見出し画像

ケアマネ時代の想い出

今日もページにお越しいただいてありがとうございます。
今回は、ケアマネ時代の想い出について綴っていきたいと思います。

その利用者さんは、ステージⅣのガンを患っておられて、
入退院を繰り替えしておられました。
『最期は自宅で過ごしたい』というご本人の希望を叶えるために、
看取りも想定したケアプランの作成をすることに。
余命は1ヶ月。長くても3か月と言われているとのことでした。

ご家族は、奥様。息子さん二人はそれぞれ所帯を持って独立されています。
奥様は「私が一番あの人を知っているから、大丈夫です」と言われて、
献身的に介護をされていました。最初は、訪問看護と福祉用具貸与でベッドと車いすのレンタルからスタート。

モニタリングの期間を頻回にして、状況確認をしていく中で、
奥様の疲れや負担感が増していることがわかり、訪問介護、訪問入浴を
追加。と多くのサービスを使いながら、自宅での生活を送っていました。

ご自宅に戻られて少し体調が安定されていたあるとき、奥様から、
「実は…次男の結婚式を挙げられていなくて。お父さんにも出て欲しいから
 ずっと延期になっているの」とおっしゃられたことがありました。
良く話を聞くと、
・両家だけで式と食事会をしたい。市内で行う(会場までは車で10分程度)
・本人も出たいとおっしゃっている。
・往診時、主治医から「今が最期のチャンスかもしれない」と言われた
という状況が分かりました。

まずは、車いすでの移動のため、介護タクシーの手配をすることに。
予定は抑えられたけれど、看護師などに付き添ってもらったほうが
いいのではないか?と提案がありました。

奥様に自費になってしまうが、看護師さんに同行してもらったほうが安心かもしれないですよね?と確認すると・・・
「お金はいくらでも大丈夫なので、ぜひお願いしたい」とのお返事。
確かに、経済的な状況には心配ない暮らしぶりだと分かっていたので、
訪問看護の事業所へ連絡し、対応可能かどうかを検討してもらいました。

数日後、訪問看護ステーションより「対応可能です」とのお返事があり、
次男様の結婚式へご本人も出席が叶う事になりました。
大まかなスケジュールを奥様と確認し、介護タクシー、訪問看護へも共有。
やることはすべてやったので、あとは当日を迎えるのみです。

後日、ご自宅へ伺った際に、結婚式のお写真を見せて頂くと、
皆さん笑顔で写っている中心で、タキシード姿で凛々しく写真に納まっているご本人の姿がありました。また、奥様とお2人の写真もあり、とても仲睦まじい様子でした。奥様は「昔のお父さんに戻ったようで、本当に嬉しかったのよ。色々と話を聞いてもらって、実現できたので良かったわ」とお話くださり、私も本当によかったなーと思いました。

喜びに浸っているのもつかの間で、その後はどんどんと病状が悪化。
食欲が無くなり、ガンの痛みが増え、鎮痛剤の点滴で意識がもうろうとする
時間が多くなっていきました。

そして、奥様からのお電話で、ご逝去の旨を知りました。

終業後に、お花を持って弔問に伺うと、息子さん夫婦も駆けつけておられ、
奥様が「ケアマネさんよ。こないだの結婚式もいろいろと手配してくださったのよ」とご紹介くださると、お嫁さん方が「本当に家族の想い出となる時間を作ってくださってありがとうございました」と涙しながら声を掛けて
くださいました。私ももらい泣きしながら「お役に立てて良かったです。
お父様の立派なお姿をお写真で拝見できて嬉しかったです」と伝えました。

寂しさもある中で、結婚式での様子やエピソードを笑顔で教えて頂き、
ケアプラン外のサービス調整だったけれど、ご本人やご家族にとっては、
何よりのニーズだったこと。無理にでも調整して、実現できたことは、
今後、ご家族の生きる力になったんだな、と心が震える思いでした。

今回は、お金の心配が無く、本人ご家族の望む自費サービスを使えたから
実現できたので、全てのケースで自費サービスを使えばよいという事では
無いのですが、「ご本人やご家族の望む暮らしの実現のために、他機関と
連携し、ニーズの充足を図る」という、ケアマネのあるべき行動を、身を
もって体感できたケースでした。
ケアマネをやって良かったな、と今でも思える時間を共有して頂けたことに感謝です。こういう一瞬があるから、辛い仕事も報われるんですよね!

最後までお読み頂き、ありがとうございました。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?