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丁寧?気配り?おせっかい?な日本

ある商業施設に行った時のこと、フロアの片隅で開催していた臨時店舗が閉鎖されて、その一画をテープで囲みこんな立て看板が置いてあった。


「準備中につきご迷惑をおかけ致しております。」

思わず二度見した。

ご迷惑をおかけ致しております。

いったい誰に「ご迷惑」をおかけするというのだろう?
確かにフロアの一画をテープで囲って入れなくすると迷惑がかかるような気がするが、この場所についてはそんな事はない。

テープで囲った一画の向こうが通路になっている訳でもなく、囲われていればそのスペースには立ち入れないというだけの話で、
そもそも一体誰がそのスペースに立ち入るのか。

全く誰にも「ご迷惑」はおかけしない。
なのでこの立て看板は、

「ただいま準備中」

でもいいのだけど、
しかし誰に「準備中」をお知らせする必要があるのだろう?

大体が何の準備をしているのかも分からない。
事前にこのスペースで何かの特売をやるとか、スペシャルな展示をするとかを告知していたのであれば、そのファンの人々にしてみれば

「おお!準備中か!いつオープンするんだろう?ワクワク」

みたいな展開はあるかもしれないが、特に何の準備中なのかは記載されていない。
ということはこの理由ではない。

ひょっとして、このスペースを賃貸している業者向けにお知らせする意図があるのだろうか?

「ほら、ちゃんとスペース空けてお待ちしていますよ」

まぁ、そんな理由であれば別に立て看板は必要ない。
ただ賃貸スペースを囲っておけばよいだけだし、
なんなら、

「準備中につき立ち入り厳禁」

そう掲示する方が意味があるだろう。

そう、おそらくこの立て看板とメッセージにはおそらく何の意味もないのだ。

そして、これはビル管理が余計なトラブルになる事を嫌がり気を回して(誰に?)こんな立て看板を造作したに違いない。

日本では往々にしてこのような、誰のためのメッセージなのか、注意喚起なのか、警告なのか、よくわからない掲示が至る所に溢れている。

おそらくは過剰な気配り、もしくは丁寧さ、ひょっとするとおせっかい。

そんな過剰なおせっかい、過保護ともいえる掲示になれた日本人が海外へ旅行すると戸惑うのが、その素っ気ない街の風景。

電車・地下鉄に乗ってももちろん車内放送なんてない。
どこに向かって、今はどこを走っていて、次はどの駅に停まるのか、はたまたどちらのドアが開くのか、
日本国内の公共交通機関では当たり前のこの風景が何もない。
自分でしっかりと意思を持って行動しないととんでもないところまで行ってから気づくことになる。
そんな経験を誰しも一度や二度はあるんじゃないだろうか。

本当に面白い国だなぁと思う。

円安で一部の大企業以外は国内経済も家庭消費も冷え込んでいて、インバウンド頼りの状況で、ここぞとばかり名ばかりの観光立国政策を声高に訴える政府がいるが、
案外とこのお節介にも程がある気配りは、インバウンド観光客を迎えるには最適なのではないかとも思う。

こうなれば、徹底的にこうした過剰な掲示を文化にまで昇華してはどうだろうか?

円安効果でそれでなくてもインバウンド観光客は食事も買い物も宿泊もコスパが最高だと喜んでいるところに、
不慣れな異国の土地ジャパンでも、何処に旅しても国をあげて有形無形のおもてなしをしてくれる

「世界にも類を見ない丁寧で、隅々まで気配りの利いた、お節介で過剰サービスで国」

いいじゃないか。
きっと何処にも真似できないと思う。

〈了〉

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