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「空き家」の先駆者(福井県美浜町)

空き家対策でリノベよりも大事なこと。

私は動画取材でいろいろな地域に行きますが、「集落に空き家はあるけど買えない。借りられない」という声をよく聞きます。

空き家バンクを置くなど、空き家対策を行っている自治体はかなり多いと思いますが、そのほとんどが建物のリノベーション、古民家再生でとどまっていないでしょうか。古民家をカフェにしたり、シェアハウスにしたり。

ただ、現在の日本ではそもそも流通されている空き家が少ないのです。空き家活用を加速させるためには、流通に乗る空き家を増やす必要があります。そのために所有者に売却や貸し出しの決断をしてもらうことが空き家対策の最大のポイントであると言えます。

この視点にいち早く気づき、情熱的に活動をしているのが、福井県美浜町のNPO法人ふるさと福井サポートセンター」通称ふるさぽです。

ふるさぽの存在は唯一無二と言っても過言ではなく、全国的に高く評価されています。令和2年度は総務省の「ふるさとづくり大賞」を受賞されました。詳しい活動は以下の画像をクリックして動画をご覧ください。

「ふるさぽ」の取材で印象に残ったこと

空き家社会活動家

理事長の北山大志郎さんは「空き家社会活動家」を自称されています。空き家社会活動家って何だろう。私は興味を持ちました。

北山さんは空き家の解体を請け負う建設業者の社長です。はじめは「会社の仕事になるかも」という気持ちで、ふるさぽを立ち上げたそうです。(正直に語るところが北山さんの魅力です)

それがどんどんのめり込んでいき、いつしか空き家はビジネスというより、北山さんの人生のテーマになります。空き家を語る北山さんは子どものように無邪気で楽しそうです。

「とにかく飽きない。成果が目に見えてわかるし、やってもやっても課題が出てくるから面白いんですよ」

もちろん、会社の社長である以上、ビジネスとふるさぽの活動を完全に切り離すことは不可能でしょう。葛藤もあるでしょう。

ただ、北山さんは「北山建設社長」と「空き家社会活動家」が矛盾なく同居しているように思います。「会社経営」と「社会貢献」の好循環のサイクルが生まれているのはないでしょうか。

動画の最後で、北山さんが「行政からの補助金に頼らずに、自分たちが開発したサービスを全国の自治体に売って、活動資金に充てたい」と話されています。実際、自分たちで地道な営業をして稼いでいます。

また、国交省のモデル事業に採択されることで予算を獲得していることも先進的です。とかくNPOは地元行政の下請け業者になりがちですが、ふるさぽはそうではありません。本来あるべきNPOの姿を体現しています。

ノウハウを売る

現在、北山さんは移住サポータースキルアップ講座という自治体職員や地域おこし協力隊、集落支援員向けの動画講座も開催しています。空き家の掘り起こしの実践的なノウハウを語っています。

プラットフォームはYouTubeではなく、課金に適したVimeo。生放送ではなく、すでに録画したものを期間(1週間)限定で配信するというものです。

一度収録した動画は何度も使えるので効率的で、理想的なビジネスモデルです。能動的に稼ぐことが苦手なNPOが多い中、さすがです。

集客は全国の市町村の担当者宛に郵送で案内を送っています。1回3,300円(税込)で決して安くはありませんが、毎回多くの反響があります。北山さんが積み重ねてきた経験はほとんどの人にとって未知なもので、価値があるからです。

地域に入り込んで仕事をしている行政職員や地域おこし協力隊はどれだけいるでしょうか。仲間内で理想的な「ストーリー」を語るのは得意でも、実際は汗をかかないスマートな仕事ばかりしている人が多いように思います。

まして「空き家」という個人情報の取り扱いに注意が必要なものは面倒でなおさら触ることができません。だから「移住サポータースキルアップ講座」に大勢の行政職員が申し込んでいるのだと思います。

北山さんは私が憧れる社会活動家です。空き家問題に取り組んでいる方、移住サポータースキルアップ講座をお勧めします

北山さんと私 2021年5月取材時





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