開けない箱の存在意義
時間がかかる、と勝手に想像していると、なかなか手が付けられないことが多い。
私は整理収納アドバイザーではあるが、実は子どもの思い出のモノの整理を先送りにしてきた。
正確に言うと、学年の終わりに子ども達とある程度整理をしたら、そのあとの見直しはやっていなかった。
3人の子ども達の思い出のモノを収納場所の許す限り残していて、スマホで撮った写真は、「おもいでばこ」に突っ込んだままだ。
「大切に取っておく」
という言葉は、モノの整理において、非常に都合の良い言葉になる。
ただ、箱にしまっておくことが「大切にする」のとイコールではない。
ただ、あるだけ、の状態が、果たして本当に大切にしていることになるのだろうか。
「子どもの思い出だから」と、あまりに多くを残していて、それだけで満足していた気がする。いや、「捨てないこと」に満足していたのかも知れない。
そんな気持ちに気づき、ついに手放しのステップを踏み出すことにした。
これまで開けなかった箱は、ただそこにあるだけのものだったが、蓋を開け、大人になった我が子とのコミュニケーションツールに変身してくれた。
思い出のモノを整理することは、子どもを想う母親にとって悩ましいことだが、箱を開けたことによって、思い出がより価値あるものになった。
我が家の成人した息子2人と、残しておいた幼い頃の思い出達を見ながら整理する時間を取ることにしたのだ。
「まだあったんだ」
とか
「なつかし~~!」
こんな息子たちの言葉を聞くと、もう、『あえて取っておいた』と言いたくなるほどだ。
思い出のモノを整理することは、過去を振り返るだけでなく、成長した自分に目を向け、未来への新たなステップを踏むことでもあるように思えてくる。
思い出のモノが、この瞬間を味わうためのものとして、これまで箱の中に存在してくれたのだ。
その発見ができたのも、箱を開けたからだ。
開けない箱は、存在していないのと同じだ。
このように、子どもとの豊かな時間を過ごせれば、もう最後の役目を果たしてくれたと、スッキリとした気持ちでお別れができる。
子どもの巣立ちと共に、私もモノと心の整理をする時期がきている。
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