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再び市川に。市民活動のパイオニアにお会いして

先日の万葉ロマン塾で伝説の美少女「手児奈」の動画の前編を公開しました。

現在は後編のシナリオ作成を進めています。

構想を深めるために、千葉県市川市に再び行きました。手児奈の動画制作の経緯については以下の記事をご覧ください。

再訪の目的は河西(かさい)明子さん(85歳)とお会いするためです。

河西明子さん(右)

河西さんが会長を務める地域団体「すがの会」では、手児奈をはじめとする市川の民話を紙芝居や絵本として制作し、地域の歴史を子どもたちに伝える活動を行っています。

河西さんが手がけた手児奈の絵本は地域に伝わる伝統的なストーリーとは明らかに異なっています。

手児奈は美しすぎるがゆえに、多くの若者に求婚される。そのことで悩み苦しみ、近くの入り江で入水する…これが従来の手児奈の物語なのですが、

「たくさんプロポーズされたのに自殺する。その気持ちが理解できない」

地元の子どもたちの率直な感想を聞いた河西さんは「現代的な感覚とかけ離れている昔話は途絶えてしまう」と強い危機感を感じます。

そこで河西さんは、手児奈を美しいだけでなく、頭が良い自立した女性として描き、最終的には村人の幸福を祈って姿を消すという結末に変更。こうして仲間たちと制作した絵本は市内の図書館などに寄贈されます。2008年のことです。

この絵本は市役所の注目を集め、「市川のイメージアップにつながる」と市内で開催された国際会議で3か国語に翻訳されて、世界14の国・地域から集まった出席者に配布されました。

「私も手児奈のようになりたい」

手児奈に憧れを持つ女の子も現れます。これが河西さんにとって絵本を作って一番うれしかったことだそうです。

現代感覚とかけ離れた民話は思い切ってリニューアルする。このアイデアが参考になる地域はあるのではないでしょうか。

手児奈関連のイベントはいまだに増えている

私は市川市役所の方から河西さんを「市川の市民活動のパイオニア」として紹介されました。ここからは河西さんの歩みを少し紹介します。

1995年、専業主婦だった河西さんは、お子さんの就職を機に、以前から興味を抱いていた市民活動に本格的に挑戦する決意を固めます。ちょうどその頃は阪神淡路大震災の影響で全国的に市民活動への関心が高まっていた時代でもありました。

市川初の本格的な市民活動団体として「すがの会」を設立。地域の民話の紙芝居の製作・実演や読書推進活動、星空観望会など様々な活動に取り組んできました。

個人では犯罪や非行をした人の立ち直りを支える保護司を30年以上務めて、天皇陛下から藍綬褒章を授章します。

一方、「この地域にいられなくしてやる」といった脅迫も受けるなど、さまざまな困難も乗り越えてきました。

「手児奈」の絵本も従来の内容と変わり過ぎていると他の地域団体から強い批判を受けたそうです。

河西さんの「手児奈」は、きりっとした顔立ちで意思の強さを感じさせます。河西さんが絵を描く方にリクエストしたのは「強い意志を持った女性の顔にしてほしい」だけだったそうです。

河西さんとお会いして、とても刺激を受けました。私も新しい手児奈の物語を動画で描きたいと思います。

手児奈のまなざしが河西さんに重なる



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