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2月の手紙


拝啓

最近、すこし寒さが和らいできたように感じられます。寒い日の朝一番のまだ誰も足を踏み入れていない部屋には、静寂と寒さが手を取り合って空気中にきちんと整列しているようです。それが、ガラス扉から差し込む、立ち昇ったばかりで少し気の抜けたような太陽の日差しを受けて、ゆっくりと解けていっているようです。


寒さが人一倍苦手な私は、春の気配の訪れをまだ探しあぐねています。大寒を過ぎたばかりなのに気が早すぎるでしょうか。


でも、こんな冬晴れの穏やかな日にはショパンのピアノが素直に胸に響きます。厳しい寒さに耐えたそのひとときの合間でしか、感じられない輝きがあります。でもあまりに美しすぎて、過ぎ去った過去や、手の届かないどこか隔絶された遠くを羨望するような気持ちになります。まだ手の届かない春を憧憬しているのでしょうか。



梅の蕾が咲いたら一緒にどこか静かな場所に出かけましょう。真昼の微風を浴びて、寒さが降り積もった肩を溶かしましょう。春の日の一番最初の朝にきっとお誘いしますので。


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