『大皿が置かれると』
盆暮れに親戚が大挙して押し寄せると
一人っ子の僕はいつも萎縮した
とりわけ食事の際には困ったものだった
あるとき
4人兄弟のいとこは
それぞれ国旗のついた爪楊枝を持参して
揚げ物でも
くだものでも
まずは食卓に大皿が置かれると
我さきに自分の旗を立てていった
僕は旗を持っていないせいで
ほうれん草のおひたしやら
切り干し大根やら
そんな脇役にしか箸が伸ばせず
その日は悲しい思いをした
僕は母に頼んで
同じように
国旗のついた爪楊枝をねだろうと思った
いとこたちよりも強い国のやつ
いや
いとこたちが知らなさそうな国のやつ
そう考えたけど
もう少し冷静になって
盆暮れくらいは
別にかまわないかと
思い直した
あした父にソフトクリームを買ってもらおう
一人っ子ですみませんね