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拙い映画感想文「四畳半タイムマシンブルース」


前の会社の同僚と映画を観に行きました。

僕は森見登美彦さんの小説が好きで、「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」「新釈 走れメロス」なども読んだことがあります。

同僚とは前の会社で出会った時に「四畳半神話大系」が好きということで仲良くなり、当時発売されたばかりの「四畳半タイムマシンブルース」の文庫本も読んでいました。

映像化されるということはわかっていたのですが、上映期間や上映される媒体の詳細は把握できていなかったので同僚に誘われて助かりました。

上映される映画館も限られていますし3週間という短い期間限定の上映なので危なかったです。

自分が観に行ったのが公開2日目だったのですがその時点で既に初回の劇場特典はなくなっていました。

夜の遅い時間に行ったのですが、ほとんど満席で前の方の席もほとんど埋まっていました。

愛くるしい登場人物たち

原作の小説を読んでからかなり日が開いていたので内容の詳細はあまり覚えていなかったのですが、その分新鮮味を持って観ることができました。

四畳半シリーズのキャラクターはみんな愛くるしくて愛着がわきますよね。
自分もこの中に混じりたい!と思ったりもします。

大学生のお手本のようでダラダラと貴重な大学生活を無意味に過ごしていくことに憤りを感じてはいるが今一歩のところで行動できない主人公の「私」

昔の自分を見ているようになります(笑)

そんな私をことごとくダメにしようとする「小津」

下鴨幽水荘の古株留年大学生「樋口師匠」

映画サークルみそぎのボス「城ケ崎氏」

陽気で大雑把な「羽貫さん」

そして、私がひそかに思いを寄せているクールな後輩「明石さん」

他の作品を見たことのある人たちにはおなじみのキャラクターたちが相変わらず真剣にドタバタとしているので劇場でも笑いをこらえていました。

四畳半シリーズはあははは!と大爆笑するような笑いよりもクスっとするような場面が多くていいですね。

古い言い回しで一見難しいことを言っているようなのにしょうもないことを言っていたり。

私に対して小津が樋口師匠の弟子に勧誘した際に平然と断っていたのに、明石さんに誘われた時はうれしさのあまり心の中で真っ赤になって小さな私が小躍りしていたシーンは笑いました。

自分が四畳半シリーズで好きなのは樋口師匠

明らかにピンチな状況に陥っていても、(旅費もないのに世界中を見て回るだとか(前作より)、お金がないのに家賃を払いにいったり)常に飄々とした態度で流れに身を任せている様子が良いです。

かと思えばたまに本質的なことを言ったりするところも好きです。

樋口師匠を見ていると自分もありのままあるがまま世の流れに逆らわず飄々と慌てずに生きていきたいと思いますね。

そんな何事にも慌てない樋口師匠がヴィダルサスーン紛失時にしつこくヴィダルサスーンヴィダルサスーンと探していたのも面白かったです。
原作の「サマータイムマシンブルース」の影響もあるのでしょうが。

「私」の奮闘

四畳半シリーズでも今回は特に恋愛要素が強かったように感じます。
少なくとも僕はそういうシーンに感動しました。

主人公の奥手さに自分を重ねてしまっているのもあるのかと思います。

何者かに明石さんが五山の送り火に誘われたと知った時、小津が明石さんに誰と行くか聞きましたが「なんでそんなこといわなければならないんですか?」と一蹴。

それを横で見ていた私は「ざまーみろ」と思うが、どこの馬骨野郎と行くのか気になる。

意を決して五山に誘おうと銭湯を早めに切り上げて古本市に向かった明石さんを追いかけるも声をかけれず不発。

声をかけることができても「どうしていかなければならないのですか」と否定されそうなネガティブな妄想をしてしまう。

このネガティブ思考なところが自分にそっくりだなと思いました(笑)

タイムマシンに乗ってやってきた未来人の両親がどうやらこの周辺にいるらしい。

未来人田村君のかばんには明石さんと同じもちぐまのストラップ。

田村君はお父さんに下鴨幽水荘への入居を勧められたらしい。

後半田村君は自分の両親がわかったらしく私に「未来は自分で掴み取るべきものです」と。

観客に「もしかして田村君の両親って…?」と思わせるような仕掛けを徐々に設置しているのが面白かったです。

最後は私の「成就した恋ほど語るに値しないものはない」というセリフでアジカンの「出町柳パラレルユニバース」が流れてエンディングへ。

良かったです。

ほんわか感想

成就した恋ほど~のセリフも四畳半ではおなじみのセリフでしたが今回の作品でのセリフは重みが違いました。

最後の最後のセリフですし、交際がうまくいったというところまでではなく、田村君の存在によって結婚、出産、仕事がうまくいっているというところがわかりますし、それを全部言葉で言ってしまわないというところがおしゃれです。

デートに誘うこともできない奥手でネガティブな主人公が意中の人と交際し結婚し子供までできるなんて。

最近では若者の結婚離れとかマッチングアプリで複数の人と出会ってとかが主流なようですが、今回のような一途な主人公が恋を実らせるという物語は心がほんわかあったかい気持ちになります。

恋愛苦手な主人公が自分のことのように思えて、スポーツで負けている方のチームを応援してしまうような感覚になりました。

今回の映画もそうですが、頑張った人が報われるようなストーリー展開が僕は好きです。理不尽なことばかりが起こる世の中なのでせめて物語の中だけでもと。

私と明石さんの今後を、言葉に出さずとも観客に想像させるというところまで含めて森見登美彦さんのすごさが改めて感じられた映画でした。

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