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映画 『Coda コーダ あいのうた』のこと

原題:CODA
公開:2022年
鑑賞:劇場2D(字幕)
 
いい映画だなぁ、劇場で観る映画はいいなぁ、と胸いっぱいに。素晴らしいOST(サントラ)を聴いてウルウルしながら感想を書き終えました。
  
コーダ(CODA ; Children of Deaf Adult/s)が「ろう者(耳の聞こえない)親を持つ、聞こえる子ども」という意味だと初めて知った。副題「あいのうた」がなくても広く通じるようになるのを願います。 
https://jcoda.jimdofree.com/
https://marblemammy.wixsite.com/coda-and-parent


 

  

  
🛑 🛑 🛑 ネタバレあり 🛑 🛑 🛑
  

  

  
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●「少女ルビーが歌の道に進みたいと願い、反対する家族から理解を得て、その一歩を踏み出す」だけの物語。世界を救うでも難病克服でも真理追求でもない。衝撃の事実も事故も事件もない。それがこれほど胸を打つのは?この流れる涙の理由は?

●近年、私が観ただけでも『サウンド・オブ・メタル』『エターナルズ』『ホークアイ』『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』『クワイエット・プレイス』『マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~』など、ろう者が登場する映画やドラマが増えている。特に『サウンド・オブ・メタル』は、ハンディキャップではなく個性とポジティブに捉えて生活する姿が描かれた。本作ではルビーを通じて、ろう者の家族や生活、ヤングケアラーの問題を見せてくれる。不勉強を恥じつつ学ぶことが多かった

●ただでさえわからない手話、下ネタ満載スラングを折り混ぜる豊かな表現力に驚かされた。リズミカルでダイナミックで面白い

●ルビーは英語よりも手話(ASL)を先に覚えざるを得なかった。幼い頃から家族の通訳をして早熟したのに、学校でからかいの対象にされるのは過剰なストレスだったはず。そんな彼女にとって手話が第一言語と随所でわかる。授業中の居眠りから起こされたとき、V先生に「歌っているときはどんな気分?」と問われたとき、咄嗟に出るのは手話だったよね

●ママの「生まれたあなたが"聞こえる"と知って悲しかった。わかりあえないと想ったから」という吐露も心に残る。健聴者の常識で図れるものじゃない

●合唱発表会での無音演出、静寂の雄弁さ。劇場鑑賞ならではの緊張感と一体感。ルビーの歌声はわからなくてもそれが父兄達を感動させていることに気づくパパ。心情が映画を観ている私たちにダイレクトに伝わる、と同時に涙がこぼれだした。さらに帰宅後にルビーがパパだけに歌う『You’re All I Need To Get By』。パパが「娘の喉に触れて、歌を聴く」のに涙腺決壊。私も一緒に抱きしめたくなった

●バークリー音楽学校の実技試験。駆け付けたV先生が伴奏ミスるのは何かのトラウマか、絶対合格させたい緊張からか。厳しかった彼もかつて失敗して大事な夢を諦めたんじゃないか、と想像したり
(追記)コレ私の勘違いで…V先生は歌が安定しないルビーのためわざとミスって止めたの?…だとしたら尚更 V先生っ!MVPだよっ!

●ルビーがジョニ・ミッチェル『青春の光と影』を歌いながら手話を交えだす。二階席の家族に歌詞を伝えたかったんじゃなくて「私は歌うのも大好きだけど手話も大好きだよ、私たち家族は手話で結ばれているよ」と高らかに宣言したように感じた。劇場だから声を出すのは必死に我慢したけれど自宅だったら声あげて泣きそうに

●ルビーの唯一の親友がヤリマンなのもいちいち笑えた。だけど彼女は相手がろう者かどうかまるで気にしてないんだよね、単なる脇役じゃない

●小型船で波を切る様に『ダンケルク』や『マンチェスター・バイ・ザ・シー』をなんとなく連想したら、どれもコーディネーターが同一人物だそうで

●パパもママもお兄ちゃんもルビーを愛しているからこそ、ルビーも家族を愛しているからこそ、ぶつかって嘆いて腹を立てて抱き締めて、そのどれも押しつけがましさがないから、釣られてこっちも泣いて笑って泣いて笑っちゃう。ルビーの旅立ちにパパが「GO」と声を出す!ルビーが身を乗り出して「I Really Love You」とハンドサイン!もちろんこれは家族のひとつの通過点。このさき彼らに厳しい現実が待ち受けるかもしれない。それでも互いをわかりあおうとすること、一歩前に踏み出す意思を受け止めた。胸いっぱいになりながら


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