画」も存在しているのも確かである。達成してしまったら、その人とのつながりが切れてしまうような気がしてしまうから、次から次へと計画を作り上げていく。利用者にとっては余計なお世話になってしまう。
 また、達成できたとしても、本人の生活が良くなると決まっているものでもない。

 サービスを利用するには「こんな計画でなければならない」とは決まっていないはずなのに、どこかで本人の思いを無視しているような計画になっていないだろうか?
 計画に載せられないことであっても「本人の希望する生活」には間違いありませんので、様式にこだわらず「計画書(その2)」みたいなものを作ってもいいですね。

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