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夢幻鉄道 君と見る景色 7

 連載小説です。
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 家のチャイムが鳴った。
 ドアを開けると、エル君が立っていた。
「あれ?もう退院したの?」
「うん、そうだよ」
「手術はどうしたの?」
「大丈夫。それより、海に行こうよ?」
 エル君はそう言って僕の腕を掴んだ。
「え、今から?」
「そうそう!」
 そのまま僕は家から出た。
「ちょっと待って、お母さんに言わないと」
「いいから、いいから」
 エル君は僕の手を握りながら走り始めた。あまりにも楽しそうにしているから、途中で僕も「まあ言わなくてもいいか」と思った。

 しばらく走ると僕らは広い公園に入った。家の近くにこういう所ってあったかな?見覚えのない道がしばらく続いた後、突如線路が現れた。
 そして、すぐに電車が目の前まで来て停車した。僕が驚いている間に、エル君は迷わず中に入ってしまった。戸惑いつつも、どこに行くかわからないまま僕はエル君の後を追った。

 車内は外国の映画に出てきそうな雰囲気で、とても豪華。初めて乗る種類だ。僕はどこの電車なのか気になった。病院に行く時もこういう電車だったらいいのにな、なんて考えながらエル君の姿を探していると、先にエル君の大な声が耳に届いた。おかげでエル君がどこにいるかすぐにわかった。エル君は一人で、窓の外を見て「すごーい」と声をあげていた。何があるのだろう?
 僕も隣に座り、同じく窓を見て、叫んだ。
「すごーい!」

 青い海がすぐそばに広がっていた。水面はキラキラと太陽の光があたり輝いている。
 これは凄い。見ているとワクワクしてくる。彼が叫ぶのもわかる。「海が好き」がエル君よりも劣る僕でもこんなにワクワクしているのだ、きっと僕の何倍もワクワクドキドキしているに違いない。

「そろそろ降りようか」 
 エル君が急に席を離れた。
「いいけど、ここって駅じゃないと思うよ?」
 ドアに目を向けると、何故か開いていた。エル君は外に出たけど、まわりの人は誰も出ようとしていない。置いてけぼりが怖くて僕は急いだ。

 エル君はすでに膝下まで海に浸かっていた。
「こっちにおいでよ、気持ちいいよ」
 海に入ると冷たくて気持ちよかった。強い日差しによって熱くなっていた体が癒される。足のすぐ近くでは青い魚が泳いでいる。
「海、きれいだね。お魚もいるし」
「そうだねー。見たい生き物はいる?」
「えーと、僕はウミガメに会いたいな」
「ウミガメだね、すぐそこにいるよ」
 エル君が指差した先に目をやると、小さなウミガメがひょっこりと愛らしい顔を出していた。
「すごい!かわいい!」
 まさかウミガメにも会えるとは思わなかったから更に興奮した。ウミガメが優雅に泳いでいる。その姿がとにかくかわいい。
「向こうには何がいるかな」
 僕らは浅瀬を水しぶきを飛ばしながら全力で駆け抜けた。黄色い魚、赤い魚、ほかにも様々な種類の魚が見え、そのどれもがかわいかった。エル君に図鑑で教えてもらっていた魚も見つけた。
 こうやって海で僕らは今遊んでいる。エル君と約束していた事が実現して嬉しい。エル君が元気になって良かった。手術、無事に成功したんだ。ほんと、嬉しい。そういえば、こうやって一緒に力いっぱい遊ぶのって初めてかも。楽しいな。森もいいけど、海も楽しい。海が僕も大好きになった。海っていいね。写真とかで見るより、やっぱり実際に来て遊ぶ方がずっと楽しい。それに、エル君はずっと来たいと願っていたから、喜びも大きいと思う。検査を頑張ってきて良かった。こういう日をどれだけ僕らは願ってきたか。アスカも誘えば良かった。アスカは今日は何をしているのかな?エル君がいつ退院したか知らなかったけど、もうアスカもエル君みたいに退院しているのかな。そうだったらいいな。そしたら一緒に海にも森にも行ける。次来る時はアスカも誘いたいな。

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