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取材の心得。私の取材はラテン仕込み

取材ライター歴17年。2020年からPRも。https://lucir-te.com/

取材して、執筆という仕事をかれこれ17年しています。誰かのお話を聞いて、その方の想いを文章として表現する、そんなお仕事。取材、インタビューが上手くいくやり方やコツをまとめてみます。

初めての取材

まずは、私のことについて簡単に。

初めて取材、執筆のお仕事をしたのは、2004年です。柴田書店さんの「Cafe sweets」という雑誌の海外からのリポートの記事の執筆が最初のお仕事でした。

当時スペインのバルセロナに住んでいたので、オープンしたばかりの素敵なカフェを取材。

住み始めて4年くらい経っていて、意思疎通に問題はなかったのですが、取材の依頼をすることに慣れていなくて、最初は少し難しかったです。慣れていなかったのは、依頼する私だけじゃなく依頼されるほうもだったのですが。

新しくてオリジナリティのあるカフェやパン屋、パティスリー、時には昼間も繁盛しているバル、お菓子屋さんなどがテーマだったのですが、お店の方たちは、まさか取材の依頼(しかも外国の)がくるとは思っていないので、信じてくれないというか、状況を理解してもらうために説明が必要でした。

一度掲載されてからは、掲載誌を見せて説明できたので、段々スムーズにできるようになりましたが、雑誌を見せて、プレゼンテーションすることが必要だったので、電話やメールですませられず店先で直談判することが多かったです。

初めての取材相手は、アルゼンチン人の女性オーナー。自分たちでペインティングしたという水色のドアがかわいい小さなカフェでした。店内にも素敵な水彩画が飾られ、当時スペインでもまだ珍しかったアルゼンチンのスイーツが、素敵な盛り付けで食べられるお店でした。

その時の取材はほしい情報をもらえ失敗はしていませんが、今もし振り返ったらツッコミどころ満載なはずです。

インタビューに大事なこと

というのも、あらかじめ書いておいた質問を上から順番に読んで、答えてもらっただけという…。

なんとか話を膨らませて執筆できたのは、写真を担当してくれた夫が、いろいろ話してくれていたからでした。

その時に、夫にも言われたと思います。

「尋問みたいな取材になってるやん…」と。

夫は好奇心旺盛なスペイン人なので、本心から勝手にいろいろ質問が出てきて、インタビュアーの私を差し置いて好き勝手な質問を浴びせていました。

で、こういう写真撮ってってお願いしていたことを忘れたりして、喧嘩もしたのですが。

やっぱりそうして話しているうちに雰囲気が良くなり、いろんなお話がもらえることがすぐに分かりました。

一見そんな深い話は必要ないようなレポート記事のお仕事だとしても、書く気がない情報をたくさん持っていることで、別の媒体のお仕事ともつなげられて結果的には一石二鳥になったことは多かったです。

そして何より、やっぱり取材の楽しさが違う。

その分時間はかかるけれど、お店や商売を通じてたくさんの人を知ることができたと思います。

おまけとしてついてきたのは、後にワインの営業の仕事を始めたとき、過去に取材をしたことがある方たちが買ってくれたので、ほぼ営業いらずで収入がありました。

それは、取材によって関係性ができていたから。

余談が入りましたが、取材に一番大事なことは、きっちりした事前の準備ではなく、(これももちろん大事)”あなたに興味があります。お話を聞かせてください”という気持ち。これを表現することだと思います。

思っていても相手に伝わっていなかったら、もしかすると尋問インタビューと変わらないかもしれません。

どうやって表現するの、というと、これはやり方はいろいろあると思います。

とらなきゃならない情報は必ずとるけれど、そればかり考えないこと。

相手が話したいポイントを深く突っ込んで話してもらう。

大きく言うとこの2つです。

相手が話したいポイントというのは、インタビューをしていれば自然と分かると思います。そこでアドリブで質問をして広げていくと、記事には書けないとしても聞いて良かったと思えることが聞け、相手も取材を楽しかったと思ってくれる、ということがおきます。

要は気持ちの問題なので、いやいややっている人はできないかもしれません。

インタビュアーはおしゃべり上手?

私は話し上手ではないです。

人見知りだし、どんな人でも取材をする前は少し緊張します。オンラインで取材をするようになってからは、相手と同時に話しちゃったり、かっこよくインタビューはできていません。

でも、取材した人たちが喜んでくれるので、失敗はしていないと思います。モチベーションが上がったとか、楽しかったとか、気持ちや頭の中が整理された、とか。

いろんな人がいるけれど、最初からその人の良いところしか書かないつもりで話を聞いています。

17年やってきて2回だけ、すごく難しかったことがあります。

2回とも日本人の方の取材でした。

一度は、多分私の取材がうまくいかないように仕向けたかった方だったと思います。同業の仕事絡みで。掲載はされたかったから受けてくれたのかもしれません。

もう一回は、チェーンの飲食店で、別店舗から取材のために来てくれた方で、何も知らないし、やる気がない態度をあらわにされて。話をしているときも斜めの方向を向いて座って、顔も見ないし。よっぽど言おうかと思いましたが、そこまで親切にしなくてもいいか、と。

でもま、17年でかなりの取材をしてきて2回って、かなり確率低いですね。素敵な方たちとお話させてもらえて私はラッキーだと感じます。

自分ではない誰かの想いを言語化する

取材をされ慣れている方は別ですが、上手く想いや考えがまとまらない、というのは普通だと思います。私がその典型。取材ではなくても、急に聞かれたことに後で振り返って後悔しない返答ができたためしが、ほぼありません…。

真面目なお話だけで半く、友達とも雑談でもしょっちゅう。だから、スラスラ話してもらえなくても、汲み取る努力は最大限します。

そこは、こうこうこういうことですか?と私なりの解釈で確認したり。

違ったら、そうじゃなくて~と、より正解に近づくし、そうそう!となるとクイズに正解したみたい。

そしてもっとちゃんとした言語化は、執筆の段階で練ります。

はっきり言って、質問事項を読み上げて、上から順番に答えてもらうだけの取材は簡単。時間もエネルギーもミニマムですみます。

さらに書くときも。

山のようにある情報から、大事なことを抜き取って限られた文字数で表すより、少ししかない情報から広げていくほうがやりやすいです。

でも、それじゃ、つまらないかな。

つまらない仕事をしているような気持ちになってしまうかもしれない。

限られた一生の時間を使ってもらい、自分も使うのだから、何かを与えて与えられる、そんな取材ができたらいいなといつも思っています。

実は執筆の作業は、「書かなくて良ければ最高なのにな」と思うことも。

スペイン時代は、執筆が終わり、掲載誌を献本するときにスペイン語に翻訳してプリントアウトしたものも渡していたときもありました。

大変だったけど、関わっているその間楽しい気持ちでいられたのは、取材が成功していたからだと思います。

”取材”という言葉に絞ると必要な人は限られてくるかもしれませんが、多分誰かの”話を聞く”とき、全部同じじゃないかなと感じます。


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