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映画「団地」を観ました、人情コメディかと思いきや。。

こんにちは、makoto です。

2016年公開と少し前の映画「団地」をamazonプライム・ビデオで鑑賞しました。

日曜としては珍しく子供たちが朝から不在だったので、午前中の掃除・洗濯が一段落したところで、妻と何か映画でも観ようか?ということになりました。
「2時間以内で、邦画で、コメディで」
あまり長くてシリアスなものだとすぐに寝てしまう(笑)という素直で正直な視聴者の妻のために、そんな条件で何本かチョイスしたものから、今作を選びました。

※ここから映画のネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
ちなみに、2022年7月24日現在、Amazonプライム・ビデオでは無料配信中です。あと8日間で無料配信が終了するようなので、ご興味のある方は是非ご覧になってください。


この映画を観ようか、という理由は今作で主役の藤山直美さんです。
彼女の出演されていたNHK連続ドラマ小説「芋たこなんきん」(2006)の再放送をしているのですが、妻がこれにはまっていて、
「藤山直美さんは芝居が上手いし面白いから」
という理由でした。

僕もこの「団地」という映画は公開当時、開演前の劇場予告で観たことがあって、「岸部一徳が団地の床下収納に隠れてしまって展開するドタバタ喜劇」という印象があったので
「きっと面白いよね!」
と思っていました。

なんせ、藤山直美さんといえば、長らく松竹新喜劇の看板スターとして関西を、いや日本を代表する喜劇役者の藤山寛美さんの娘さんで、今もご本人も松竹新喜劇に出演されていたと思います。
なので、面白くない訳がない。

大阪には、松竹新喜劇と吉本新喜劇の2大新喜劇があります。
今や吉本の一強ですが、僕が子供だった1970年代は、松竹新喜劇の全盛期でした。
土曜日半ドン(午前中だけの授業)から帰ってきて、テレビをつけると吉本新喜劇と松竹新喜劇が順番にやっていたので、関西の子供は毎週観ていたんじゃないかと思います。
吉本新喜劇が今と同じく芸人さんの持ちギャグで引っ張っていく軽演劇だとすると、松竹新喜劇は脚本がしっかりした時代劇設定の涙あり笑いありの人情喜劇が売りでした。

なので、やっぱり藤山寛美、藤山直美といえば、「人情モノ」という印象が強く、今作「団地」も予告編のコミカルな設定からすっかり人情モノだと思って観始めたところ、これがとんでもない不思議な味のSFモノになっていくので「そうきたかぁ!!!」って驚きました。

予告編の「岸部一徳扮する夫が団地の床下収納に、死んだことにしてくれ、と隠れる」という設定からのドタバタやポスター・チラシ、関西弁中心の掛け合い漫才のようなセリフの応酬、共演者の皆さんの演技、などルックはどうみてもコメディです。

舞台は大阪のとある団地(撮影ロケ地は栃木県足利市の団地だそうです)。
1人息子をバイク事故で亡くした藤山直美扮する山下ヒナ子と岸部一徳扮する山下清治夫妻は、家業の漢方薬局を畳んで、団地に引っ越してきます。
現在の集合住宅であるマンションではあまり見られなくなった、ご近所さん同士の井戸端会議からの噂話や、自治会など、団地で暮らしたことがある方なら懐かしいあるあるが満載です。

「そろそろ自治会長辞めたいなぁ、誰か代わってくれないかなぁ」
「だったら真面目そうな山下さんのご主人を他薦するわ」
と石橋蓮司と大櫛道代扮する自治会長夫妻の会話から、表向きは嫌がる清治も自治会長選挙に出ることなります。
自治会長夫妻の2人がとてもいいんです!石橋蓮司さんはいつものなんとなく頼りない憎めないキャラ、大櫛道代さんは嫌味のない上品なおばちゃんっぷりが素敵。

表向きは自治会長なんてと言いながら、持ち前の生真面目さで
「自治会改善案」などをノートに記して、選挙に望む清治ですが、結果は再び自治会長が再選されることになります。
その後、ご近所さんの清治への
「意外と人望なかったのね」
「根暗だし」
という噂話を耳にして、「ぼくは死んだことにしてくれ、もうイヤだ」と床下に隠れてしまいます。

清治は毎日裏の雑木林へ散歩へ行くのですが、そうした外出もピタリとなくなり2け月、ご近所の井戸端会議で
「こんなに長い間姿を見ないのはおかしい」
「妻のヒナ子が殺したに違いない」
「きっとバラバラにして捨てる気だ」
とどんどんご近所の妄想が大きくなってきて、終盤は警察を呼んだり、テレビ局にリークして取材が来たりとなるんですが、
山下夫妻の部屋の中はいたって平穏。誰かが訪ねて時以外は清治も普通に暮らしていて、夫婦漫才のような会話がかわされています。

そんな山下夫妻のもとに、斎藤工演じる黒いスーツの謎の男真城が訪ねてきます。
どうやら、漢方薬局時代からのお得意さんのようなのですが、その様子や喋り方がひと目みておかしい。人間ぽくない。
「え?この真城って宇宙人」
と思いましたが、
「流石にこんな団地舞台の人情コメディに宇宙人はないだろう、きっと「シンウルトラマン」での斎藤工の印象もフィルタかかってるんだろう」
とすぐに思い直しますが、どう見てもやはりおかしい。

それもそのはず、終盤、真城はやっぱり宇宙人(というか異世界人?、円盤でやってきて宇宙へ飛び立つからやっぱり宇宙人か)だったんです。
「やっぱり!」
と思いつつ、
「シンウルトラマンのキャスティングはひょっとしてこの演技を見た?!」
というくらいの、宇宙人なりきり演技がハマっています。
斎藤工はもう宇宙人役しか考えられないくらい。

そしてある日真城から、5,000人分の漢方薬の注文を受けます。
「自分たちの種族には山下さんの漢方薬しか効かない。日本中のそして中国まで行って色んな漢方薬を試したが、山下さんの漢方薬が一番だ」
どうやら、真城の種族は進化しすぎたために身体が虚弱で自然由来の漢方薬しか受け付けないようなのです。
そして、団地の一室で山下夫妻は2週間寝食を忘れて5,000人分の漢方薬を作ります。
漢方ってああやって作るんだ、と興味深いシーンもあります。
そして、近所の連れ子への虐待などの時事問題も取り上げながら、話は予想もつかないところへどんどん展開していき、最後は山下夫妻揃って、息子もいなくなったこの世界には未練はない、と真城達と一緒に宇宙船で旅立つことになるんです。

「おかえり!」
オーラスは死んだはずの息子が団地に帰ってきて、違うバースとして蘇った?と色んな解釈が出来る終わり方でしたが、
とにかく、日常からの荒唐無稽、まるで「世にも不思議な物語」に出てくるような話でした。
一昔前だと眉村卓さんの小説に出てくるようなコメディタッチの日常不条理SFでしょうか。
近作だと「散歩する侵略者」もこんな感じの映画でしたね。

「けったいな映画やけど、おもろかったなぁ。
 それにしても、関西弁ってやっぱりええなぁ」
と思いました。

それでは!



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