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本当に映画は終焉するのだろうか?

宇野維正さんの最新作『ハリウッド映画の終焉』を読んだ。

本当に映画は終焉するのだろうか。

この場合は大きな括りの「映画」ではなく「ハリウッド映画」ということなのだろう。

劇場にかかることを想定した映画
多額の予算をつけ、大勢のスタッフで制作される映画
そういった映画達だろうか。

宇野維正さんはReal Sound Movieチャンネルでの番組「Movie Driver」でもよく仰っておられる。

これまでの映画がなくなる。

だけど、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、Apple TV+などの配信サービスはオリジナルの映画やドラマのに力を入れている。
特にNetflix制作の映画は劇場向け映画と遜色のないもので、アカデミー賞ノミネート作品も多く出している。

2017年のポン・ジュノ監督『okja/オクジャ』はこれが配信サービス会社が制作したものなのかと驚いた。

翌2018年のアルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』はモノクロの絵作りに静謐な素晴らしい作品で、アカデミー賞でも驚きをもって迎えられていた。
現代の『クレーマー・クレーマー』のような作品『マリッジ・ストーリー』はそれぞれ主演男優・女優賞にノミネートされたアダム・ドライバー、スカーレット・ヨハンソンの新しい魅力を発見した。

マーティン・スコセッシとアル・パチーノが組んだ『アイリッシュマン』も重厚な作品だった。

レオナルド・ディカプリオがコメディに挑んだ『ドント・ルック・アップ』は重いテーマのSFを軽快なタッチで描いたお気に入りの作品だ。

ジェーン・カンピオン監督『パワー・オブ・ザ・ドッグ』も古き良きアメリカの時代設定に現代的なテーマを取り入れた作品で、ベネディクト・カンバーバッチの演技も素晴らしかった。

Netflixの制作する映画は、これまでの劇場向け作品とは何の遜色もない素晴らしい作品ばかりだが、これからも同じ予算配分で制作出来るのだろうか?というのは確かに心配になるところだ。
全米脚本家組合と俳優組合のストライキはこれまで一人勝ちをしてきたネット配信サービス企業に向けて、新しい映画上映のカタチに合った公平な利益配分などを求めるもので、今年度中には解決しないのではないかとも言われている。

主役級の俳優達以外の配分コストを抑えることで、多額の予算を確保してきた彼らは、これまで通りとはいかないのだろうか。

映画というフォーマットからドラマへシフトしてきているという話も聞く。
2時間超えが当たり前となっている映画というフォーマットに、TikTokに慣れ親しんだ若者達には厳しいメディアになるのだろうか。
『映画を早送りで観る人たち』という書籍もベストセラーになっていた。

2020年に公開されて溢れ出る映画愛を描いて清々しい作品だった『サマーフィルムに乗って』では、未来からやってきた若者が、
「僕の時代にはもう映画は無くなってしまった」
と言うセリフがある。
5分でも長くて、ショート動画のようなものしか誰も観なくなってしまった未来。

トム・クルーズが、スティーヴン・スピルバーグが、ジェームズ・キャメロンが、
最近だとドゥニ・ヴィルヌーヴが、
昔ながらの劇場で鑑賞する映画というフォーマットを最大限に活かした映画づくりに力を注いでいる。

それも最後のあがきなのだろうか。

日本国内での洋画の凋落具合もひどいものだ。
公開映画の興行収入ランキングとか、アニメと邦画が中心だろう。

歴代興行収入ランキングを興行通信社などの公式発表を基にしたWikiの情報をみてみよう。

  1. 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編

  2. 千と千尋の神隠し

  3. タイタニック

  4. アナと雪の女王

  5. 君の名は

  6. ハリーポッタと賢者の石

  7. もののけ姫

  8. ONE PIECE FILM RED

  9. ハウルの動く城

  10. 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!

10作品中7作がアニメ映画。
残る3作も『ハリーポッター・・』がジュニア向け、
『踊る大捜査線・・・』がテレビドラマ映画版
映画らしい映画といえば『タイタニック』だけじゃないか。

これは、2023年のランキングでもさほど変わらないだろう。
『THE FIRST SLAM DUNK』
『すずめの戸締まり』
『名探偵コナン・・・』
『映画ドラえもん・・・』
このあたりがランキング入りしているんだろう。

邦画だから、アニメだから悪い、という訳ではないだろうが、
海外作品も面白いものが沢山あるのに、観る人がほとんどいなくなって、
買付会社も大作や人気監督の作品にしか予算を割り当てなくなると、
映画ファンとしては残念だ。
せめて、都内の単館上映館はつぶれないで色んな映画をかけて欲しいと思う。

<了>

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