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フリージャズの聴きどころは何処なんだろう?ピットイン・ネットジャズで考える

新宿ピットインのネットジャズに加入したので、空き時間にはライブ配信を楽しむ時間が増えた。

そして、新宿ピットインといえばやはりフリージャズ系のセッションも多いようなイメージがある。
5月6月分の配信プログラムの中にもフリー系のインプロヴァイザー達のライブがいくつか配信されているので、せっかくだから色々続けて観てみた。

「うむ、フリー・ジャズ分からん!笑」

何かしらのテーマが合って、ソロパートのインプロヴァイズになるとソロ楽器以外の各パートもフリー要素が増えてくる、
そういう演奏であればかなり楽しめるようにはなってきたが、
「インプロ一発のどフリーだ!」
となると、これがなかなか聴きどころを見つけて楽しむまでは行っていない。

とりあえず5月終わりから6月最初くらいで観たライブ配信について思ったことをnoteしておきます。
よろしければ読んで行って下さい。

***

Mark Solborg TUNGEMAL

Mark Solborg(G)、Susana Santo Silva(TP)、Simon Toldam(P)、芳垣安洋(Perc)

いずれもフリー系のジャズミュージシャンと言っていいのか?
ピアノもギターも和音を鳴らせる楽器なのだが、見事にトーナリティの希薄な演奏。
Santos Silvaのトランペットから時折奏でられるメロディの断片がなければ聴き続けるのが難しかっただろう。


芳垣安洋 5Days Day1 Improvisation naught

佐藤允彦(P)、広瀬淳二(Sax)、太田恵資(Vln)、高良久美子(Vib, Perc)、芳垣安洋(Per)

これも調性はほぼ皆無のフリージャズ、音のぶつかり合い。
しかし、まだリズムのバリエーションが多いからだろうか、案外に聴けるし楽しめる。
それぞれの楽器をその楽器として我々が理解している範疇で演奏しているからだろうか。


TRYANGLE

山崎比呂志(Ds)、井野信義(B)、広瀬淳二(Ts)

どえらいベテラン3人のユニット。
なるほど、3つのアングルでトライアングル?
自分がイメージする昭和から引き継がれている由緒正しい日本のフリージャズ。
何も考えずに出される音にただ身を任せていると、だんだん熱くなってくる。


THE IMPRO UNIT

豊住芳三郎(Ds)、Junko(Voice)、大西蘭子(Voice)、新井陽子(P)

ドラムの豊住さんはおそらく「日本フリージャズ史」という書籍にも出てきていたんじゃないだろうか。
黎明期からのレジェンドが故におそらくゴリゴリのフリーかと身構える。
クレジットにも(Vo)でなく(Voice)となっていて恐れていたが。。。
やはりスクリーム系。。。ごめん、無理。
しかし、ここでも1時間近く演り続けられるというその気合と凄みはなんだろう。


カフカ鼾 (Kafka's Ibiki)

ジム・オルーク(B, Synth)、石橋英子(Key, P)、山本達久(Ds)のユニット

2日連続で、2日目はゲストに坂田明(Sax, Cl, Vo)を迎えての演奏
フリージャズというよりは、やはり彼らはインプロヴァイズミュージックなんだろう。
2日目の方がダイナミズムがよりあるが、サックスというヒューマンな感情を音に乗せやすいという楽器特性の影響は大きいのかも。
しかし、初日のトリオでの演奏もわかる。
というか、このユニットには普段弾かない楽器で混ざって一緒に演奏してみたいような気持ちになる。
そんなの到底無茶な挑戦なんだろうが。
それくらい、優しく寄り添ってくるような演奏だった。


小石研究所

小林洋子(P)、石渡明廣(G)、津上研太(As)

あ、これを書いていて気付いた。
メンバー3人の名前を取って「小・石・研・究所」なんだな。

ちゃんと曲の体をなしているしこれはフリーではない。
だけど曲によってはテーマはあるもののソロになるとフレーズが徹底的にアウトしていくところがフリーを感じる。
そうそう、こういう演奏であればかろうじて楽しめる。
というか、
「いつアウトする??キター!」
という感じで楽しめる。


秋元修カルテット

スケジュールの詳細に書かれていた次のリード文を読んで興味があった。

ドラマーがリーダーで在る事の意義を Texture からのアプローチによって回答する、ポスト・アンビエント/ジャズカルテット。
いわばアンビエントフリー。

ポスト・アンビエント?アンビエント・フリー?
しかもドラマーがリーダーなのに?
聴く前はこんな印象だった。
一応、曲の枠組みはあるし、ゆらゆらとなるほどアンビエント・フリーという表現は何となく伝わる演奏。
このカルテットの音くらいまでなら楽しめるが、他との違いは何だろうと考える。
この演奏のもっと枠を取っ払って、アッチへ行ってしまったのが、
Mark Solborg TUNGEMALのセッションかな?という印象。


纐纈雅代 × 中村達也 〜真昼の決闘〜

纐纈雅代(As)、中村達也(Ds)

サックスの纐纈雅代と元ブランキー・ジェット・シティの中村達也のドラム
BJC、ロザリオの後は多方面で活動されていた中村達也さんだが、こっち方面も演っているのか。

イベントタイトル通りもうガチのバトル。
ジャズらしいビートもほぼなく、かといってロック的な要素もなく、
おそらく何も決めないで、吹きまくり、叩きまくり。
配信は2ステージ目だけだったが、これを1stステージもやってたのかと思うとめちゃくちゃ体力使っただろうな。


レオナ・纐纈雅代DUO

レオナ(Tap,全身打楽器), 纐纈雅代(As)

これは先程2ステージ目の配信が終了したばかり。
中村達也さんとのバトルに続く纐纈雅代サックスのインプロセッション。
ところで、纐纈さんのルックス気合入りまくっていて道端ですれ違ったら速攻で譲ってしまうかも、怖い(笑)

セッションのお相手はレオナさんという方。
タップダンサーとお見受けしたが、担当は全身打楽器と書いてあった。
タップダンス用の半畳ほどの板張りステージとんアルミ板やトレイ?なんかの金物を足元にばらまいてタップを踏むので、ビート感はもちろんない。
「ガサガサ、ゴソゴソ、カリカリ、ジャラジャラ」
真顔で演っているので(そりゃそうだ)かなりシュール。
若い頃の松本人志のコントと紙一重感もあるといったら怒られそうだが。

これはお互いの音を聴いているのだろうか?
纐纈さんはレオナさんの音にリアクションしてフレーズを繰り出そうとしているように見えたが、かなり苦労しているようにも見える。
果たしてこのセッション、これは息が合っているのだろうか?

中盤以降、レオナさんが足元から金物をどけて、タップを踏んでフリーでリズムをインプロヴァイズし始めると、がぜん躍動感が出てきて、
纐纈さんのサックスもそれに応じて会話しているように聞こえてきた。

しかし、それも束の間、
アルミ板を足元にセット、手にトレイを持って叩きはじめるとリズムがノイズになり、シュール感が一気に再来。
サックスの方は流れでしっかり付いていっているように聴こえるが、自分は付いていけず置いてきぼりになってしまった。
2ステージ目 およそ45分。
終わって、お2人から笑顔が出て挨拶されるとこちらもほっと一息ついた。
実は観ているだけで、こちらも緊張していたのかも。
現場でライブ観ていたらメチャクチャ疲れただろうな。

***

まとめ所感

さて、色んな方々のセッションを1週間くらいかけて少しづつ観た結果どうだったか?
最初に思ったのは、
「無茶苦茶、出鱈目」と「フリーなインプロヴァイズ」の違いはなんだろう?ということ。
「これなら出来そうやん」
と楽器を弾かない方はまず最初に思い浮かぶだろうが、
いやどうして、素人が出鱈目で1時間演奏し続けるのは難しい、多分無理、
絶対無理。10分も難しいと思う。
だからこそ1時間破綻せずに(破綻したまま?)出鱈目を続けられる、
それはフリーなのだろうか。
その楽器に精通したプレイヤーが、いったんそのテクニックを脇へ追いやって、無かったことにして、楽器と戯れる。
うむ、やっぱり1時間無理だって。

あと、静かな、針の音をも聞き分けるような繊細なインプロヴァイズと、
ドシャバシャ、パウォー、ブウォー!!と音でバトルしていく系のフリーインプロヴァイズは、段々と血が巡ってきて興奮(トランス)状態?になるような感じもあり、聴き続けられるのかもしれない。
多分、この手は配信よりはライブを生で観たほうが絶対良い、はず。

だけど、ノイズ系はやっぱりダメかもしれないと思った。
ノイズ系は自分でやるに限る。
大友良英さんのターンテーブルだけのやつとか。
スタジオでディストーションフルテンとか、アナログディレイのフィードバックグリグリするとか。
はた迷惑だけど、面白いのは確か。
でも、聴けない。

あとは、静かなECM的というかアンビエントなインプロヴァイズの場合は、やはりトーナリティを感じられるフレーズが弾かれるかどうかが自分にとって楽しめるかどうかの1つのキーなのかもしれないと思った。

ということで、フルージャズ系のライブ配信を色々と集中して観てみました。
やっぱり、聴きどころを会得するにはまだまだ修行が足りないということは分かりました。

<了>

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