日々の関心事を

今日は旧暦の元日ということで、なんとなくnoteを始めてみることにしました。
日々の些細な、ちょっと気になったことを時々書いてみようと思います。

ということで、はじめてのnoteは、1月17日にリリースされた坂本龍一氏の新譜『12』。
届いてから、毎日聴いています。

坂本龍一『12』 commmons(2023)


ご本人がインタビューなどで話していますが、大腸癌の手術のあとにしばらく音楽をつくることは勿論、聴くこともできない時期があって、
でも、ある時ふと鍵盤に触れたら、“体と心のダメージが少し癒やされる気がした”と。そこから日記のように、スケッチするようにシンセサイザーやピアノを奏でて録音していったことが、このアルバムの発端になっているそうです。
そこにあるのは、あの有名な『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』のような映画やCMで使われてきた“音楽”はなく、さまざまなものを聴き手に想起させる音の記録のようでもあり、音の断片が連なる美しい山脈のようでもあります。
幾重にも重なる繊細な音を発見する喜びは、偶然撮られたスナップ写真に写り込んでいるさまざまなものを、自分だけの大切な宝物にできたような幻想に似ているかもしれません。

最近、読んだ某媒体によれば、坂本氏はある時期から“メロディー”に抗ってきたといいます。偶然に生まれる産物としての音、ノイズやエラーなど、人の意図が及ばない音の領域にのめり込んで、そこから生まれたのが2009年にリリースされた「out of noise」でした。

ちょうど、このアルバムがリリースされた頃に、坂本氏にインタビューする機会がありました。
媒体はエコロジーオンライン。インタビュー内容は、同時期に氏が立ち上げた森林保全団体「more trees」についてで、新譜制作のために北極圏へ行って、氷の割れ目から水中マイクを海の中に沈めて音を録音した話から、北極で暮らす人々にとって深刻な事態になっている気候変動への危機感を語ってくださいました。

記事の文末で、坂本氏が自身の死生観と、日本の土の豊かさについて語っていて、とても印象に残っています。

「・・・日本の土って黒々として湿っている。そういう黒々とした豊かな土壌が地下1メートルくらいまである。そんなところ、世界にあんまりない。微生物が豊かな土壌に埋められて分解され、次の生命の養分になりたい。僕にとってそれが輪廻です。きっと、縄文人より前の石器時代の先祖が大陸を渡ってきて、あーいいところだなって思って、この列島に住み始めたんですね。森が多くて、水も豊かで、その頃の列島は天国みたいなところだったんじゃないかな?」(坂本龍一「危機感からmore treesが始まった」エコロジーオンライン

14年前にリリースされた「out of noise」からの流れを汲む坂本龍一の「12」、聴いてみてください。


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