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企画仕事の引継書 vol.2

企画仕事について綴るnote、2本目は「セールスコンテンツの企画について」纏めます。

前回のnoteは、企画職に必要な素養について棚卸ししてみました。
今回はコンテンツ企画制作についての基本だと感じていることと、願望について綴ってみます。



このnoteを書こうと思った背景

先日、業務の引き継ぎについて同僚と打ち合わせをしていて、つくづく感じたのですが。
企画仕事を「ルーティーンの作業に組み込める/組み込みたいと思っている」人に引き継ぐのは、なかなか困難な道のりです。
企画仕事の中の「リサーチ業務」だけは“作業”にできるかもしれませんが、収集した情報をもとに仮説をたて、企画を具体的に立案するにあたっては、ルーティンワーク脳のままでは難しいのでは…?と感じました。

また、先日、ある上役から「短納期の案件を納品するスピードが速い」と評価されて(何のことだ?)と思ったのですが、振り返ってみると、これまでトップダウンの「面倒くさい(と、メンバーが思う)」クリエイティブ系や、スキームが無い案件を「わかりました、とりあえずやっときますね!」と引き受け、期日までに納品する…という機会が、確かに多かったように思います。

けれどそれは、企画立案のセオリーに従って仕事をしただけです。


企画の立て方

組織の上層部から、なんらかのリクエストが降ってきた時の企画立案について、私のやり方を紐解いてみます。

1.まず、大きな目標があります。
トップから「取り組んでほしい」とリクエストされたテーマとします。

2.この「理想(テーマ)と現実のギャップ」を洗い出し、
テーマ(ゴール)達成に必要となる“解決すべき課題”をに当たりを付けます。
(これは良いissueであるべきです。背伸びしても届かないような問題は、取り組んでも解決できないので。
 この「組織内で解決しうる課題か否か」は、社外からは特定しにくいかもしれませんね。ヒトモノカネのリソース上限の解像度が高くないと、issueを見つけ出すのが難しいのでは?と思います)

3.筋の良い課題が見つかったら、解決に向けた企画を立てます。

4.情報を集め、整理し、仮説を立てます。

5.仮説について、有識者に壁打ち相手になってもらい、深掘りと整理を繰り返した結果、自信が持てる解決策に辿り着きます。もしくは仮説にお墨付きをもらいます。

6.次に「目的・目標・戦略」を考えます。

7.この戦略を実行するための具体策を考えます。この段階で、やっとツールなどの施策/打ち手に辿り着きます。

ここまでが「企画仕事」に必要なプロセスだと思うのですが、こういう知識は常識として、学校で教えておいてほしい位だと、常々思っています。ビジネスシーンだけでなく、あらゆる組織で必要な考え方のはず。
少なくとも新入社員の時に、安宅先生の「イシューからはじめよ」を必読書にするべきですね。


というのも、この「企画のプロセス」をすっ飛ばして“施策”に飛びつく人が多すぎるのでは?と、常々感じているからです。

100歩譲って、“その施策を打つことが常識となっている”組織にジョインすることになったとします。もう“やって当たり前”になってしまっているので、おいそれと覆すことはできません。

ただ、そうであっても、自分なりに「目的・目標・戦略」に落とし込み、納得して進めたいものです。
ひとつひとつの打ち手について判断する時、「目的・目標を理解したうえで選択しているか?」あるいは「無理解のまま、手当たり次第に対応しているのか?」では、仕上がりも結果が異なってくる為です。選択と対処の違いというか。

施策優先の“企画”は滅んでほしい

百害あって一利なしだなと思っているので、ついタイトルが物騒になってしまうのですが。
どうして“施策ありきで動く人”が多いのか?を紐解いておきたいと思います。

これは弊社に限った話でなく、前職の人材採用コンサルタント時代も、めちゃくちゃ遭遇した(というか7割位はこのケースだったかも)ので、こういう組織は本当に多いんだろうなと思います。


“施策ありき”でプロジェクトが動いていくパターン

1.上層部から
「XXの課題を解決するには、WEBが必要では?」とか
「同業他社が作っているような動画が欲しい」とか
「SNSを活用しよう」みたいな“アイデア”が、担当部門へ降ってきます。
(もしくは来年度予算を立てる時に、「XXがいるだろう」的に適当に仮決めされたものが、いつの間にか本決まりになってしまうとか)

2.アイデア/リクエストを受け止める人(部門長クラスをイメージ)が、
「わかりました!WEBサイト/動画/SNSですね!」と持って帰ってきます。

3.そして部門メンバーに「WEBサイト/動画/SNSを企画して」と丸投げします。

4.この時点で大体「作る」ことを請け負ってしまっている=決定している(と思い込んでいる)ので、いまさら「何の為にそれが必要で、それが最適解なのか?」と聞けません。
(聞けない組織風土である、というのが一番の問題だと思いますが)

この時、丸投げされたメンバーが「そもそも、これは何の為に作るんですか?本当にこれが解決策なんでしょうか?」と尋ねても、施策自体が“決定”してしまっているので、大いなる流れに飲み込まれ、覆すことは至難の業です。
抵抗(提案)すると“うるせーやつ”の烙印を押されてしまうかもしれません。

いろんな部門や社外パートナーを巻き込んで走り始めると、目的を見失いがちになるの、あるあるですよね。悲しいけども。

けれど、ここで待て待て!と言いたいです。
そもそもトップ(発注者)から「Aが欲しいな!」と言われた人は、ぜひその時に
(何故、それが欲しいのか?どんな問題を解決したいのか?)を考えて、
(本当に、それが必要なのか?)とその場で揉んで、
「意外と、Aじゃなくて、Bの方が効果あるかもしれませんよ。一度持ち帰って企画立てますね」と言って帰ってくるべきなのだと思います。

あるいはその場で請け負ったとしても、改めて「Aが必要」と言われた背景を鑑みて、(いや待て、なんか違うのでは?)と思えたら、
「整理して考えてみたのですが、この課題の解決にはBの方が効果的だと考えます」あるいは
「Aが最適解かどうか、一旦揉ませてほしい。必ず最適解をプレゼンしますので」と、約束し直さなければいけないのではないでしょうか。

また、もしメンバーから
「本当にAが必要なのかどうか、リサーチして検証・提案させてほしい」と物申されたなら、
「よし、わかった。自分から発注者に“猶予が必要”と上申しておくし、ヒアリングもするから、主導してくれ」と権限移譲してほしいものです。

(まじで、これを!してくれ!!!偉い人は!!!)

欲しいと言われて即「かしこまり!」と返すのは、御用聞営業と一緒です。
一度持ち帰ったとしても「あなたが本当に欲しいのは、AでなくBですよね?」とソリューション営業を仕掛けるべきです。たとえ社内であっても。社内だからこそ!
ここができない人が本当に多いなと感じています。

こういう案件が増えると、仕事に意味を感じられなくなるので、メンバーの心が磨耗して、モチベーション低下の要因になりえます。いとも容易く。


マネジメント層とメンバーの立場

「権限移譲」と述べましたが、企画部門におけるマネジメント層の仕事は、自分自身で企画ができなくてもいいから、メンバーの専門性やモチベーションの源泉を見極め、適材適所で案件を振って、適度に権限移譲して…でいいと思うのです。
イメージは「鵜飼の鵜匠」みたいな感じです。

トップに従順でなくても、成果が出せる最適解を導き出して、結果がついてくるなら、上にも下にも「いい仕事したね」と評価してもらえるのではないでしょうか。
(そうあって欲しい…という願望込みです)

そしてメンバーの立場としては、「自分はこれが得意」「こういう仕事がやりたい」と常日頃から発信しておくこと。
そして、意味がわからない丸投げをされた時に唯々諾々と従うのではなく、「目的・目標・戦略」の重要性に拘って、問い続けることだと思います。
たとえ「しつこい奴だ、言われた通りに作ればいいんだよ」と思われていたとしても、成果に拘り続けることです。

もしくは、自分自身が納得できるまでリサーチし続け、考え続けること。折れないこと。
自分の心が折れないように、抵抗すること。
それは、プライド(矜持)なのかもしれませんね。企画職としての。


次から、セールスコンテンツやプロジェクトを走らせる時の「進め方」について、整理してみようと思います。


CASE1:トップダウン案件

「上層部から“同業他社みたいなXXコンテンツを作って”と指示があったので、似せたコンテンツを作ります」→これは最悪です。
リサーチ時に、同業他社のコンテンツを調べるのは全然ありです。むしろやらないとダメです。
最悪なのは、そこに自ら立案した企画が無いことです。

そのコンテンツである必然性は、間違いなくあるのか?
そもそも“同業他社みたいなXXコンテンツが欲しい”と思った理由は何なのか?
まずはこの2点の疑問からスタートする(発言の真意を疑ってかかる)ことが大切です。

なぜなら、潜在的なニーズが隠れているかもしれないからです。
結果、そこを探った結果、XXコンテンツではなく、YYコンテンツが最適解かもしれません。

CASE2:現場からのリクエスト案件

発注者が、部門トップや営業パーソンだった場合は、(私の場合は)唯々諾々と従うことが多いです。
営業パーソンが「欲しい」と言うのだから、必要なんでしょう。しかもそれが、営業活動を行っている部門トップからのオーダーであれば、疑うべくもありません。
(使用者の目的・目標と、仕上がりイメージ・納期の擦り合わせは必ず行います)

企画・制作と、浸透までの大まかな進め方です。

1.徹底的に発注者にヒアリングします。
2.営業シーンで実際に使っているものがあれば集めます。
3.並べて「共通項」を探します。現場でPRしている強みを抽出する行為です。
4.強みを鋭角化した情報を集め、肉付けを行います。これには社内・社外で、幅広く情報収集します。
5.ひとまず粗く作ったツールを、試しに使ってみます。ロープレするか、もしくは営業パーソンにテストとして活用してもらいます。
6.使用感のフィードバックを受け、完成させます。
7.トークスクリプト等、使うためのマニュアルを、営業パーソンの協力を得て作成します。
8.ツール活用の為の勉強会を行います。簡単な説明&ロープレが最強かなと思っています。


CASE3:自分が立案した企画の場合

企画そのものは、スタンダードに作ります。
ただし、
「自分が書きたい企画書」と、
「スポンサー(上申してくれる上役)が理解・納得してくれる企画書」と、さらに
「決裁者が理解・承認してくれる企画書」は違う場合があるので、注意が必要です。相手目線での妄想が必要です。

私が書きたい企画書は大体8p以内に収まる、以下のような構成です。これを基本に、プレゼン相手の目線に立ち、どんな情報が必要か、あるいは納得してもらうためにプレゼンの流れを変える必要があるか?等を考えます。
(appendixは⑧の後につけますが、相手次第では❸❹に持ってくることもあります)

1.表紙
2.背景。発注者のリクエスト内容を纏める。「あなたがオーダーした内容はこういうことですよね」と確認する
3.リクエスト内容を深掘りする。理想(リクエスト)と現実のギャップを明確に表現する
4.理想(ゴール)に到達する為に解決するべきissueは何か?を整理して示す。
ここで合意形成をしなければいけないので、1番大切なパート。必要であればエビデンス(根拠)を示す
5.解決策を明示する。目的・目標・戦略を整理して示す。4→5が飛躍していると納得してもらえないので、2番目に大切なパート
6.具体策の全体像
7・8.具体策を実行する為の施策やツールの説明

並行して、企画を通すための「プロセス」も考えます。

決裁者が、プレゼンを聞いて一発OKを出す為に、
どんな情報が必要なのか?
いつ、誰が、どのようにプレゼンをするのが最適なのか?
どんなツッコミが入りそうか?どうやってフォローするか?
までを考えて、仕掛けます。
自分でプレゼンできれば早いですが、上役にプレゼン代行をしてもらうケースも多いので、その上役がどんなプレゼンをする人なのか?という個性に応じた提案書を考え、仕上げることも必要です。

持っていき方が難しい場合は、理解がある上役に相談するのも良いと思います。
(一度企画を見てもらう、等)
決裁者が「関係者全員の意見も聞いて」的な持って行き方を示すケースもあるので、「既に意見収集済みの企画です」と言えたら結論が早いよね…的な示唆をもらえると最高です。


さいごに


ここまで書いてみて、やっぱり冒頭に書いたように「企画仕事をルーティンワークに落とし込む」ことは難しいな、と実感しました。
徹底的な「相手目線」での動きが必要になるので、自分だけでコントロールを効かせられる仕事ではないですね。
けれどこうして言語化を試みることはできるので、諦めず、粘り強くいこうと思います。

(9/24追記)
冒頭に書いた上役からの評価「短納期の案件を納品するスピードが速い」という件について。
面倒でも、時間がかかっても、施策ありきではなく「企画から考える」ことに拘ることで、結果、上層部からの指摘=手戻りが少なく、企画が進みやすいのかなと感じています。

次回は営業資料の作り方を落とし込んでみようと思います。読んでくださってありがとうございました。

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