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「自分の人生は自分で決める」は綺麗事?

最近、大きな変化があった。その変化とは、今までベールがかかっていた灰色の世界が、よりクリアに現実的に見えるようになったことだ。

それに伴って、人生というものは生まれれたときからある程度決まっていて、私はその上をただひたすらに進んでいるだけなのだ、という考えが浮かんできた。

悲しいかな、人は親を選べず、友人を選べず、人生を選べない。選べるのは大体、ご飯や飲み物、簡単なことだけなのかもしれない。もしかしたら、そんな日常の細かい動作まで、「運命」というすでに決められたものなのかもしれないと考えるようになった。



私は病気だ。一番自殺率が高く、精神科医でも手を焼く人格障害。その中でも特に治療が困難で対処が難しいBPDという厄介な人格を抱えている。

もはや自分の性格なのか、病気なのかわからない。生まれて20年弱、私は昔からこの病気に苦しめられてきた。

苦痛や悲しみの経験がフラッシュバックし、毎日眠れない日が続いている。誰が辛い記憶を思い返せなんて頼んだんだと、自分で抱えきれない苦しみを何とか責任転嫁しようと思う時もあった。思い返せば思い返すほど、自分の古傷にメスを入れてほじくり返しているような痛みがあるから、その度に荒れ狂い、人を傷つけた。

錯乱しているときの記憶はおぼろげで、何を話したのか、何を投げたのか、どんな感情だったのかが思い出せない。思い出そうとすると、頭が重く、強い眠気に襲われる。思い出そうとした瞬間、私はいつの間にか布団にいて、起きた時には思い出そうとした行動もすっかり忘れているのだ。

人を傷つけておきながら、自分の記憶はすっ飛んでいる、という現実にまた傷つき痛みが走る。1つ傷が癒えたら、1つ傷を増やす。そんなことを繰り返している間にどんどん時間はすぎ、周りの人間も呆れ返る、そんな未来が見えた。

バカみたいな錯乱状態と平常心を行き来するのが嫌になって、ついに私は疲れ果てた。自分はバカなんだ、そう思えた時、初めて自分が客観視できたように思えた。わからなかった自分の行動が、断片的にうっすらと見えてくるようになったのだ。

フラッシュバックに苦しんでしまうことは、人間にとっては大切なことで、本人は苦しいと思いながらも、実は「あなたに必要だからもう一度自分を振り返りなさい」という警告でもあるような気がする。

1つ1つ自分を見つめていく機会を得た私は、問題行動や普段の行動に現れる「自分の気持ち」に目を向けるようになった。同時に、自分と同じ病気の方の体験談や、症例などを読み漁るようになった。

そこにはまるで自分の鏡のように、同じ経験を重ねた人がいるという事実が記述されていた。

私と同じような人が同じタイミングで、しかも同じような人生を辿っている。

この事実が、私をホッとさせたと同時に、「運命」という非現実的な現象を、現実的に考えるきっかけを与えた。

自分が直面したトラブルや悲しみは、全てこの障害や病気のせいだということが、最近になって明らかになった。私が過去に口にした言葉や、経験した内容、全てが症例に当てはまっているというなんとも言えない現実。

自分が鬱になって「自分はどうしてダメなんだろう」と思っていた問題が、全てこの「病気」のせいだということ。端的にいえば自分のせいではない。そんな事実を証明してもらえたようで、心に少し余裕ができた。


ただ、同時に、自分の人生はすでに決まっているものという現実ものしかかる。これから先、私が選ぶ道も、決める道も、喜ぶ道も全て決められているのだとしたらと考えると、非常に怖くなった。

私は安楽死希望派。常日頃安楽死を望んでいる。日本では幸か不幸か、方が整備されていないため、そのような団体や施設はない。ただ、以前テレビで話題になったように、海外には安楽死が行える場所がある。語学力があれば、もちろん日本人であっても可能なのだ。

私はそのために語学を勉強している。頭が回らないことが多々あるが、昔から英語が得意だったため、ほかの人よりも苦労は少ない。激しく疑問を抱かれるであろう動機だと思う。

そんな動機はさておき、今私が行っている行動全てをも、自分自身で決めたものではなく、運命的に決まっているのなら、「自分の人生は自分で決める」だなんてただの綺麗事なのではないか?そう感じてしまう。

私が死ぬことを選ぶことも、生きることを選ぶことも、全て決まっているというのなら、私が決めたと思ってきたこと全てが無駄になるような気がして悔しい。

私という意識だけ存在していて、私という存在を決めるのは他者だけ。自分で自分を肯定し、自覚し、意識し、選択するという行為は無駄になってしまうのか?


不完全な人間だからこそ、答えのない疑問や問題が浮かび上がってくるものだけれど、予想以上に自分は不完全であること、無力であることに少し悲しい気持ちになった。

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