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XやWeb広告に見られるインプレッションありきの収益モデルの限界

この度の能登半島地震により被災された皆様、ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

インターネットに関わる一人としては、今回の震災や飛行機事故などに際してのデマなどの動きが気になるところです。インターネットと情報、そしてその収益モデルについて整理していきたいと思います。

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IT革命の頃のインターネット思想

私がIT業界を志し、大学の研究室に入ったのが2000年です。当時のインターネット研究者たちは、インターネットの性質上発生する公平性から、全員が接続することによって情報が流通し、争いはなくなると信じていました。

インターネットやWeb技術そのものはツールであるために中立的なものではあります。ただし2024年にこれらの使われ方を見渡してみると、ビジネスの一角としてのインターネットは不可欠になった側面はあるものの、争いや我田引水、私腹を肥やす行為は非常に多く、端的に言うと見苦しいシチュエーションが多くあります。

能登半島地震と東日本大震災のX (Twitter) の違い

2011年3月11日に発生した東日本大震災と、2024年1月1日に発生した能登半島地震ではその使われ方に大きな差が生まれました。

東日本大震災とTwitter

東日本大震災におけるX(当時のTwitter)は、災害情報を伝搬させるツールとして日本におけるユーザーを大きく増やした結果となりました。

特に美談として語り継がれるのはホリエモンらが中心となり、救助や物資の不足をリツイートして呼びかけたというものです。Twitter社も個別にAPIの上限解放をするなどして活動を支援していました。

電話網に比べて復旧の早かったインターネット回線を利用したコミュニケーションツールとしてのLINEの登場にも繋がりました。

デマなどはあったものの、基本的には注目を集めたい愉快犯や承認欲求によるものだったので収束も早かったという特徴はあります。下記は情報通信白書で取り上げられたものですが、1日程度でデマの打消しが行われたという話もあります。

能登半島地震とX

東日本大震災から13年が経過した能登半島地震では、下記のような事象が見られました。

  • トレンドに掲載された投稿をコピペするbotの氾濫 被害状況や災害時ノウハウを含む(震災に限らず常駐している)

  • トレンドに掲載された投稿を手動でコピペ、少し改変したり画像を差し替えて投稿する手法の氾濫

  • 全く関係ない過去の災害動画や画像を現在起きているかのように投稿

  • 生成AIを用いて作成した惨状を現場で起きているかのように投稿

  • デマ

  • 被害地域以外から住所を適当に指定した上での救助要請

  • 上記に加えて個人のPayPayなどへの送金の促し詐欺

  • 実態が不明な募金

ひとえに2023年7月に始まったXの収益化プログラムが原因となっています。インプレッションを稼げば稼ぐほど収益化プログラムの権利を得ることができ、アカウント主の小遣いになります。

アラビア語や中国語のアカウントも見られるため、この問題は世界的なものと言えます。数ヶ月前は雑な定形コメントが張り付いていましたが、ネガティブなニュースに対してはネガティブな、ポジティブなものについてはポジティブなリアクションをするように進化しています。

東日本大震災では「困っている人の投稿をRTする」というのが美談だったわけですが、能登半島地震では上記のような状況だったため、同様の手法を取ると高確率でデマを拡散する方に加担してしまうようになりました。個人的にはX上の情報品質が低すぎるので、公式情報や大手メディア以外は拡散しないようにしています。

災害伝言板としてのXは終わりました。

インタースティシャル(全画面)広告も狂っている

同じくPVありきで迷走しているのが広告界隈です。以前からメディアサイトなどでは唸るほど広告が出てくることは多くありましたが、ここのところインタースティシャル(全画面)広告が目に余ります。有名な出版社が運営しているサイトも出ますし、老舗Webメディアでも出ます。

個人的に目を疑ったのは下記です。サイゾーが運営する経済ニュースメディアなのですが、インタースティシャル広告で詐欺サイトへの誘導が行われていました。広告をメディア運営者が選べることはないタイプだと思いますが、非常に治安が悪いですね。子供や判断の怪しい高齢者にWebは見せられないようになってきたのではないかと感じています。

私もガジェットブログを別途運営しているのですが、有料プランにも関わらずプラットフォーム都合でインターステーシャル広告が表示されるようになりました。しかも表示が遅いので、移行を検討しています。

XやWeb広告に見られるインプレッションありきの収益モデルの限界

2009年の中川 淳一郎氏の著書に「ウェブはバカと暇人のもの」があります。

これを受けて本文で触れられていた梅田望夫氏が「日本のWebは残念」と発言したことで「残念か否か」「日本はむしろ進んでいるのではないか」などと当時話題になりました。

今の状況を見ると、Xと広告を中心に世界的に順調に残念になっています。

広告などはコンテンツ提供の対価として広告経由でお金を得ると言う仕組みは素晴らしいものの、ここまで来ると看過できないところです。XにせよWeb広告にせよ、どちらも目に余る状態なのでそろそろ規制が入るのではないかと予想しています。特にWeb広告などはGoogleも含め、業界再編が起きる展開もあるでしょう。

かといって全てがサブスクになるような展開も、特に中小メディアや新興メディアを踏まえると考えにくいです。個人的にはP2Pを研究テーマに据えて居たこともあり、「サービスへの貢献度合いに応じてリターンを得られる」というフェアネスのディスカッションなどをしてきたことから、Coinhiveのような発想(コンテンツ閲覧の対価として仮想通貨のマイニングを実施する)は好ましく感じます。Coinhive自身は採掘していた仮想通貨の暴落とともにサービスを終了してしまいましたが、許諾や拒否の仕組みを実装した上で展開しても良いのではないかと考えています。

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