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フリーランスが増加する中、「良いフリーランス」に巡り会えない件について

常々フリーランスの増加とそれに対しての正社員の不足を訴えているのですが、「ではフリーランスを受け入れると万事解決か」というとそうではないのが難しいところです。

フリーランスを集めようと思うと媒体を使ったり、エージェントに頼るところから始まります。しかし他社も含めて話を聞くと「良いフリーランスと出会えない」という嘆きが聞こえてきます。

世間的にフリーランスは増えているのですが、良いフリーランスは居ない。どういうことなのかを整理していきます。

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【背景】良いフリーランスは企業が離さない

この要素は非常に大きいです。たまたまプロジェクトが縮小したり、たまたまリリースフェーズまでの担当だったりしない限りは出て来ないです。エージェントからしても重宝する人材なので途切れそうな案件が出てくればすぐに次を探します。

フリーランスでありながらも良いフリーランスの方は太い顧客を掴むことができるため、案件を都内で獲得して長期に及ぶことを確証してから地方移住や実家へのUターンに踏み切るケースも多く見かけます。

【背景】未経験・微経験フリーランスの紹介が多い

まずは未経験、微経験の登録者が増えていることもあり、「今すぐ来て欲しい」「来月から来て欲しい」となるとフリーランス歴やエンジニア歴の浅い方々が紹介されます。

長期的視野で期の切れ目などに向けての募集であればいくらか状況は改善されます。

【背景】週2-3日稼働フリーランスの紹介

次に週2-3日稼働人材。こちらも普通の企業であれば敬遠されるのでスキルやコミュニケーション力が高い人材であっても巡り会える可能性があります。業務が折り合いがつけれられるようであればオススメです。

週2-3日稼働人材の場合、どう2-3日働くつもりなのかを確認しておくと良いです。半日稼働で0.5人月稼働であれば意外と幅広く業務をお願いできます。不定は困ります。稀に週2稼働が「土日」を指している方が居ますが、指示とか困りますね。下記の副業人材のコンテンツでお話したような課題が立ちはだかります。

【背景】増えるトラブル・音信不通リスク

フリーランスの数が絶対的に増えているからというのはあると思いますが、フリーランスと契約した際に起きるトラブルの話も増えているようです。

最近では副業が一般的になったことから、フリーランスの方であっても月商を優先するがあまりに大小複数案件を抱えて予定をパンパンにしている方が居ます。平常時には週7稼働で回せたとしても、1-2件軽く炎上すれば立ち行かなくなります。こうしたことからある程度の経歴があってもメンタルに不調を来たし、ある日突然稼働できなくなったり、連絡が取れなくなるトラブルがあります。

利用率の問題から直接契約を良しとする企業やフリーランス本人をよく見かけますが、トラブル時にお互いに頼るところがないのでオススメしかねます。企業側からするとトラブル発生時に一個人に過ぎないフリーランス本人が雲隠れすると追いにくいですし、文句を言うしっかりとした法人が無いのは辛いところです。

請負契約だったのかなと思いますが、企業からフリーランスが訴えられたケースも耳にしましたし、まことしやかに「賠償金がきっかけで一家離散した」という話も聞こえてきました。私はその昔、無事に生還できましたが個人受託開発で危うかったことがあります。

過去の「業務委託」と現在の「フリーランス」の違い

本コンテンツでもよく話題にしていますが、元来業務委託は自社の給与形態に見合わない高度人材と契約する手段でした。

例えるなら昔の業務委託は社員では立ち行かない業務をお願いできる、時代劇で言うところの用心棒的な立ち位置でした。「先生!高い金払ってるんだ!おねげぇします!」というアレですね。(用心棒ということで最近気に入っている漫画を貼っておきます。)

一方、近年激増しているフリーランスは高度人材よりも「自由人」の意味合いが強く、人によっては業務委託契約書を巻いたフリーターに近い側面があり、ともすればモブキャラがやってきます。

2015年くらいまでのフリーランスという「用心棒」の力を借りるのが業務委託契約でしたが、今は「自由人」としてのフリーランスが増えてきたためスキルではなくその人の時間を買っているケースが多く見られるようになりました。この点の認識を改めないとギャップが多く生まれます。

過去に入場した方の中では、本人から一ヶ月で退場を申し出るケースもありました。何も現場に不満があったというわけではなく、エージェントも把握していなかったのですが元々前職を退職後の就職活動中の繋ぎとして一ヶ月だけフリーランスをするつもりだったということでした。システム理解で0.5人月、簡易な実装で0.5人月の人材でした。高額なアルバイトですね。多くはないですが他社でも聞くお話です。

【問題】未経験・微経験フリーランスの増加によるエージェント新規登録者のビギナー化

これが初めての現場です、という方が本当に増えました。紹介会社に質問しても未稼働なことが多いですし、歯切れが悪いときは大体初めての現場です。

それなりにフリーランスっぽい稼働があっても、前職のSES企業での実績だったりするケースも多々あります。稼働や勤怠の安定性、書類には出てきていない真実などは誰も分からない状態です。

未経験フリーランスに代表されるように基礎教育が必要なケースも少なくなく、金額は安くないので企業側としては慎重になりたいところです。

【問題】エージェントの企業担当者もビギナーが増加

エンジニア採用が難航する一方でフリーランスは増えていることから、それを仲介するエージェントも新規参入が増えています。そのため、知識が少ない状態で企業担当されている方が多数居られます。

また、類似の問題としては老舗のエージェントであっても担当者の定着率が低く、新人企業担当者が来ることが多くあります。コミュニケーションが成立すれば良いのですが技術的な理解が間違っていたり、勘所が悪かったりすると辛いものがあります。

先日もTwitterで「MySQLとRDBMSとSQLができる人が見つからない」という話が回っていましたが、そういうことは多々あります。

実際に妙な紹介をされることも増えました。例えばブリッジディレクターを募集した際、英語での業務経験を必須にしたところ、中国によるブリッジディレクター経験はあるものの英語は使えないというものがありました。

各担当の方々には精進頂きたいところです。

【問題】スキルアセスメントを求めたいことだが、登録者数を増やす上では無理難題

正社員採用であれば技術試験をするところですが、フリーランスだとインタビューが精々です。

辞めさせることが原則できない正社員とは違い、スキルレベルが期待に達しなければ延長しなければ良いだけのフリーランスではよほどのことがない限りは変な人でない限りは入れてから考える企業が多いため、スキルテストを求めたりした際には他社決定します。

本来であれば所属企業に技術試験をして絶対的なスキルレベルを示していただけると助かるのですが、そんなことをしたら所属に登録が減りかねませんから見たことがありません。

どの会社も欲しいのは用心棒であり、モブキャラではないのです。

フリーランスも中途人材に近付いている

良いフリーランスを見つけるのが困難になったため、待遇や環境面で推さざるを得なくなっています。

フリーランスであっても正社員採用と同じくリモートワーク、残業無し、案件で用いている技術、業務を通して何が得られるか、サービスの社会的意義のような魅力を語らなければなりません。もちろん単金も言うまでもありません。

次に良いフリーランスと巡り合うための対策について挙げていきます。

【対策】スキル要件は刻んで分解する

全体的にマッチングが難しいので、スキル要件のレベルを下げるか、スキル要件の数を減らすかが求められます。

経験的にはレベルを下げるとプロジェクトが事故に遭うので、数を減らして複数名入れたほうが良いです。スキル要件はがABCDとあったときに、ABとCDで別の人を入れます。コストは嵩むのですが、見つけやすさ、問題解決、同時に退場するリスクの減少の観点から妥当だと考えています。

【対策】自社でフリーランス版タレントデータベースの作成と、再指名の仕組みづくりと関係性づくり

本来であれば所属に把握しておいて欲しい実績ですが、これまでお話したように必ずしも実績がある方をご紹介されるわけではありません。

自社で管理をしておき、その所属に再指名をするというのは手段として有効ですし、何度かやっています。

・対象者が関わったプロジェクトの概要
・勤怠
・スキルセット
・アウトプットの品質
・コミュニケーション

このあたりを社内で蓄積することをオススメしています。Aの案件ではそこまでだったけども、経歴を踏まえるとBの案件では活躍が期待できるというようなことはよくあることなので、関わった案件の概要を残すことは必要です。

エージェント利用の場合で、エージェントとの関係値が良好であれば再指名は有効な方法ですが、当人がエージェントから見て顧客開拓要員であった場合は何も起きない可能性があるので注意が必要です。

【対策】フリーランスにも1on1

指揮命令系統とかを考えると目標設定とかしてはいけませんが、所属に断った上で傾聴ベースの1on1は必要です。

「困っていることはありませんか?」「気になることはありませんか?」「やりにくいことはありませんか?」と言った問いかけから始まる1on1を正社員と同じかそれ以上の頻度で実施しなければならなくなったと考えています。特にフリーランスの歴が浅く用心棒としての業務委託意識が低い若手については、スキルの上下に関わらず実施が必要です。

また、WCM(Will Can Must)で言うところのWill(やりたいこと)のヒアリングも必要です。従来の業務委託であればCan(できること)を確認した上でMust(契約)を握れば良かったのですが、現在の若手フリーランスはWillを重視した結果として自由人たるフリーランスを選んでいるため、本当にやりたいことを把握しないと契約の節目で居なくなります。

契約上は全く問題ないものの、フリーランスを戦力として数えたときに「カジュアルに退職された」ような状態になり現場に大きな影響を与えてしまいます。今の現場をどう感じ、いつ頃何をしたいのかは正社員と同じかそれ以上に気を遣う必要があります。

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ウェビナーのご案内

9/17にこうした内容についてお話します。フリーランス面談で投げかける質問などについてもご紹介できればと思います。私のウェビナーはQ&Aが特にウリとなっていますので、何か投げて頂けると嬉しいです。


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