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転職市場を鑑みた「不幸にならない」採用プロセス管理とKPI設定

ATS(採用管理システム)の一般化もあり、採用KPIを設定して採用進捗をモニタリングしたり、経営層とコミュニケーションを取られている方は多いかと思います。

一般的には下記のような採用プロセスが存在し、それぞれ通過者数と、前プロセスから残った割合を算出していきます。

  • エントリ数

  • 書類通過合格者数

  • 一次面接合格者数

  • 二次面接合格者数

  • 最終面接合格者数・内定者数

  • 内定承諾者数

  • 入社者数

これにより、どこがボトルネックになるのか議論されます。このアプローチは正攻法ではあるのですが、現在の採用市場を踏まえると罠があります。ほぼ全てのお客様企業でこのお話をしているため、弊社の説明効率化も兼ねてnoteにまとめておきます。

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惜しい数値管理

一般的なATSでは、エージェント、スカウト媒体、リファラルといった大枠の採用チャンネルのカテゴリ単位で見ていきます。ドリルダウンしていくと各エージェントや各スカウト媒体の数字が出てくる形になります。

エージェントにせよスカウト媒体にせよ、契約先が多いと具体的な流入元ではなく、大枠の括りや全てのチャネルの合計数で議論することが多いです。

一般的な人事と人材紹介会社のコミュニケーション

業務効率化の観点から担当者は各人材紹介会社とコミュニケーションを取り、採用可能性のある人を紹介してもらうようにしていきます。「目線合わせ」と呼ばれる行為です。

求める人物像と言えど、スキルセットだけでなく学歴、資格、経験、視座、今後の方向性、カルチャーマッチなど多岐に渡ります。また、人事や現場も言語化できていない隠れ要件もあります。

逆に選考が進むにつれて要件が緩和されていくケースもあります。求めていた人物像がオーバースペックだった、プロジェクトの状況が変わって任せられるタスクが増えた、教育の余力ができたなど、多様な背景があります。

こうした事柄について経営層、現場、人事、人材紹介会社は随時コミュニケーションを取りながら、求める要件をすり合わせていくのが一般的な流れです。

そしてこのやり取りが成立するのが一般的な人材紹介会社です。

一部大手人材紹介会社によるモニタリング上の「ノイズ」

一部大手人材紹介会社から「求める要件と違う人物の書類が大量に送られてくる」という事態は起きていないでしょうか。他社やスカウト媒体返信率と比較すると5-10倍以上のエントリ数が発生することもあります。

この一部大手人材紹介者を他の人材紹介会社と並べると、エントリ数が大幅に膨れ上がります。多くの会社において「大手人材紹介会社なので、弊社のことを理解するのに時間がかかっているのだ」「弊社のコミュニケーションが足りない」と自責の念に駆られているケースを見かけます。

担当者と対話することによって分かりあえる。そう思っていた時期が私にもありました。先日、ある大量送信系の大手人材紹介会社の担当者と打ち合わせをし、マッチング率を高めようとコミュニケーションを試みました。彼らの言い分によると「幅広に提案する」というのが全社的な方針とのことです。その上で「社内に各社における書類選考率KPIがあり、そのKPIを上回ると「脈のある企業」として提案を継続し、そのKPIを下回ると「脈のない企業」として提案を中止するとのことでした。アプローチの仕方がマッチングを放棄しており、フィッシング詐欺のようなアプローチであると捉えています。この書類通過率のKPIはきちんとしたマインドセットがなされた人材紹介会社の1/7 - 1/10程度だったことを参考までにお伝えしておきます。

私は諦めた

当初、当該人材紹介会社からの書類通過率を上げようとトライした私ですが、「今と何も変えなくて良いです」と交渉を諦めるという選択肢を取りました。支援先企業の書類通過率が彼らのKPIを大幅に超えていたことと、変にコミュニケーションを取ることで下手に書類通過率が低下すると推薦が停止するリスクがあるためです。彼らの言う「幅広で提案」している担当者や、RPAの機嫌を損ねないように据え置きをしました。

経営層や現場に報告する際のポイント

こうした動きを取っている大手人材紹介会社は他にも何社かあります。シンプルにこうした大量に紹介してくるエージェントを、一般のエージェントと分離して報告することをおすすめします。

さもないと登録者数に対して書類選考の段階で大幅に減ってしまうため、「弊社の選考は厳しい」「もっと緩和しなければならない」、あるいは「もっとエントリ数を集めなければならない」という判断に至るケースが多くあります。しかしながら量ではなく質の問題なので、量を追う意思決定は採用に関わる全員が不幸になります。

この数字も追って欲しい

採用チームの目標としては内定承諾社数や入社者数が一般的に見られます。近年ではリファラル採用に比重が置かれるため、人事採用担当者以外でも採用活動への貢献や人数を評価指標に入れる企業も見られます。

採用に関係する人たちの当該期間の目標・評価としてはやむなしな指標ですが、ぜひ下記の指標にも興味を持っていただきたいところです。

短期離職率

採用した人材にミスマッチがなかったのか、あるいはオンボーディングは成功したのかということを確認することをお勧めします。期間は3ヶ月、6ヶ月、1年などが考えられます。この数字が大きい場合、選考プロセスやオンボーディングプロセスを振り返りましょう。

内部要因だけでなく、外部要因や環境要因、本人の自己都合もあるため減点評価は厳しいですが、加点評価はして良いポイントであると考えています。

活躍する人の割合

より長期の視点となりますが、活躍する人材をきちんと採用できたかという観点で評価することも好ましいです。1年や3年などの長期で昇格や昇級などをモニタリングしていくことも、前向きな採用活動を継続する上でお勧めしています。

認知チャンネルのアンケート回収とその分析

面接後アンケートを実施されている企業もあるかと思います。一般的には面接官に対するフィードバックにつながっていくのですが、特にカジュアル面談においてこのアンケート項目に是非「自社をどこで知ったか」という認知チャネルを入れ込んで回収することをお勧めしています。

コロナ後、DevRelなどとも言われる採用広報、技術広報の活動が顕著になりました。活況なことは結構なことですし、スカウトや人材紹介、リファラルなどで候補者に対する認知にも有効なのは確からしいところです。しかし月によっては「毎日どこかしらに出張しているのではないか?」というほど件数が多いのは横から見ていて不安になるほどです。

出張に対する金額的なコスト、人的なコスト、エンジニアがイベントに行くことによって減少する開発期間などを踏まえると、企業に余裕があるうちは許容できますが景気の状況によっては費用対効果が厳しく問われるようになります。

「DevRel活動に意味があるのか?バリューはどうなっているのか?」と問われたときに、DevRel活動からの直接の採用人数や内定承諾数ではあまり数が期待できない可能性が高いです。人材紹介やスカウト媒体、リファラルなどからの流入であっても、応募するだけの認知獲得に貢献しているという事実を可視化しておくことが備えになります。経営層や他部署にプレゼンするためにも継続的な取得をお勧めしたいアンケート項目です。

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