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試験会場

昔から地図が読めない。
スマホの時代になりどこにいても自分の現在位置や向いている方向がすぐにわかり、曲がる位置などの道順もすべて案内をしてくれるため、最近は余計に顕著かもしれない。いま紙の地図を急に渡され目的地だけ伝えられても到着しない自信がある。恐らく場所を空間的に捉えることが決定的に苦手なのだろう。

いま普通にサラリーマンができているのも全てスマホのおかげと言っても過言ではない。もしスマホが道案内をしてくれければ、就活の時に面接会場にたどり着くことができず、どこにも受かっていない可能性すらある。そう考えると昔の人はすごい。
就活はさながらハンター試験のようだったに違いない。会場にたどり着くまでが一番の難関でほとんどはここで振り落とされたことだろう。
いざ面接会場に入ればたちまちピリッとした空気感が流れる。全国から集まった精鋭たちが、互いの動きを伺いながら試験の開始を待っている。初めて面接を受けに来た志望者を狙って罠を仕掛けてくるベテラン受験者もいるだろうし、他の受験者を再起不能にしようと狙ってくる奇術師のような男もいるかもしれない。突然異国の料理について尋ねられてもすぐに調べることもできないし、アラームをかけられず次の試験開始時間に寝坊してしまうかもしれない。
そんな猛者たちの中から選ばれた精鋭たちがきっと我々世代の上司なんだろう、と思えば多少の説教や理不尽にも耐えられそうだ。いまやそんなことをしてくる上司もいない時代になったけども。

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