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愛犬 ベスの巻

たぶん私が3歳の時のことだと思う。わが家に来た日のことなんて覚えてない。気がついたらウチにいたヨークシャテリアのベス。今から50年以上前なのに随分としゃれた犬を飼ったもんです。団地のようなアパート暮らし、6畳と4畳半に台所とお風呂に家族4人での暮らし、にもかかわらずヨークシャテリア。当時は犬は外で飼うものであり庭のないわが家では玄関の脇に木箱を置いて、そこがベスの居場所となった。

犬用のお菓子などなく、おせんべいが大好物。それは亡くなるまで変わらずおせんべいが入っている缶を開ける音がするとよく吠えていた。私が小さい頃は家族でベスを連れて散歩に行ったし、籠に入れて電車に乗せて栃木の父の実家まで連れて行ったこともある。玄関先にいたので近所の子どもたちが通るとお腹を見せて上機嫌。天気の良い日にシャンプーすればさっぱりして上品な顔立ちで母は「ベスという名前はエリザベス女王からとったのよ」と言っていた。

ベスは3回出産もした。だいたい4匹から5匹は産んでいた気がする。出産が近くなると新聞紙を切ってそれをベスの小屋に敷いて、夜中に物音がすると出産していた。自分でへその緒を嚙み切り、生まれた子をきれいに舐めてやっていた。上手くへその緒が切れない時は母の出番で器用にハサミで切っていた気がする。生まれた子犬は可愛くおもちゃの哺乳瓶で砂糖水を飲ませたり私も小さいながら子育ての手伝いをした。3、4ヶ月で知人のところにもらわれたりペットショップの人が来て引き取っていった。ずいぶん大人になって母から聞いたのだが「ベスはピアノが買えるくらい頑張った」らしい。だからベスの子どもは1匹もわが家には残らなかった。

そんなベスは長生きだった。今と違ってあまり動物病院へ連れて行くこともなく17、18年生きていた。最後の1年位は痩せて、撫でると背骨のゴツゴツを感じた。ほとんど1日中寝ていた気がする。

その日はいつも早く帰る父の帰りが遅かった。そして父が帰ってきて家族が揃ったところで天国へ行った。今でもヨークシャテリアを見かけるとうちのベスの方が美人だなと思っている。


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