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『エンタメ小説家の失敗学~「売れなければ終わり」の修羅の道』平山瑞穂著

前の記事にも書いた通り、今は小説を書くことに興味を持っているので、やはりこの本がセンサーに引っかかった。
ある小説家のユーチューバーさんがおススメしていたこともあり、手に取ってみた。

面白かった!
この本の内容の、自分なりのキーワードは、3つ。

  • 創作者の孤独

  • 共感

創作自体が孤独な作業であることはわかるが、そうやって精魂を注ぎ作り上げた作品を、編集者、もしくは読書に受け入れられなかった時の孤独感は想像するに余りある。編集者にダメ出しをくらった場合は書き直すことになるが、その屈辱感と無念さは計りしれない。

また、出版の世界に限らず、どんな分野でも、「運」が多少の差こそあれ影響を与える。才能だけで物事がうまくいけば、もっと〈成功〉の定義がわかりやすいのだろうが。

この本で自分が一番面白かった(と言っては失礼かもしれないが)のは、共感の話。
著者が自身をモデルにした小説を書いた際、その主人公の性格設定に、そっくりそのまま自分のそれを投影した結果、「共感できない」「感情移入できない」と多くの読者から評されたこと。

小説や漫画などは、やはり読者からどれだけ「わかる!」といった共感が得られるかで、売れるか売れないかが左右されるようだ。

しかし著者はそもそも物語を作るうえで、「共感」をそれほど重要視していなかったので、ことごとく目にする「共感できない」=「つまらない」という読者の反応に打ちのめされる。

この著者は、自身のことを「売れない、失敗した小説家」と自称しているが、著書の数だけ見ても、ちっともそんな風には思えない。
でもそこまで謙遜されて書かれているわけでもなさそうで、やはりこの世界は外から見るよりもうんと厳しいのだろう。

この本は、著者が自身の小説家としてのこれまでの失敗事例をあけすけに語っている。
そしておそらく、他責的(特に編集者に対して)などと批判される可能性も見通した上で、この本を出版されたのだと思う。
でも、自分はちっとも不快にならなかったし、さすが小説家だけあって、ぐんぐんと引き込まれる文体と展開で、時々クスっと笑いながら、あっという間に読み終わった。

このような後悔の念や、苦い経験の振り返りは、何も小説家に限らず、他のどんな仕事でも、また、人生そのものにもできる。
そう言う意味でも、自分に当てはめて、振り返ってみる良い機会を与えてもらったし、もちろん、小説家を目指す人が知っておくとためになることがたくさんあると思う。

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