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昆布を大量購入した話その1(きっかけ~下処理編)

昆布10kg購入イントロダクション

※2024年3月加筆修正しました

2020年、初めての緊急事態宣言にざわついていたある日、水産女子メンバーのFacebook記事で気になる情報を見つけました。

横浜市金沢区の生産者さんがコロナの影響でピンチということで、10kg3000円で昆布を販売すると(※2020年コロナ禍での特別価格)。その名も「ぶんこのこんぶ」。金沢文庫という駅が近くにあるのです。

私のアンテナが騒いだ。この辺りは私が通っていた大学がある地域で、学生時代も含め10年くらい住んでいた。"小柴のアナゴ"といってアナゴ界では名が知られているアナゴが獲れる地域ですが、その頃は水産に全く縁も興味もありませんでした。

そんな私が、少しでも水産を通してこのあたりの地域との繋がりが再び持てるというのは何かの縁かもしれない。というか単純に昆布お買い得だし。いやそもそも全て後付けの理由で、何よりもこんなにたくさん昆布が届いたら面白そうだというのが購入を決めたいちばんの理由でした。

とはいえ最初は気になりつつも踏み切れず、せめてもの思いで記事を自身のSNSでシェアするに留めたものの、日に日に気になる昆布10kg。しない後悔よりする後悔。決めた。私は昆布を買う。生産者さんに購入希望の旨メールを送りました。

ちなみにこちらの昆布を販売している里海イニシアティブさん(※2020年時点。2024年現在は幸海ヒーローズさんが担っています。)は、ブルーカーボン事業の一環で昆布生産を行っています。

私もまだまだ勉強中なのですが、植物が大気中の二酸化炭素を吸収して酸素を出すのはみんな聞いたことがあるんじゃないかと思います。それをグリーンカーボンというのですが、海藻にもそのような効果を期待して取り組んでいるのがブルーカーボンです。ますます購入して応援したい。

到着は突然に

メールのやり取りを介して、担当の方(後に知り合う富本氏)はとても丁寧な印象の方でした。当初の緊急事態宣言期間を終えた5/6以降の発送予定と伝えて頂いていたので(※注文時の状況です)、のんびり使いみちを考えようと思っていたら、「4/30に発送します」との連絡を頂き、心の準備もそこそこに5/1に到着しました。

一辺が50cm弱の箱だと思う。50の3乗が125000なので強ち目分量は間違っていないと思う。というか目分量だけで生きてきた。箱の中身はこんな感じです。

昆布箱

昔から昆布は重宝され税として納められていたとか。薩摩藩は昆布の貿易で利益を出し武器を購入し倒幕に至ったとか。こんなに昆布を所持している私ってもしかして大富豪?

北海道で採れた昆布を乗せた北前船の道のりを「昆布ロード」といいます。太平洋から直で行くことが難しかったため、関東の方が関西よりも昆布の普及が後だというのも興味深い。私の中で昆布の歴史や文化は様々な水産物の中でも奥が深いものの一つで、一度はまったら二度と抜け出せない予感がします。

いわゆる乾燥の昆布ではなく、生の状態で10kg詰めて冷凍したものを発送する旨説明を頂いておりましたが、実際目の当たりにすると私の方がフリーズしました。少し考えた後、このまま段ボールで常温で置いておくわけにはいかないので、小分けにしてすぐ使うもの以外は冷凍するのが賢明だろうと判断しました。

と思ったら、凍っててくっついているので思ったような量を取れない。また少し考えて、氷のかけらをスプーンで削ってすくって捨てていくことにしました。絶対にスプーンを使った方がいいです、手だと冷たい。ぬるっとするので手袋も着用。

昆布氷

こうやって少しずつ少しずつ昆布を発掘しては余計な氷を捨て、ある程度まとまったかたまりをハサミで適当に切ってはジップロックに入れるという作業をしました。昆布を取り出すつれ相対的に氷が多くなってきたので、途中からおたまを使って氷を掬うことにしました。

昆布冷凍

冷凍すると水分が出るので、凍った状態の昆布だけの重量は10kgより少ないとのことでした。この時点で昆布だけだと7kgくらいと思われます。

と思っていたら、洗おうと思って水に浸したり流したりしているうちになんかいきなり増えてる!!

昆布増えた

おわかり頂けますでしょうか、ボールに入っている量は同じくらいですが、昆布一枚のボリュームが大きくなりました。上の写真の半分以下の量の昆布がこうなりました。やばい。もう、タオルとか雑巾を洗っている気分でした。

発掘を続けているうちに、どうやら昆布の根っこがあるということがわかってきました。表面を適当に切っていたけど、根から写真ようなものがにょろにょろと生えている構造ということがわかりました。根はイソギンチャクとかサンゴみたいでした。

※後日収穫体験に行き、吊るされた根から、下へ伸びていくことがわかりました。

昆布根

後でわかったのですが、この昆布の根はガニアシと呼ばれ、貴重で高値で取引されているとのことです。

昆布を洗っていると、特にこの根からたくさんの汚れや貝や小さいエビや甲殻類などの生き物が出てきました。

昆布小さな生き物

小さなムール貝みたいなやつと、エビが長くなったようなサソリのようなやつが特に多くいました。こいつは一体なんだろうと思ってTwitterで問いかけたところ、ワレカラという生き物らしいということがわかりました。いつも些細な問いかけに親身になってくれるフォロワーさんたち愛してます。

今でこそ微妙な扱いだけど、昔は和歌に出てきたり季語だったりと身近な存在だったようです。

ふと、昆布ってもしかして怖いんじゃ…という考えが頭をよぎりました。「昆布たくさん届いたら昆布の歌書けるかな~♪」と調子に乗っていて、ゆるふわ癒し系の雰囲気の曲書こうかな~なんて思っていたけど、いきなり増えたり、小さな生き物たちが根に迷い込んだ挙句出られなくなったんじゃないか…って想像しているうちに一気に私の中で昆布ソングはホラーになりました。

買ってよかった

増えた昆布をタオルや雑巾のように洗っていると(大きいものだと幅20cm以上、縦は適当にカットしたけど1m以上あるんじゃ)、魚の歯型を発見。何これ超かわいい♡

昆布歯型

富本さんは「魚のキスマーク」と呼んでいるそうでレアだそう!なんかうれしい。食べたけど固くて諦めたのか、そこに獲物がいたけど逃げられたのか・・・海の中の世界にイマジネーションが膨らみます。かわいい発見のおかげでホラー昆布ソングは上書き保存されました。

洗ったり触ったりしていると、昆布の柔らかい部分や薄い部分に汚れや付着物、傷が多かったです。厚い部分程つるんとしていて傷も少なく立派。強い者には相手にされず弾き返されるから、弱い部分に近寄って利用するのは人間界も同じだなぁと妙に納得しました。

あぁそうか。私は昆布を通して海の世界を購入したんだ。スーパーで売ってる乾燥した昆布じゃ知らなかった世界や生き物を知り想像することができた。この昆布を触らなければ考えなかったようなことをたくさん考えた。本当に素晴らしい買い物をした。それに自粛中でステイホームのゴールデンウィークを全く退屈せずに毎日楽しく過ごすことができました。毎日昆布の事を考えていました。今も考えています。

「コンブの生産量は北海道が全国の9割で、そのほとんどが乾燥昆布になっていると考えると、横浜で生産されたしかも生コンブで触れられる瞬間は短い上に現地にまで行かないと難しいから奇跡的な体験を自宅でしている」との熱い想いを、メールのやりとりの流れで頂きました(私の言葉と解釈に少し書き直しています)。その通りだと思う。自分たちの作っているものに誇りを持っている方から購入できてよかった。

次回は目分量昆布レシピを公開したいと思います。


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