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【短文朗読】海沿いのレール

☆所要時間:1分
☆人数 :1人用



無意識に
身体を窓側へ乗り出していた

ハッとしたのは私だけでは無い

車内の空気が動き
乗客の機微が伝わってくる

海が
見えた

民家に手が届くほどの
住宅街をすり抜けてきた今までと
それはまるで別世界

視界が開けた瞬間

海を
空を
風を

季節の流れを
感じた


波打ち際は なぜ
思い出を呼び起こすのだろう

深夜に出掛けることを唯一許された
大晦日の夜

賑(にぎ)わった
江ノ島(えのしま)神社

あの頃
新たな年を迎えることは
お祭りのようだった

穏やかに 清らかに
そんな言葉とは程遠く

ざわめきと人波を掻(か)き分けて
おみくじに笑い合う

新年の朝は
寝ぼけ眼(まなこ)で
うすぼんやりと見えていた

喧騒がまるで夢だったかのように
静まり返ったホームを超えて
どこか寂しげに
新たな一年が訪れる


あの頃のわたしと
今のわたし

どこかで繋がっている
海沿いのレール

来年は
どんな景色が見えるだろう


End


〜マコのひとりごと〜

BGMerさまの「遠くの景色」を聴いていたら車窓が思い浮かび書き始めました。

私が大好きな江ノ電から見える風景を思い出していたら、学生時代の大晦日の記憶が蘇り懐かしくなりました。

素敵な音楽、良かったら聴いてみて下さい😊


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