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心にハグを 〜はじめて見えてきた児童養護施設〜 - 誰ひとり置き去りにしない社会へ vol.1-

誰ひとり置き去りにしない社会をめざして・・・
さまざまな現場の声、まなざしを紹介する連続企画です。

5月5日に開催した第一回目のテーマは
「心にハグを 〜はじめて見えてきた児童養護施設〜」
児童養護施設に働くことで感じること・知って欲しいこと・・・児童養護施設勤務2年目の鈴木禎子さんから伺いました。

児童養護施設を取り巻く現状

今、日本で親元を離れて暮らす「要保護児童」は約4万5千人。そのうち約2万6千人が、全国に615ヶ所ある「児童養護施設」に暮らしています。児童養護施設とは「保護者のいない児童や保護者に監護させることが適当でない児童に対し、安定した生活環境を整えるとともに、生活指導、学習指導、家庭環境の調整などを行いつつ養育を行い、児童の心身の健やかな成長と自立を支援する機能を持つ施設」のこと。2歳から18歳の子どもたちが、虐待、(父/母の)精神疾患などさまざまな理由から入所しています。施設では生活支援や傷つきのケア、愛着(アタッチメント)の獲得、生い立ちの整理や自立支援などさまざまなことに取り組んでいますが、アフターケアや固定した大人とのアタッチメントなど、施設でも対応はしているものの、どうしても十分には満たすことが難しい課題があります。

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知ること・関わりを持つこと

参考になる資料として、禎子さんから以下のような情報の紹介がありました。

・ 児童養護施設の職員の確保・定着・サポートを手がけるNPO法人チャイボラ。( 施設紹介の動画はこちらです)

・  社会福祉法人「聖友ホーム」が中心となりたちあげた「すぎなみ里親プロジェクト」による里親制度についての人形劇「春ちゃん手をつなごう」の動画

・児童養護施設出身者3人の視点から社会を考え、新しい未来をつくるための"声"を発信する「Three Flags - 希望の狼煙」 

・児童虐待を題材とした映画「ひとくず

禎子さんからは「施設によっても、子どもによっても一人ひとり状況が違う。そこにある一人ひとりの人生に思いを寄せて欲しい......」とのメッセージがありました。そして

  ・  伝える(想いを持つ)こと
  ・ (ボランティア・セミナーに)おもむくこと
  ・ 寄付などを通じて行動を託し預けること
      ・   子どもを迎えいれること

といった選択肢があることを知り、できることから行動していけたらというメッセージがありました。

虐待・暴力のない世界へ - SDGsの観点から

児童相談所に寄せられる児童虐待相談件数は年々増加傾向にあり、令和元年度で過去最多の193,780件にも及んだとのこと。虐待に関して、SDGsの目標16にいくつか関連する記述があります。

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SDGsの目標16(平和と公正)
・16.1 あらゆる場所において、全ての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
・16.2 子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び 拷問を撲滅する。

他にも「貧困(目標1)」「教育(目標4)」(望む教育を得ることの困難さについて、施設出身の方からの共有がありました)「雇用(目標8)」「不平等の是正(目標10)」など、SDGsのさまざまな目標が関連していると感じました。 *SDGsの17の目標、169のターゲットについてはこちらのページの総務省仮訳(PDF資料)をご参照ください。

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児童養護施設の子どもたちに、あなたの最高の1冊を -JETBOOK作戦

児童養護施設出身者が立ち上げた「JETBOOK作戦」というプロジェクトが、クラウドファンディングで支援を呼びかけています。児童養護施設の子どもたちに、あなたの最高の1冊を届けたい。1万冊の本を届けよう!というこのプロジェクト。立ち上げた「ゆなさん」の声を、私自身clubhouse(音声SNS)で直接耳にしました。本はこころの支えになります。そして何より児童養護施設に関心を向ける人たちの存在がこんなにあるということを、児童養護施設にいる人たちに届けたい。つながりをつくりたい。そんな想いから高い目標を設定してチャレンジしている姿に、とても心を打たれました。つながりがあることが、支えになるということ......そのため、このプロジェクトを通じて届ける本は、施設の近くの書店から購入するそうです。少しでも施設と地域とのつながりが育まれることへの願いから。クラウドファンディングの締切は5月31日。こちらのサイトに詳細がありますので是非ご覧ください。そしてお気持ちが動いたら応援いただけたら、私個人として、とても嬉しく思います。

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心痛む課題に寄り添う人たちへのNVCの実践

NVC (Nonviolent Communication)は、マーシャル・B・ローゼンバーグ博士が体型づけたコミュニケーションの手法・精神性です。

あらゆる感情の背後には、私たちのいのちを突き動かす源にある「大切なもの(ニーズ)」がある。感情に気づき、その奥にある大切なもの(ニーズ)につながることを、NVCでは「共感(Empathy)」と呼んでいます。例えば「この悲しさがあるのは、わかりあいたいという願いがあるからだ・・・」「悔しい。それは、本当に力になりたいと願っているからだ・・・」。といった風に、どのような感情も歓迎し、受けとめあうことで、自分自身をケアし、お互いを受けとめあっていく。

必要があれば十分に嘆くことで(「嘆く」ということも、私たちの生命活動にとってとても大事なニーズとNVCでは捉えています)、嘆きを、いのちをいかしあうための行動へと結びつける力に変えていく。「心痛める人と寄り添う」人たちの間で大切にされている「嘆きをはきだす」「それを共感でうけとめあう」という実践。このことについても、もう少しじっくりと共有する場をつくれえたらと考えています。
感情・ニーズの言葉が記されたリストはこちらのサイトよりダウンロードいただけますのでご活用ください。

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最後に寄せていただいた感想をご紹介します。多くの方々にご参加いただき、ありがとうございました。

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次回は5月18日: 困難な状況に置かれた女性たちへのエンパワメント - ラオス障がい作業所から

次回は5月18日。- 困難な状況に置かれた女性たちへのエンパワメント - ラオス障がい作業所から-というテーマで、Support for Woman's Happiness(SWH)の 福井里佳 さんから伺います。
お申し込みはこちらから。多くの方にシェアいただけると嬉しいです。

SDGs x NVCのワークショップ、大学などの教育機関や公共機関などさまざまな場で開催しています(参考事例はこちらをご覧ください)ご関心がある方は気軽にご相談ください。

CNVC認定トレーナー
今井麻希子