見出し画像

『押し花』


仮に山田さんと呼ぼう

小中高と同級生だったコ


僕のところに彼女から小包が届いた

イギリスからみたいだ

差出人の名前をみて

思い出すのに少し時間がかかった


実際12年も同じ学校にいて

その半分弱を同じクラスで過ごしたけど

言葉を交わしたことなんてなかったわけで


それに

こう言ってはなんだけど山田さん(仮名)には

友達がいたようには思えない

部活は入っていたのかな

卒業後の進路なんてもちろん知らない


とにかく

ろくに喋ったこともない同級生の女子から

数年のときを経て

はるばる海を渡って

小包が届いたというわけ


縦横はB4サイズ

厚さは20センチくらいの

茶封筒に包まれた荷物


持つとズシリとくるが

宛名は間違いなく僕だし

危険なものではなさそうだから

開けてみた


レトロチックでかわいらしい装丁の日記帳が10冊


どのページも見開くと

右側に押し花

左側には摘んだ日?と花の名前

その他には一切の記述は無し


最も古くて15年前の日付

僕たちが小5の年

最近の日付は

つい先月だ

だいたい週に1枚くらいのペースで

押し花は綴られている


僕はこういうものには疎いけれど

どれもこれも美しい花ばかり

季節の折々の花なのだろう

日本の花もあれば

きっとイギリスの花もあるみたいで

しばらく素直に感心していた


さて

僕は我にかえり


山田さん(仮名)は

なぜ僕にこの

押し花集を

と推察したわけだが

それは山田さん(仮名)に失礼か


返事を書こうかどうしようか


ああそれより

なぜ地元を離れて上京し

独り住まいの僕の住所が

わかったのだろう









この記事が参加している募集

スキしてみて