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無知の知

 今から大体2500年ほど前に、ソクラテスというごっつい物知りおじさんがいた。そのソクラテスの弟子がある時、デルポイの神託所でこんな質問をした。
 「世の中で最も、かしこな人は誰でしょう?」
 すると、デルポイで神託を与えている巫女はこう答えたという。
 「ソクラテスっすね。ヤツは最もかしこな人間です」
 それを聞いた弟子が喜び勇んで師匠にそれを伝えたところ、ソクラテスは頭を抱えて悩んだという。
 ソクラテスは自分ではおバカちゃんだと思っているのに、万能であるはずの神々がソクラテスこそが一番のかしこだと言う。その齟齬がどこから生じているのかと悩みに悩んだ結果、ひとつの結論に辿り着いた。
 即ち、自分は世間の知識人と比べて、自分が何も知らないパッパラパーであるという事を自認している。というヤツだ。俗に言う『無知の知』というヤツである。

 かっこいい。

 ぼくもかしこなフリなんざ辞めてぱーちくりんになり、
 「ぼかあ、ぱーちくりんだから、それを自認している分だけ、きみ等よりかしこだよ」
 とか言ってみたい。
 「でも、あふれるウィルネスがそれを赦してくれねえのだよなあ……」
 と呻いてビールを煽る。どんどん、思考が鈍化していく……。

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