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#4_読書感想文「転職の思考法」

北野唯我(2018)「転職の思考法」ダイヤモンド社

何やらベストセラーになっているようですので久々に書いてみました。読んで、トークセッションにも呼んでいただいて楽しかった。(こちらは後日ダイヤモンドオンラインで公開だそうです)

01:描かれていること

①商品力もイマイチだけどきっちり売り上げのある中堅企業の営業君がいろいろ戸惑いながら転職を模索するお話。

②上記①が連ドラみたいな感じで書かれている。いわゆる小説っぽい対話形式。だが読みにくくない。脚本というか絵コンテがものすごく丁寧に作られているからだと思われる。一行、一文、配置、何度も推敲されている。

(対談読むの苦手な私が言うので間違いない)

③巻末にまとめがついてる。これもこの手の書籍では異色な気がする。あまり読まないジャンルだけど。

02:身につまされたこと

①アーリーアダプターであることの大切さ

「100万人が参加してるゲームで1番を目指すのではなくいずれ100万人が参加するゲームに一番乗りすること」

守備範囲によるだろうけれど、まずはアーリーアダプターを目指すこと、フォロワーシップも最大限大事にするのは大事。まずはここから始まる。これは間違いない。セールスだろうが、バックオフィスだろうが時流はちゃんと摑んでおきたい。

②会社の持つべき強さの文脈は確実に変わりつつある

「いつでも転職できる人間がそれでも転職しない会社が最強」

これも事実。今の勤務先、実は同業他社よりものすごく福利厚生や給与といった面で突出した特色はない。おそらくセールスのトップ層はそういうのではなく、周りのメンバーや所属長、代表の魅力や居場所の良さで居てくれていて、それは今のところ優績者が増えることに一定の貢献をしている。そういう軸がどんな産業/職種にもある程度備わってくるのは長い目で見れば良いこと。

ただし、このくだりは2年前の転職がなければ、つまり居場所として会社にぶら下がる人間が目に付く組織と、自律ありきの働き方が前提となっている組織の両方を見る機会がなければ、私自身がここまで肌感覚で理解できなかっただろうなとも思った。

03:思い当たること

テクノロジーの恩恵で、物理的な距離を超えた共感や協働が可能になってきた今、人と会社の距離も今までになく近づいている(近づくことが可能になっている)。2年前の転職よりさらに前に内定をくれたけど踏ん切りがつかなかったあの会社の人事の方にファンイベントでお目にかかれて、不義理を謝、その後の物語を喜んでいただいたりとか、今の勤務先に引っこ抜いてもらったきっかけは代表が変なキーワード組み合わせで検索して、私が引っ掛かったことに端を発していたりとか。

つまりはその結果として、会社の規模や特性、業界や職種によらず「顔の見える」HRが求められているのだろうと思う。

そういえば、私をホールディングカンパニーに配属してくれた当時の某社社長兼会長Aさんは「相手の顔が見えるところまでセグメントしたのか」が口癖だった。でかい案件だろうが、社内ベンチャー制度に応募してきたナゾ案件だろうがお構いなく同じスタンスで。サラリーマン役員たちの中では異色のオーラを放っていたけどあれは誰よりも若々しい感性があふれちゃってたんじゃないかな、と今になって思い出す。

04:気になっていること

青野君(営業)の転職話は本書の中でハッピーエンドしたけれど、横田君(確か経理)の顛末が非常に気になる。私自身が総務・法務な人間だからかもしれません。(なんか抽選で裏ページから横田編が読めたりしないかしら…)

05:まとめ/今考えていること

縦に伸びるか、横に広がるか、で言えば、35歳でかつ女性の私にとっては、遅ればせながらだがそろそろ横に広がることを真剣に考える必要があって。それは単なるポジショニングというよりは心身の健康上にも必要で。

とはいえ、やりたいことがこれといってあるわけでもない人間の代表格なので、やれることの選択肢の中できちんとビルディングできるかどうかが一つの基準になるのだろうなと感じている。

こうしたタイミングでこの本と出合えたのはまさに僥倖そのものといえよう。なぜか私は20代後半から、4-5つ年下となる86-87世代に思考軸や時間軸のとらえ方、キャリアに対して自ら手綱を握る方法論を学ばせてもらうことが多い。自分にタグをつけること、思考をプロセス化すること、時短とは何を指すのかということ、等々…自らを軸にコマを回し、いま立っている場所がどこなのかを自問自答すること。ありがたいことに、すべて86年生まれの妹や、友人、知人、同僚、元同僚から得た言説だったり、彼らから読み取ったことだったりすることが大半。べき論オジサンに毒されることなくこうして何となく転職してもつぶれずにいるのは彼らのお陰だ。

翻って、キレる17歳世代である我々82年うまれは、どちらかというと「ああいう風にはなりたくないぜ」的に下の世代から捉えられている気がすることが多い。そういう意味ではゆとりの初期世代で、古い世代からの遺産も何かしら引きずっているのだろう。だとしたら、私はすぐ下のキラキラ世代から教えてもらったことを駆使して、要らんものは剥がしていく露払いができれば上等なのではないだろうか、というのが現時点での展望だったりする。

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