人間の立位における安定性:静的安定性と動的安定性



人間の立位姿勢の安定性は、静的安定性と動的安定性の2つの側面から成り立っています。

静的安定性


静的安定性は、身体が静止している状態での安定性を意味します。人間の身体は、筋や靭帯(じんたい:骨と骨をつなげる組織)の制御がなければ、重力により倒れてしまいます。以下が静的安定性を保つための要点です。

• 重心と関節のバランス: 各部位の重心が関節の真上にあるとき、効率的に安定性が保たれます。これを「受動的安定性」といい、エネルギー消費を抑えた状態で立位を維持できます。

• 不利な条件: 人間の体は安定性の面でいくつかの不利な構造を持っています。例えば、頭部と体幹(パッセンジャー)は体重の約70%を占めるのに対し、下肢(ロコモーター)は30%しかありません。

さらに、下肢は複数の関節から成り立ち、丸みを帯びた骨端の構造上、関節が不安定になりやすい特徴もあります。

• 靭帯と筋肉の役割: 股関節や膝関節は靭帯の張力を利用して受動的な安定性を確保します。例えば、膝関節の後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)や股関節の腸骨大腿靭帯(ちょうこつだいたいじんたい)が関節の過伸展を制限し、安定性を保つように働きます。

• 足関節の特殊性: 足関節と距骨下関節(きょこつかかんせつ)は、広い可動域を持ちながらも安定性を確保するため、腓腹筋(ひふくきん:ふくらはぎの筋肉)やヒラメ筋の筋活動が不可欠です。

動的安定性


動的安定性は、歩行や動作中における安定性を指します。動的安定性を保つためには、静的安定性とは異なるメカニズムが求められます。

• 歩行中の重心移動: 歩行中は、身体重心が支持基底面から前方へ移動するため、筋肉の収縮や関節の軟部組織(じゅうなんな組織)が安定性の確保に必要です。

• 片脚支持期のバランス: 歩行中の片脚支持期には、股関節周囲の筋肉が骨盤と体幹を安定させ、バランスを保ちます。これにより、体重を片脚で支えながらもスムーズな歩行が可能となります。

まとめ


人間の立位の安定性は、静的安定性と動的安定性の相互作用によって成り立っています。不利な構造を持つ人間の体ですが、筋肉や靭帯、軟部組織が協調して働くことで、重力や外力に対抗し、バランスを維持しています。この仕組みの理解は、姿勢改善や運動パフォーマンスの向上にも役立つ重要な知識です。

著者情報


この記事を書いたトレーナー
山岸慎(やまぎし まこと)

パーソナルジム STUDIO KOMPAS 渋谷店
東京都渋谷区南平台町13-11 南平台WEST 地下102

ストレッチリラクゼーションサロン ESL 技術監

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