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「青年海外協力隊のいま」#11 カメルーン・コミュニティ開発隊員 大川梨恵

青年海外協力隊の「これまで」と「いま」を紹介するコーナー
「青年海外協力隊のいま」

第11回はカメルーン・コミュニティ開発隊員の大川梨恵(おおかわ りえ)さん!

中東エリア、国際協力へ熱い想いを持ち、自分の目標へ直進していく大川さんの姿を紹介します。

自己紹介

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名前:大川 梨恵(おおかわ りえ)
通称:おかわり
隊次:2019年度2次隊
職種:コミュニティ開発
派遣国:カメルーン共和国

大学在学時にトビタテ!6期生としてヨルダンに1年留学。日本語教師インターンをしながらアラビア語ヨルダン方言を習得。帰国後はJVC(日本国際ボランティアセンター)にてパレスチナ事業インターンとして1年勤務。

大学卒業後、新卒で協力隊員になったものの、新型コロナウィルスの影響でカメルーンから帰国し、現在は東京にある国際協力NGOにて勤務。

とにかく性格が愛らしくて優しくて情に厚くてサイコーな人間です♡

青年会海外協力隊に応募した理由はなんですか?

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私は自分の人生を国際協力に捧げたいと思っています。

そして協力隊の以下の3点が、自分の人生プランにカンペキに合致していたからです。

・新卒で隊員になれる(大学卒業後すぐに国際協力分野で働きたかったのですが、なかなか新卒で入れるところはないんです)
・新しい言語の習得をしやすい
・現地の人と同じものを食べ、近くで生活をしながら草の根運動を2年間行うことで、国際協力をする人に必要な「現地の人目線」が得られる(かも?)

派遣国はどんな場所ですか?

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中央アフリカにあるカメルーンです。サッカーが有名です。

私は「カメルーンには、いわゆる戦闘部族もいる」と聞き、「戦闘部族って響き、カッコよすぎ。どうにかして私も一員になって戦闘部族名乗りたい。」と密かな野望を抱いてました。

住んでいた町はどんな場所ですか?

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西部州にあるバントゥム村です。

その時のカメルーン隊員の任地の中で、おそらく1、2を争うほどインフラが整っていない場所でした。 水道が通っていない村だったので、井戸に水を汲みに行く日々を過ごしたり、村にはトマトとニンニクしか売っていないので、週に何度も、車で30分かかる町まで食べ物を買いに行ったりしていました。

しかも、私は虫が嫌いなのに虫だらけの家に住んでいたので、最後はゴキブリの幻影が見えたり、虫の足音が聞こえたりもしてました。(虫の足音は幻聴じゃありません!たぶん...(笑))

同期の隊員には、「おかわりの家、アダムスファミリーの家みたいやな」と言われていました。映画観てみたら、確かに雰囲気、そんな感じです(笑)。

ちなみに、某製薬会社のブラックキャップを盲信していたのでカメルーンにも計100個くらい持って行きましたが、18個置いた次の日から連日でゴキブリに遭遇しました。

アー◯製薬さん、この記事読んでますか?ブラックキャップはカメルーンでは効きませんでした。今度研究する時は、アフリカも研究対象地に入れてください。敬具。

配属先はどんな場所ですか?

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バントゥム・コミュニティ教育・開発センターという水や農業などを扱う農業農村開発省です。

村では代表と私の二人だけで働いていました。私に求められていたのは農家の収入向上、水管理委員会の組織・運営、女性グループの手工芸品のデザイン向上、日本文化紹介などです。

コミュニティ開発隊員らしい多岐にわたる活動内容でした。

どんな活動をしていましたか?

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衛生啓発活動と日本文化紹介を兼ねて「衛生かるた」を考え、小学校でかるた大会を何度か開きました。(かるたというゲームを教え、かるたの文を考えるところからスタートしたので、なかなか手間取りました(笑))

それから、石鹸づくりや、村のカカオのクオリティを上げるためにカカオの調査なども行いました。(ちなみに私が作った石鹸、使ったらめちゃくちゃ痒くなったと代表に言われました(笑))

活動で嬉しかったことはなんですか?

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最初に村に行った時は知らない人ばかりだったけど、小学校でかるた大会をしてからは、 子供たちが「こんにちは!」と声をかけてくれるようになりました。あれが一番嬉しかったかな。

それまでも、先輩隊員が何人も活動をしていた村なので「こんにちは!」と声をかけてくれる村人はいましたが、「学校でかるた大会をした、他でもない私」に子どもが挨拶してくれた時に、「あー、自分で自分の居場所作れたんだなあ」とすごく嬉しかったことを覚えています。

活動で苦労したことはなんですか?

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カウンターパート(隊員を受け入れてくれる現地の担当者的な人)から、ボランティアではなく、お金として期待されていたことですかね。

ポケットマネーを出してと言われ、 断ったら音信不通になってしまって(笑)。

小さな村なので何度か家に出向いたりもしましたが、お金を断ってからは居留守をされたり。

「あー、私はお金として期待されてここに呼ばれたんだ」と思った時、「生活もすごくキツくてしんどいのに…。私がここにいる理由は、私という存在が必要だからじゃなくて、お金のためだったのかあ。」と考えてしまい、しばらくずーんと気持ちが沈んでました。

まあでもそれも、「協力隊あるある」なのかなぁとも思います。

経済的に差があるのも事実、私たちがよそ者なのも事実。

だからそういう扱いされるのも、言ってしまえば当たり前な部分もあるなと今なら思えます。(もちろん、途上国の人々みんながそういうわけではありません!)

その上で、どう対等に話せるようになるのか、「お金」ではなく「自分」を必要としてもらうためにはどう働きかければいいのか、トライする2年間なのかなとも思います。

だから、こうして新型コロナウィルスの影響で帰ってきてしまって、ちゃんとわかりあえなかったことに対して、やっぱり歯痒い(はがゆい)気持ちが残ってます。

帰国から今まではどうしていましたか?

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国際協力NGOに就職をして、働き始めました。

もともと、協力隊に参加したのも、そのあと国際協力NGOで働くために必要な経験を積むためでもありました。だから、協力隊で再派遣を待つ間も、待つだけの時間が嫌で、できることなら何かを進めたくて。

「発展途上国の経験2年とペラペラのフランス語で、自分のスキルとキャリアをバチバチに装備して、NGOへの就活をしてやるぜ」と思っていたのに、4ヶ月で帰国になってしまいました。

あまりパワーアップできず、「最初のシンプルな装備のまま。武器は石器。」みたいな状態で就活に挑むことになりました(笑)。

これからの予定は?

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私が働いてるNGOで行っている支援はシリア、パレスチナ、イエメン難民が対象の事業も多くて、まさに私がやりたかったことなんです。だから、今はとにかく経験を積むため、社会を学ぶため、働きます。

あとは語学の勉強ですね。いつも楽しいからってアラビア語に逃げがちですが、フランス語と英語も本腰入れねば(笑)。

それと、NGOの現地駐在員にずっとなりたいと思っていたけど、きっと新型コロナウィルスで国際協力の仕方も変わっていきます。だから、今は「絶対に駐在員になる!」と自分を縛らず、「どんな形であれ、現地の人のためになることをしようぜ。それが何かわかった時にすぐ動けるように、準備する期間なんだぜ。」という気持ちで過ごしてます。

青年海外協力隊に関わりたい人へ3つのアドバイス


① 「協力隊員になる」ことについて

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まず、国際協力に興味がある人は絶対行った方がいいと思います。

私はたった4ヶ月でも、見えるものが変わったから。

例えば、私は「貧しい人って心が豊か!」という表現を使えなくなりました。

なんかそれって、「途上国の人はお金がなくて生活が大変。でも、先進国に住む私たちよりきっと心が豊かであったかいんだよね!」っていう先進国の人の「こうであって欲しい」っていう押し付けな気がして。

そうやって勝手に途上国の人を理想化して、「ほらでも、お金持ってないからこそ心が綺麗でいれるわけだし」っていうのは、この圧倒的な経済格差が決まり悪くて、免罪符みたいに言ってるだけな気がします。

途上国の人は、みんながみんな、そんな聖人君子じゃないですよ。いい意味で。

めっちゃ普通に、私たちと同じ人間です。お金がもらえるものなら欲しいし、川に水汲み行くのだって疲れるから井戸をできれば電動にしたいとか思うし。

(もちろん、外部の人を家族みたいに受け入れるあたたかさとか、面倒見の良さとか、日本との文化的な違いはあるかもしれないけど、それは文化の話であって、お金の有無とは関係ないんじゃないかな。)

私たちの「住んでる環境の普通」と
彼らの「住んでる環境の普通」は確かに違う。

でも、それでも、彼らは私たちと本当に同じ。

そして協力隊は、国際協力をする上で現地の人たちの一番近くにいれて、彼らの本当の姿を知れる活動です。 だからこそ、協力隊でいろんな視点が得られるし、それに価値がある。

日本とは全然違う途上国の文化圏・生活レベルで暮らす人々の文化や暮らしぶりを知るとか、途上国に行ったからこそ気づける先進国の利便性とか、そういうのも、実際に現地の不便さに身を置いてみなきゃわからない。

「蛇口を捻って水が出るのはありがたいことなのよ」なんて、よく聞きますけど、それって蛇口捻って水が出るところに住んでたら実感湧かないことかとも思います。少なくとも、私は実際に井戸に水を汲みにいく生活をしてみなきゃわからなかった。

現地に身を置いて生活を共にした経験がある人と経験がない人では、現地の人たちへの、ひいては国際協力への携わり方も違うんじゃないのかなと思います。 「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!!」 気持ち的にはそんな感じです(伝われ)。


② エリア選びについて

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あなたにとって、すごく関心のあるエリアがあって、まだそこに長期で滞在したことがないなら、そのエリアに協力隊で行くのもいいと思います。

でも、もし既にその一番好きなエリアで長く過ごしたことがあるなら、自分にとって一番関心のあるエリア...の次に関心のあるエリアに行くのがおすすめです。

私は中東が大好きで、向こうに生活の根を張って骨を埋めようと思ってます。

でも、協力隊の希望派遣国は第1希望から第3希望までアフリカにしました。フランス語を身につけたかったのが一番の理由ですが、「将来、また中東に戻るんだから、2年間は他の土地でまた新しいものを見つけよう」という想いもありました。

結果として、それは私にとってすごくいい選択だったと思います。中東では知り得なかった文化や価値観をたくさん知ることができました。世界の広さを再び知りました。何より、「帰る場所」が増えたように思います。

③ 現地で生活する際の持ちものについて(1番ガチなやつ)

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虫が嫌いだけど協力隊にチャレンジする人へ

・「現地の殺虫剤」が一番強力だと思うので現地に着いたら、ぜひ買ってください。台所用、リビング用、寝室用に少なくとも3本買うのがおすすめです。

・蚊帳の中で寝るからと言って安心しないでください。閉じた隙間からコオロギが入ってこようとしたりします。蚊帳の中にも殺虫剤を常備すべきかと思います。

・トイレにゴキブリが出ることで、トイレに行けなくなり、便秘になることがあります。そんな時のために整腸剤を持っていくことをお勧めします。

・虫の死骸を片付けるために、持ち手の長いチリトリの購入をお勧めします(虫に近づかなくてすみます)

・ブラックキャップもカメルーンでも1日弱くらいは保ちます。730個持っていけば、365日×2年間、生きていけるかもしれません。

編集後記

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「自分の人生を国際協力に捧げたいと思っている」と堂々と言葉にできる大川さん。

高すぎる志を持つ人は現実との壁の大きさに苦しむことがありますが、彼女は違います。

中東が大好きなのに、あえてアフリカを任地に希望する。
日本での滞在を余儀なくされても、日本でできることに挑戦する。

広い視野を持ち、現状で自分ができることをしっかり向き合えるのに、人生の軸を見失わない。

彼女と、彼女の作っていく将来が楽しみです。

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