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エンジニア採用担当者が語る新卒・未経験エンジニアが今作るべき「自主制作物」「ポートフォリオ」

  

 前回のnoteでは主に2019年までIT業界を席巻していた若手エンジニアの売り手市場についてお話させて頂きました。今回は2018年から発生したプログラミング学校ブームから俄かに増加している未経験エンジニア層に関連し、今作るべき自主制作物についてお話させて頂きます。

 自主制作物とは何かというと各個人で自主的に行っているプログラミングであり、実際のソースコードをGitHubに載せて職務経歴書にURL記載の上で提出するものを指します。未経験エンジニアの場合は習作といったところになります。

 私は自社の採用だけでなく、リクエストベースですが人材紹介事業からの依頼で未経験者のコードレビューをすることがあります。特に自社については恐らく「未経験者の採用には企業がコストをかけたがらないので直接応募すべき」というマニュアルがプログラミング学校や情報商材で回っているようで、ご応募頂く機会は増えています。

 以前はプログラミングの習得方法と言えば、プライベート、大学・専門学校の情報系授業、入社後に研修やOJTで身につけるというのが主流でした。

 2018年、プログラミング学校のブームと共に、プログラミングは学校やオンライン教材で学ぶものという風潮が出来上がりました。それプログラミング学校が台頭しオンライン教材も増えていった結果、「エンジニアになりたいというのに何もしていないのはまやかしだよね」という風潮が人気の自社メディア採用シーンでは蔓延するに至ったのです。

採用担当も自主制作物に活路を見出したい

 エンジニア採用担当からすると未経験者採用に対して興味がないわけではありません。前回お話したように新卒採用が激しい売り手市場だったため、弊社でも「未経験者で良い人が居れば」と望みを繋ぎ採用してきました。こうした戦略を選んだ会社さんは多かったのではないでしょうか。

 しかし現実としてプログラミング学校出身者が非常に多いので「○○スクールを卒業しました」だけだとどのくらいの実力がついているのか、適性があるのかさっぱり分からないという問題があります。

 私は企業向け採用セミナーなども実施していますが、その中で出てきた忘れられない人事さんからの質問に「未経験者の応募が非常に多い。どこの学校なら選考を通過させれば良いのか?」というものがありました。考えてみればこれは学歴以上に厳しいフィルターです。学歴の場合は地頭や努力量が見えると言えなくはないですが、プログラミング学校は入試プロセスなどを踏まえると「課金しただけ」です。課金した先によってフィルタリングするのは本質ではありませんが、それを批判できないくらいには多いです。

 加えて起きている状況として、2020年3月頃に「折角目を掛けて採用し、教育してきた未経験者が一年で自社メディアに転職したり、フリーランスになった」という会社さんの声がいくつか聞こえてきました。元を辿っていくと一部プログラミング学校のLPや、エンジニアになるための情報商材が「1年でフリーランスになれる」と謳っていたことに行き着きます。それを忠実に実行して転職・退職していった(未経験の皆さんから見て)諸先輩が居られるという話です。非常に残念な話ではありますが、市場はウイルス以外の要因でも荒れていると言わざるを得ません。

 不景気と荒れた市場が現実として立ちはだかる今、より実力とポテンシャルを示すための自主制作物が重要視されているのです。

現実:エンジニア採用担当はレビューに飽きている

 プログラミング学校の教材のパターンとして基礎的な項目を実施した後に最終課題が出されます。その最終課題がそのまま自主制作物として企業に提出されるという流れがあります。これは2013年頃にブームがあったAndroid職業訓練校から見られる手法です。

 前述したようにプログラミング学校卒業者の方は非常に多いので、結果として最終課題で溢れることになります。端的に言うと飽きています。

・Twitterクローン
・Instagramクローン
・某フリマアプリクローン
・架空の会社のコーポレートページ
・ポートフォリオサイトという名のLP
・顔写真画像をアップロードをすると「(AKBなど特定の)アイドルの○○に似ています」という診断アプリ(OpenCVのサンプル)

採用担当者の願望:自主制作物でここを見たい

 採用担当が見たいものは何かをざっくりとまとめると下記のようになります。

・プログラマとしての適性/素養
 −丁寧さ
 −きちんと入れられたコメント
・論理的思考力
 −条件分岐
 −ロジック
・自走できるか
 −教材にはない要素を自分で探して組み込めているか
・継続
 −GitHubの草の生え具合
 −プログラミング卒業後も継続してプログラミングをしているか(好きで実装をしているか)

採用担当者が見たくないもの

 一方で別に見たくないものもあります。

・教材のコピペ
 −通称、写経
・著作権違反
・フロントエンジニア志望とある方のHTML/CSSしかないサイト
・見せることを意識していないサンプル実装

 著作権違反というのは、例えば某有名フリマアプリを再現した自主制作物というのを複数見たことがありますが、バナーから商品画像まで丸パクリでした。中の人に連携しましたが、社会人としてどうなの?という話なので表に出すのは辞めましょう。公序良俗に反するものも同様です。

 フロントエンジニア志望の場合、動的なサイトを作る必要がありますが、「なんだか小奇麗なサイト、コダワリはCSS」という方が非常に多いです。それはコーディングであってプログラミングとは言い難いです。デザイナー職に応募してみてはどうでしょうか。

 下記のようなものが割と見るパターンですが、提出物なので見せることを意識したものをお願いしたいです。ソースコードもそうですが、サンプルで入力したデータにも配慮が必要でしょう。

採用担当者は別に重要視していないもの

 教材から逸脱、というと肩肘張って考える方が居られます。「独自性のあるサービスを作らないと!」と意気込まれる方にたまにお会いするのですが、そんなことはありません。そうそう意義のある独自性のあるサービスを見つけるのも困難です。

 企画職に進むとか、どうしてもやりたい新規事業があって実装したので見てほしいとかでない限りは習作と割り切って問題ありません。

自主制作物に含まれていてほしいこと

 主にWEB系企業に応募するにあたり、自主制作物に含まれていることが望ましい項目についてピックアップします。

・フレームワークの利用
・条件分岐
・基本的なDBの操作
・継続したGitHubへのcommit

 個人的にはC言語から入った旧世代なので、手続き型言語で理解度を見たいところですが、ハードルが高いのでより即戦力に近いフレームワークへの理解と書きました。

 とは言え、現代のフレームワークにおんぶに抱っこだとDBへのインプットと結果の表示くらいはすぐにできてしまうので論理的思考力をうかがい知ることはできません。やや凝った条件分岐などを混ぜるべきでしょう。

 ソースコードとあわせて提出していただきたいのは下記です。

・特に頑張ったソースコードへのリンク
・Herokuなどで良いので動作確認ができるURL

 GitHubのURLを頂くことは先に話したように一般化していますが、殆どの方がオープンライブラリとセットでアップロードされているので「どのファイルを頑張ったのか」が分かりにくいということがあります。「このファイルを見てくれ」というのを注力したポイントとセットで書類に記載するべきでしょう。

 実際に動作するURLをHerokuなどにアップロードしておくのも重要です。動くのかどうか分からないソースコードのレビューもコストがかかるのでセットで提出していただきたいところです。ただ結構な割合で500とか404が返ってくるケースが多く、心象がよくありません。提出後は緊張感を持って運用しておきましょう。

こんな自主制作物がお勧め2020

 特定の分野への就職に拘りがある場合は、その分野のサービスを実装するのが良いでしょう。そうでない場合は、汎用性の高い自主制作物を作っておく必要があります。私がオススメしたいのはアルバイトシフト管理システムです。

 何故このシステムをオススメするかというとTwitterやInstagramクローンで作る業務は普通ありませんが、業務系とも言われるシステムであれば自社メディア、SIer、SESのいずれであっても存在する業務なので、より実務に近いアウトプットであると言えます。何より要素が複雑に絡み合うことで上記にある条件分岐も自然と満たされていくことになります。

 アルバイト側と店長側でセットで実装しましょう。機能のイメージとしては下記のようになります。

アルバイト側のイメージ

・ログイン
・スマホ対応
・スケジュール画面
・シフト申請画面
・就業履歴確認
・欠勤申請

店長側のイメージ

・管理者ログイン
・従業員管理画面
 新規従業員追加、削除
・承認画面
・従業員スケジュール画面
・ある期間からの昇給/減給
・早朝手当、深夜手当
・欠勤処理
・各種設定画面
・月末締め処理
・給与明細の発行

 サンプルで入力したデータが一桁という人は多いですが、具体的にどういうふるまいをするのか分かりかねるため、サイトの内容にもよりますが100件程度のデータ入力は実施しておくと更に良いでしょう。

 ざっと起こしたので他にも要素はあるでしょうが、参考までにどうぞ。自身で経験してきた業態に特化するのもエピソード込で面白いと思います。

まとめ

 今回紹介したものはあくまで一例であり合格を保証するものではありませんが、従来の制作物よりはぐっと近づけるものと考えていますので、是非レジュメの一角に添えてもらえればと思います。

 レジュメの書き方についても先立ってお話させて頂きました。こちらも中途だけでなく新卒・未経験者層についても言及させて頂いています。合わせてポッドキャストの聴取をしていただき、何かしら参考になるところがあれば幸いです。

2021/3/16追記

 ITエンジニア適性についてのコンテンツも執筆しました。ご一読頂ければと思います。

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ウィッシュリストを貼るようになった経緯はこちら。


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IT百物語を蒐集分析したnoteを書くLIGのくま/ 博士(慶應SFC、IT)/採用・組織改善・ITコンサルもするPO・EM・PjM←レバレジーズほぼVPoE開発部長・レバテック技術顧問←Omiai SRE・情シス部長←高学歴ワーキングプア研究職