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「シブヤのサカイメ」はじめに~①神宮通公園

はじめに

恵比寿に自転車で行くと、帰りはいつも、どう自宅がある渋谷へ戻ろうかと思案する。行きは一切迷わず、目的地への最短ルートを選ぶのに。

恵比寿からは渋谷へは、大きく分けて、3つのルートがある。駒沢通りから代官山方面へ向かい旧山手通りに出るか、駒沢通りを渋谷橋に向かって行き明治通りに出るか、それとも、恵比寿西の五叉路から、山手線の線路を目指すか。

その日は途中にいいカフェがあればそこで読書しよう、なんて気分で、恵比寿駅をアトレ口から出てまっすぐいった先の五叉路を経由し、渋谷に戻ることにした。
五叉路の付近には雑誌によく登場するような、そんな話題のお店が連なるものの、このお店はひとり客向きじゃないな、このお店は混んでるな、なんて選り好みをしていたら、あっという間に恵比寿を抜け、気が付いたら渋谷の境目にいた。分かるだろうか、渋谷の境目。ここから先は渋谷、そんな空気感のある地点のこと。そのひとつが山手線の線路沿い、代官山マンションを過ぎた最初の角、上に八幡通りが通っている、トンネル前にある。

はじめに恵比寿ー渋谷


ああここから先が渋谷だなあ、そう感じて、ただ何が「渋谷」を醸し出しているんだろう、が気になって、それから街歩きをするたび、自転車に乗るたび、その境目について考えるようになった。

①神宮通公園

日曜日は子を認可外に預けているので、まとまった自由時間があり、そして日頃の運動不足解消のため、自転車だと履きづらいスカートを履くため、自転車だと汚してしまうから使えない「よそゆきのバッグ」を持つため、そんな気持ちから、徒歩で移動することが多い。その日も、パートナーと青山でランチをした後、ハイブランドが立ち並ぶ並木通りでぶらぶらウィンドウショッピング。そして明治通りを経由して、渋谷に戻ることにした。

渋谷が戻る場所になったのは、2015年のことだ。離婚を契機に渋谷にマンションを買った。それまでも職場が渋谷で、渋谷にいる頻度も時間も多くの人よりずっと高かったものの、生活圏が渋谷になるのは、ずいぶん違う。
当時の自宅~東急ハンズからNHK方面に抜けた先にあった~に戻るたびに、引っ越した当初はずっと外出が続いているような、そんな不思議な心持ちがして、それでもいつしか渋谷は友人と会う場所でもあり買い物をする場所でもあり、そして帰る場所になって、それがとても自然なことになった。
子どもができて再婚して当時の自宅マンションが手狭になった時も、引っ越し先の物件を見比べる際、ついつい考えていたのは渋谷からの距離。結局最初の家と比べると少し渋谷の中心からは離れたものの、引き続き渋谷の中に住めるマンションを見つけてほっとした。

明治通りを左折しても、表参道同様、路面店が多く立ち並んでいる。ただこちらはアウトドアブランドだったり自然派化粧品だったり、雰囲気は表参道とがらっと変わる。そしてどんどんカジュアルな雰囲気になり、渋谷デサントのビルがみえてくると、そこから先は、どうも渋谷。

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表参道ー神宮通公園

渋谷CASTや渋谷cocotiといった、渋谷にしてはこぎれいな商業施設が点在するものの、入っている施設のとりとめのなさ(渋谷CASTはスーパーマーケットとレストラン、ビジネスオフィスに賃貸住宅、渋谷cocotiは映画館に音楽教室、レストラン、ジムにスターバックスだ)がとても渋谷らしいなあと思う。
調べてみると、このあたりは江戸時代「上渋谷村」と「隠田村」と分かれていたようで、確かに昔から境目だったよう。

神宮古地図

明治通りの反対側には神宮通公園がある。
そこには著名な建築家、安藤忠雄さんが設計した公衆トイレが設置されている。

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https://tokyotoilet.jp/jingu-dori_park/

このトイレをみた第一印象は失礼ながらあまりにも唐突、で、そしてそれが何より渋谷ぽかった。

渋谷の特徴であり魅力のひとつに、きっと「無節操」がある。ヨーロッパの街並みとは正反対の、周囲の調和を考えず、建造物が、人が、ただそこに在る感じ。表参道ではこぎれいにしていないと何だか恥ずかしいし、原宿の竹下通り付近はカジュアルダウンしないと、逆に浮く。一方、渋谷はどんな恰好していても「渋谷」が故に馴染んでしまう。表参道ではピンとしていた私の背中は明治通りに入ってからぐんぐんと丸くなり、神宮通公園脇を通って渋谷の神南エリアに入ればすっかりいつも、元通りなのだった。

②「松見坂交差点」へ続く


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