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少年サッカーを、2倍楽しく見る方法

少年サッカーは、親たちにとって最高のコンテンツです。
特に、4種の小学生のサッカー。
なぜそんなにおもしろいのか、この「沼」をもっと楽しむために、どうすればよいのかについて、親とマーケッターの視点から書きます!

わが子が出ている試合は、チャンピオンズリーグと同じぐらいおもしろい

サッカーをしている子どもを持つ母と父であれば、間違いなく賛同するはずです。(自社調べ)

長男が小学生であった6年間、僕の生活は完全に少年サッカーを中心に回っていました。そんな人が周りにはたくさんいました。(この人は平日に練習を見に来ているけれども、なんの仕事をしているのだろう)

それは、子どもたちのサッカーが「本当におもしろかった」からです。
あえていうと、世界最高のプレーの質を誇る、チャンピオンズリーグに匹敵するほど興奮させられました。

当たり前ですが、子どもたちのプレーの質は、とても高いとは言えません。はっきり言うと、とてもとてもとても低い。
しかし、プレーの質だけが人を惹きつけるわけではありません。

人を惹きつけるコンテンツのおもしろさ」は、
「コンテンツ自体の質の高さ」と「コンテンツと自分との関係の深さ」の掛け合わせによって決まります

たとえば、「君たちはどう生きるか」という同じ映画を見ても、これまで宮崎駿の映画を深く見てきた人(たとえば岡田斗司夫)と、数年に一度だけジブリ映画に触れる人(たとえば僕)では、その映画から引き出せるおもしろさの総量は、まったく異なるということです。
(もちろん岡田さんの方が、いろんな種類のおもしろさを、たくさん引き出せて、はるかにおもしろく感じることができるでしょう)
千原ジュニアは、たしかどこかで「知ってるやつのおならが一番おもろい」と言っていました。(うろ覚え)

つまり、コンテンツのおもしろさは、「あなたとそのコンテンツとの関わりの深さ」によって変わる
そして、あなたがそのコンテンツとの関わりを、もっと深められれば、もっと多くのおもしろさを引き出せるということです。

多くの親にとって、わが子のサッカーは「自分との関係」が世界最高レベルに深い。それが、世界最高の質のチャンピオンズリーグと同等レベルのおもしろさをうみ出しているのです。


小学生は下手くそだけれど、それがいい(こともある)

先ほども言いましたが、小学生のサッカーのプレーの質は低い。
パスは、3本つながればすごい、5本つながれば奇跡。
ディフェンス・スキルなんてないに等しいので、少しドリブルがうまい子が相手チームにいると、抜きまくられます。(1人の相手に4、5人抜かれて点を入れられた時の無力感ったらない)
逆に、自分のチームにそんな子がいたら、「あの子は絶対にプロになる」とかなんとか言い出す始末。

でも、プレーの質が低いのは、悪いことばかりではありません。
プレーレベルが全体的に低いことで、たまに上手いプレーがあると、ものすごく印象に残るのです。わが子が活躍したら、一週間はそのプレーを脳内再生することで、楽しめます。

全体としてレベルが高いために、たまに見るミスや下手なプレーが目立つプロとは対照的です。(サッカー好きの人たちは、欧州やJリーグのプロに対して、つい「下手くそ」と言ったり舌打ちしてしまうことがよくあります。私もそうです)

子どもの試合を撮影する

少年サッカーの試合場では、試合を撮影する親が溢れかえっています。
よりよい位置から撮影しようと、パパママカメラマンの場所どりの争いも起こります。よりよい音質でコーチや子どもたちの声をとるために、風よけのマイクカバーは必須です。

なんのために、親たちはよい画像、よい音声で撮影したいのでしょうか。
それは「子ども自身が、自分のプレーを客観的に見直して課題を見つける」ためでは、決してありません。
残念ながら、子どもが自分のプレーを見返すのは、0-5で大敗した後、コーチに言われて負けた要因をサッカーノートに書いて提出しなければならない時だけです。(体験談)

親が子どもの試合の撮影に努力する目的は、ひとえに親である私が、”わが子の活躍をよい画像で見たい”からなのです。

しかしこのこの”わが子の活躍をよい画像で見たい”という欲求は、親だけでは満たすことができません。
よい画像で撮る前に、わが子に活躍してもらうことが必要なのです

Joshua ChoateによるPixabayからの画像

子どもの練習をどのようにサポートするのか

わが子が活躍する試合を見たい親は、そのためにどのようにサポートすればよいのでしょうか。

まず、子どもをサッカースクールに入れる、という選択肢があります。
評判のよいサッカースクールの情報は地域で流通していると思います。それをパパママ友だちに聞けばばみんな教えてくれるでしょう。
長男の時は、低学年の時はドリブルに特化したスクールが人気。高学年時には、加えて認知判断を鍛えるためのスクールが増えてた印象でした。
スクールは、お金をとる分だけ指導に手をかけてくれるので、楽しくサッカーを学ばせてくれる。親がするのは送迎と月謝を払うだけなので、うまく活用すればよいと思います。

次に、自主連です。
サッカーは不器用な足でボールを扱う競技です。なので、その不自然な行動に慣れるために、毎日ボールに触れることが必要です。

少年サッカー時代において、選手としての上手さは、ボールに触れる回数に比例します。毎日ボールに触っている子の方が、週3回の練習の時だけボールに触れる子どもよりも確実に上手い。
「スペインは週2回の練習と日曜の試合しかない」のような話を見ることがあるかと思いますが、これはチーム練習やスクールの話です。遊びとしてのサッカーは毎日やった方がよい。もし、友達とサッカーをして遊ぶ環境があれば最高です。

この自主練が最大の難関です。
うちの子を含め、多くの子どもは「メッシみたいになりたいけど、そこまで練習はしたくない」という、明らかな矛盾を抱えた生き物だからです。
(もしあなたの子どもが「努力を惜しまず練習する」場合は、ここから先は読まなくてもよいです)

そんな子に、「メッシは、天才といわれると気分を悪くするらしいよ。なぜなら、ホルモン分泌不全症の彼がこれまでにしてきた努力が軽んじられていると感じるから」とか、「C・ロナウドは、身体に悪いものは摂らないし、今でもだれよりも早く練習場にきて、だれよりも遅くに帰るらしいよ」などといっても、寝転んでワンピースをよんでいるソファから、彼が立ち上がることはないでしょう。
せいぜい、「明日から頑張るよ」という、永遠に来ない明日に向けて行動を先送りする言葉が聞けるだけです。

まず、親としての真実に向き合う

では、どうすればよいのでしょうか。

大切なのは、前提としての「親としての真実」を自覚することです。
それは、親が子どもの練習をサポートする理由の中に「子どもが活躍する姿を見て、私たち親が楽しみたい」という親の都合が50%ぐらいは入っているということ。
親としての練習のサポートが、「子どものため100%」ではなく、「子どものため50%、親自身のため50%」と考えておく、ということです。(本当は親のため70%ぐらいだと思いますが)

そう考えると、練習しないわが子に対するイライラ、モヤモヤが少しは収まるのではないでしょうか。子どもは「あなたを楽しませるために、努力してくれているありがたい存在」になります。

「あなたのために言っているのに」「こんなにサポートしてやっているのに」などと「子どものため100%」の目線で考えると、最近スタメンから落ちたのに、家でゴロゴロしているわが子をみて、いら立ちを禁じえないでしょう。

僕の周りには、そのいら立ちから「本気でないのであればサッカーなんてやめてしまえ!」という思ってもいない言葉を言ってしまって、親子関係が気まずくなったり、本当にやめてしまった家庭もあります。「愛ゆえに」言いたくなってもそこは我慢。
”たかがロックンロール、されどロックンロール”の距離感が好ましい。結果、サッカーを辞めてしまったら、あなただけのための最高のコンテンツを失うことになってしまいます。

PDCAで、少しずつ練習を習慣にする

僕たち親の側から、もっと子どもに寄り添ったアプローチが必要です。

どんな子どもでも、月に数回はサッカー熱が盛り上がる瞬間があります。

たまたま練習中に点をとった時、スタジアムで試合を見た時、来週の試合でスタメンになりそうだと聞かされた時、地域リーグで先輩のチームが優勝した時などなど。

そんな瞬間を逃してはなりません!

ここから、

子どもの気分を捉える練習を考える(Plan)
→ ちょっと練習してみる(Do)
→ 試合でやってみる→活躍する(Check)
→ モチベーションがちょっとあがる
→ 練習時間をのばし、次の練習を考える(Action)

という練習習慣のPDCAサイクルを回していく必要があるのです。

たとえば、試合をみていて、子どもがデブライネのキックに目をひかれていたら、高速クロスの練習に誘ってみる。
練習して、試合で試してみる。
うまくいけばよいし、うまくいかない場合は、子どもの関心度合いをみながら練習を続けるか、新しい練習に向かうかを決める、といった感じです。

PDCAは、マーケティング業界では昔から使われているベーシックな考え方です。深く考えるといろいろありますが、 「計画して、実行して、チェックして、修正する」というサイクルを回す、ぐらいで理解してもらえればと思います。類似にOODAループというもののあります。

練習のコストパフォーマンスを考える

このPDCAサイクルを回す上で、重要なポイントが「練習の労力対効果」です。「その練習にどれだけ労力をかけ、それによって、試合で活躍するための上達をどれだけしたのか」ということ。
練習のコストパフォーマンスともいえるでしょう。

子どもの集中力が続く時間は、短い。
うちの子の例でいうと、公園について30分が勝負でした。

もし30分の練習で、試合でできることが増えて上達が実感できれば、子どもはもっとサッカーが好きになり、練習にも継続的に取り組むようになるかもしれません。
親はそんな子どもの活躍する試合を、世界最高のコンテンツとして見られて最高です!

コスパのいい練習ってあるの?

でも、コスパのいい練習方法なんてあるのでしょうか?

前提として、すべての子どもがこれをやれば活躍できるという方法はありません。一人ひとりの子どもの性格、身体能力、認知能力、環境が異なるからです。

長男が小学生のこの育成沼時代に練習メニューについてはいろいろと調べました。
そこで僕が見た限りでは、世界を見渡しても練習メニュー自体にそれほど大きな違いはないようです。
世界の情報が入ってきやすくなっていますし、最近のコーチは勉強熱心なので、ナーゲルスマンだろうが、ガスペリーニだろうが、世界最先端の練習方法を知っていると思った方がよい。
練習効果の違いを生んでいるのは、選手の状況に合わせて、練習によるスペースのオーガナイズと、声がけを実行できるかにあるようです。

ですので、みんなを上手くするのは本当に難しい。コーチは大変な仕事です。それでも、わが子だけを上手くするのであれば、やりようはあると思ってます。

僕は、子どもが集中できる「この30分」の中で、できるだけ実践的な力をつけるための練習をいろいろと工夫しました。(気分はペップ)

その時に、「他の人はどうしているのだろう」とネットで検索したので、僕も体験談も書いておこうと思ったのが、このnoteを書いたそもそものきっかけです)

うちの長男は中学3年生で、すでに親の手を離れてしまいました。

たまには僕から「こういう視点もあるんじゃないの」とか「この選手のプレーは参考になるのでは」というような話もしますが、彼自体のプレーレベルもどんどん高くなってますし、コーチの指導方針もあるので、小学生のころほど濃密な育成時間はありません。

長男は関東リーグ一部のチームに所属していて、来年からユースに上がります。その成長の7割は本人の努力、2割はコーチのおかげですが、毎日の自主練に付き合った僕の力も2割ぐらいはあるはず・・・と思いたい。(願望)

練習メニューの工夫を楽しむ

それでは、どうすればよいのでしょうか。

先ほどPDCAという話をしましたが、
これはアトレティコ・デ・マドリードのディエゴ・シメオネのアプローチ「Vamos partido a partido(一試合一試合、全力で行こう)」の考え方を日本の小学生の生活に落とし込んだものです。(大風呂敷)

近しい考え方に戦術的ピリオダイゼーション理論というものがあります。
スペシャルワンによって有名になった理論で、「ピアニストはピアノの周りを走らない」という名言、迷言?があります。僕は、チョリスモの方が好みです。

まず、子どもの試合を分析するところがスタートです。
どうせ、ビデオやスマホで試合は高画質録画して、何回かは見ているはず。分析といっても、みる時の、意識を少し変えるだけです。

映像では、子どもが活躍できそうだったのに、活躍できなかったシーンに着目します。そして、なぜ活躍できなかったのか、なにができれば活躍できそうか、わが子の活躍を妨げている要因を考えていきます。

たとえば、小学生低学年であれば、コントロール時のボールの置き場所、ドリブルの方向のミスが多いかもしれません。

そして、その「妨げている要因」をプロが解決しているシーンを、Youtubeでいくつか探して、子どもに見せます。Jリーグでも海外サッカーでもよいです。
見せるときは、あくまでも自然に、でも「このファーストタッチで勝負ありだった」という絶賛コメントをつけて関心を高めます。(せこい)
もし、子どもが狙いどおりそのプレーに関心を持つようであれば、そこから練習のPDCAサイクルをスタートさせます。
プロのプレーイメージを持たせながら練習するので、上達もしやすい気がします。

ここで大事なことは、練習のテーマは一つに絞ることです。継続している練習をしてもよいですが、優先順位ははっきりさせます。今週はこの練習をやった、と子どもに自覚してもらうことが大事です。
そして、試合に向かいます。

試合後は、撮影した試合の映像を見て、どんな小さなプレーであっても必ず上手くなった点を見つけます。そして、それを見せながら褒めます。
「このコントロールがうまくいったから、相手に寄せられる前にパスが出せているね。この後のパスが通れば、アシストになるチャンスがあった。練習でやっていたことができたね」
たとえ、練習通りにできたのがワンプレーでもそれを必ず拾う。そして、練習の成果が見て取れる映像を事実として見せるのです。
いきなり点を取って大活躍するようになるのは現実的には難しい。でも、前回からのパフォーマンスの向上を感じさせる声がけは可能です。
(パフォーマンスの向上を感じれば、結果として練習のコスパも上がります)
そこから、新しい練習テーマを設定して練習し、また次の試合に向かうのです。(Vasmos!)

これを続けていくことで、子どものモチベーションはちょっとずつ上がっていきます。そのうちに、点数も取れるようになるでしょう。

わが子の様子をチェックする

子どもによって、関心の高いプレー、得意なプレーは違います。
長男は、キックに対する関心が高く、ドリブルにあまり興味がありません。インサイドキック、足を寝かせたインステップは得意ですが、アウトサイドキックは何度練習してもうまくなりません。これは足の形状も関係あると思います。

当たり前ですが、関心が高く、得意なプレーの方が、上達が早いのでここから取り組むべきです。
長男は、シュート練習やフリーキックの練習は集中して続けられますが、ダブルタッチやマシューズの練習は、すぐに飽きてしまいました。

まず強みを伸ばして、弱みは後で考えればよいと考えています。
何か強みがあれば、試合で活躍するシーンが少しずつ増えて、サッカーが楽しくなるからです。
将来を考えると逆足は蹴れた方がよいですが、両足70点ならば、利き足100点、逆足20点の選手の方が活躍できるでしょう。マラドーナは左足、ベッカムは右足だけでトッププレーヤーになりました。

この時に、ユース年代でどんなプレーヤーになりそうか、をざっくりとイメージしておくと練習の優先順位が考えやすくなります。
技術的な特徴、身体的な特徴、認知的な特徴から、イメージをつかみます。ディフェンシブ・ミッドフィールダーでも、カンテ、ブスケッツ、ピルロで優先すべきことは違います。
もちろん、子どもは変わっていくので、あとからイメージするプレーヤーが変わっても問題ありません。
小学時代の長男は、ディエゴ・コスタのようなCFになりたいと言っていたのですが、今はディフェンスにコンバートされたので、目指す選手は変わりました。但し、練習で培った球際の強さ、ロングキックの精度を強みとする点は変わりません。

子どもが集中して取り組めているか、楽しめているか。同じ練習を継続するか、新しい練習に切り替えるか。親のチェックも大事なところです。

一度でうまくいくわけはありません。ある瞬間に上がったモチベーションが、次の一週間は上がらない、なんてこともよくあります。
それは、あなたの子どもがやる気がないからではありません。それは小学生にとっては当たり前のことなのです。

子どもの変化に立ち会う歓び

僕は、わが子がはっきりとモチベーションを上げた瞬間を覚えています。

最初は、5歳の夏休みでした。
その時、田舎のおばあちゃんの家の庭で、3日間毎日30回ぐらい、一対一のゲームをしました。子どもが勝つと、おじいちゃんから勝利給20円をもらえるという条件でした。長男は毎日16勝14敗で勝ち越して、40円のお小遣いをゲットしていました。
後日、チームでひとつ上の6歳の練習に参加した後に一言、「おれ、うまくなった」
得点したわけでも、アシストしたわけでもありません。コントロールで思った場所の近くに置ける、ドリブルで今までより2メートル前まで運べる、入らないまでもシュートが打てる、など、感じるところがあったのでしょう。
これは、親だからこそ感じられること、気づけることです。
子どもが変化する瞬間に立ち会えることは、ものすごい歓びです。

もちろん、そこから自分で練習するようになった、なんてことは決してありません。中学3年生の今でも、チームで決まっているはずの体幹トレーニングもさぼり勝ちです。(チームには「やってます!」と虚偽報告)

Lorenzo CafaroによるPixabayからの画像

最後に、まとめます。

少年サッカーを2倍楽しむ方法とは、子どものサッカーの自主練に2倍関与することです。
少年サッカーの楽しい時間はあっという間に過ぎ去ります。その間は子どもとの練習時間を100%で楽しんでください。

  • わが子のサッカーは最高のコンテンツである。

  • 少年サッカーを2倍楽しむ方法とは、子どものサッカーの自主練に2倍関与すること。

  • 子どもを上手くするために、試合を見て活躍を妨げる要因を探し、PDCAを回す。

  • 子どもの変化に立ち会う歓びを得よう。


読んでいただきありがとうございました。

おもしろかったら、いいね ♡ してくれると嬉しいです。




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