オトナリ珈琲

木造の階段をゆっくりとギィ、ギィと軋ませながら登り終えると、数秒逡巡して右から二番目の席を着いた。座り終えると最初に聞こえてくるのは雨の音だった。正面にある窓の外、トタン屋根に落ちる雨のが心地よい不規則さで響いている。そういえばコーヒーをドリップする音に似ているなと思った。

このお店は入店まで一風変わった経路をだどる。
まず一階のCOIN LAUNDRY XANADUの看板を見ながらガラガラと引き戸を開けると(当然ながらそこはコインランドリーであるから)洗濯機がガラガラ回っている。暖かく乾燥した空気が膜のように体をつつみ、現実の時間軸とは少し違った異世界に足を踏み入れたみたいだ。そして、右手側の階段から二階にあるこのお店に上がることができる。静かなお店に本がたくさん並んでいて静かな店主が佇んでいる。どうもまだ異世界に迷い込んだような気がして心がふわふわと浮かび上がる。

入り口すぐのカウンター席も大きな2連のエスプレッソマシンが見えて良いのだけと、一番奥のカウンター席は一階の洗濯機の稼働とともにゆらゆらとよく揺れるからおすすめ。
揺れながら本を開く、ページを捲る、27coffee roasterのネルドリップコーヒーに舌鼓をうつ、ページを捲る、やっぱり揺られる。その揺れがこわばった心を少しずつ柔らかくしてくれる。


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