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夢幻鉄道 君と見る景色 6

 連載小説です。
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 僕は、茶色の天井を見上げていた。布団に入ってからどれだけ時間が過ぎたのだろうか、時間を推測しようと、窓を見た。その窓から光はまだ届いている。これにより、夕方ではないのは確か。まだ夜にもなっていない。
 目はつぶるが、意識は消えてくれはしない。寝たいのに寝れない。腹痛と全身から力が抜ける苦しみが、寝る事を許してくれない。
 僕はこうやって体調が悪くなる日がある。なる頻度は減ったものの、今だにある。普段はすっかり忘れていられるのに、しんどくなると自分の病気を嫌でも思いさせられるし、向き合わせられる。本音は、思いたくないし、向き合いたくもない。けど、やっぱりしんどいとそうなるざるをえない。

 この感覚は久しぶり。
 こうなってしまうと、もう解決策は寝るしかない。この症状にピッタリな薬はまだないみたいで、こうなる度に僕は朝だろうが昼だろうが、家でひたすら寝た。そして、母さんたちが時々僕のお腹をさすってくれる。ちょっと元気が戻ると本を読む。そうなるまではじっとするしかない。さあ、今日はいつくらいに元気になれるのだろうか。

 僕はいつものように、大好きな本の物語を思い出した。意識の中にその世界を描く。色を塗り、生き物に命を宿す。自分も忘れずに入れた。僕は力いっぱいにその街中を駆け巡る。この中では僕は自由だ。誰にも止められない。お腹も痛くないし、いくら走っても疲れない。嫌な事もない。楽しい事だらけ。ここは自分が作った架空の世界だけども、僕にとってはかけがえのない場所だ。いつか目を開けた世界でも自由に遊べるはず。その日を僕は楽しみにしている。いつかは、明日でもいい。明後日でもいい。もったいぶる必要はない。その日が来たらこの世界に入れなくなっても構わない。自分が作った世界が必要じゃなくなる日を夢見る。いつか、いつか、いつか。母さんたちに心配されない日になって欲しい。注射もしたくない。もうこりごりだ。沢山寝る、食べ物に気をつける、検査を受ける、あと僕は何を頑張ればいいのだろう。元気になれるのなら、母さんたちが心配しなくてよくなるならと思ってずっと頑張ってきた。いつか、僕は元気に本当になれるのかな。いつかって、いつなのだろう。ああダメだ、ダメだ。弱気に支配されそうになる。そうはさせない。母さんたちに弱気が知れると、また心配をかけてしまう。それだけはダメだ。僕は強い、強いんだ。心配かけない事が僕にできる事。早く大人になりたい。子供の僕にはできる事が少なすぎる。大人になりたい。僕は、大人になれるのだろうか?なれるといいな。どうやったらなれるのだろう。元気がずっと続く事ってどんな感じなのかな。元気になったら行きたい所がいっぱいある。早く明日になれ。明日はきっといい日になる。

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