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南イタリアPuglia州のキッチンから “オレッキエッテ”

ミラノから飛行機で南に向かって一時間半、イタリアを長靴に例えるとしたらかかとの部分にあるPugliaを訪れた。

Pugliaといえば、海、オリーブオイル、そして、オレッキエッテ。

オレッキエッテとは、 Pugliaを代表するパスタの種類。

小さな円盤状のフォルムが、耳に似ていることからイタリア語で"Orecchiette(小さな耳)"という名前がつけられたそう。

”Cookpad Italia主催の手作りオレッキエッテ パスタ教室にて”

オレッキエッテは、意外と歯ごたえがあり、パスタもお米も固めが好きな私には最高にタイプな食感。PugliaではCima di rapa(チーマ・ディ・ラパ) という菜の花のような葉野菜を、オリーブオイルと唐辛子、にんにくで炒めてオレッキエッテと頂くのが王道。
柔らかくなるまで茹でたブロッコリーを潰したソースと絡めても、美味しい。

“チーマ・ディ・ラパのオレッキエッテ Orecchiette con cime di rapa”

Pugliaの首都Bari(バーリ)の旧市街を歩くと、まず驚くのは、公私の境目のなさ。家に門などはなく、大体鍵も閉めずに窓も空けっぱなしのため、外から家の中は丸見え。会話まで聞こえる。

大声で笑ったり、怒鳴ったり、個人の喜怒哀楽は常にブロードキャスト状態。誰も気にしない。良い。

こんな時、もっぱら目がいくのは、やはりキッチンだ。キッチンは私にとってはかなり神聖な場所なのだが、ここでは外から色んな台所が見放題というわけで、なんだかラッキーな気分。キッチンに立つマンマの頼もしい後ろ姿を横目に、何を作っているのか想像するのが楽しい。

ランチどきは、もうオープンハウスのような感じで、ご近所さんが行き交い、誰がどの家族なのかわからないような状況。プライバシーなんて言葉、縁もゆかりもない。ミラノではありえない。

街を歩いていると、ノンナ(おばあちゃん)が道に机を出してオレッキエッテを作っている姿を時々見かける。ここでは、道さえもキッチンになってしまうようだ。キッチンは内に秘めるものという私の勝手なイメージは、大いなる誤りだったのかもしれないと少し反省。

今まで何千ものオレッキエッテを生み出し、家族やご近所さんの胃袋を満たしてきたであろうその手から次々と生み出されるオレッキエッテの美しさ。今後オレッキエッテを口にするとき、この手が脳裏に浮かぶと思うとパスタが何倍もやさしく、美味しくなりそうで嬉しい。


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