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「組織崩壊」とはなにか?美談として語られることについての是非

先だって組織崩壊を美談にしている記事が話題でした。時折このようなネタが湧き上がります。広報だったり、HRTechの導入事例だったりします。そもそも組織崩壊とはどういう状態なのか、その原因はどういうものが多いのか、そして美談として語られることの是非についてお話をしていきます。

組織崩壊とはどの程度のことを指すのか

過去に上場申請を取り消した際、リーダー・マネージャークラスがまとまって辞めたことがあります。当時は「この人達が辞めたらいよいよマズいかも知れない」と感じたものですが、社員数的には数%にしか該当しなかったこともあり、その後は回復して上場もしました。一時的に数%がまとまって辞めたくらいでは問題にはなりにくいです。

ここは年間離職率で考えるのが良いでしょう。世間的な平均年間離職率は下記コンテンツでまとめました。過去の組織規模別離職率を鑑みると最大でも17.3%なので、年間離職率20%あたりから危機感を感じる必要があるでしょう。自身の経験を踏まえてもいよいよマズいのは年間離職率30%以上ですね。これは私は未経験ゾーンですが稀に耳にするものとして、「ある部署が一月で半分辞めた」という月間離職率50%の世界もあります。

年間離職率が高くても自社サービスを持っていてプロジェクトが運用フェーズにあれば売り上げ上は問題ありません。ただしSIerやSESなどの人月商売で年間離職率30%を越えると売り上げに影響します。当座はBP(他社SES)やフリーランスへの再委託で食いつなげますが、粗利を圧迫するため中長期での問題解決にはなりません。

高い年間離職率が見られる組織にありがちな原因

年間離職率30%以上の状態で共通することとして、トップダウンでの強めの意思決定が起き、ハレーションに繋がっているというケースが多々あります。売り上げ向上に対して性急な成果を求め高い圧力が掛かっている、あるいは組織を立て直す名目でトップダウン型のアウトプット志向に偏重した経営フレームワークが入るなどが確認されています。

激し目の意思決定であっても、丁寧に腹落ちさせて行けばそこまでは辞めないです。あるアウトプット志向偏重型のマネージメントフレームワークにもあるのですが「白いモノをトップが指さして『今日からこれは黒です!』と言った際に「はい、黒です!」と従業員が唱和するのが良い組織です」というものがあります。ダイバーシティの流れに反していて大量離職に繋がります。

高い年間離職率を経ても尚、残る人たち

非常に興味深いことですが、こうした高い離職率を誇った後に残る人には共通点があります。

  • 就職氷河期時代に社長が採用した人材

  • 経営層が辞めて欲しいと思っている人材

特に前者は第二新卒で採用され、「社長に拾って貰った恩がある」と思い込んでいる場合が多く、低い待遇や酷い業務内容でも残りやすい傾向にあります。しかし同じようなシチュエーションで採用したZ世代はドライに辞める傾向にあります。

大企業でも組織は崩壊する

こうした組織崩壊は何も中小企業に限った話ではありません。中小企業の方が経営にクリティカルな結果となりやすいので目立つものの、大企業やその子会社などでも耳にすることがあります。開発マネージャーが半数になったケースも耳にして居ますが、無理なリリーススケジュール要請や予算達成などがトリガになりやすく、この点については企業の大小は変わらないようです。

雑に扱って良いほど人は採用市場に居ません

年間離職率20%、30%台が数年続くと、3年もすれば殆どの社員が入れ替わる計算になります。産休育休から戻ってきた社員がギョッとするのがお約束です。人が増えていって新しい顔が増えているのであれば好ましいですが、前から居た人が居なくなって新しい顔になっているのであれば危ういです。

これを「新陳代謝」「第二創業期」と呼ぶ経営者も居るのですが、従業員からするとたまったものではないです。正社員だと厳しいので、大多数を業務委託で構成した方が社会のためになるんじゃないかとすら考えています。

もちろん売り上げが厳しく大きな展開を強いられたりすることで組織にハレーションが起きることはあるでしょう。大量離職を伴う改革が必要なこともあるでしょう。しかしこうした離職者の中にはメンタルを病む人が一定数現れます。会社の枠が苦境を乗り越えたという意味では美談ではあるものの、それなりの屍があっての上なので美談にしては行けないと考えています。広報としてもドン引きされるだけです。「当時の社員には申し訳ないことをした」くらいはあって良いと個人的には考えています。

もう一つの観点として、雑に扱って良いほど採用市場に人が居ないという少子高齢化日本の現実があります。高負荷低待遇にならざるを得ないある業種の社長さんは、その採用基準は「人語が喋れれば一旦OKというほど人が居ない」と話されていました。採用力の高い一部の企業を除いて一般社員に対し「(なんでこの待遇や業務内容でここに居てくれるのかよく分からないけど)弊社で働いてくれてありがとう。」と思える程度には人集めが難しくなっています。人が居なさすぎるが故に解雇前に今一度、人材の活かし方やプールの仕方に悩まなければならない状態になりつつあるのが日本の状態です。

そんな中、興味深いドラマが始まりました。人間投資家を名乗る主人公が、訳あり人材を探して活かし方を考えながらプロデュース込みで投資をしていくというお話です。キャリアチェンジ支援を担当することもある私からしても共感の多い内容でした。兄弟の勤めるリストラを推進する大企業と、リストラされた人のプロデュース業というその対比も非常に興味深いです。

身元を洗ってくれるAI?HRTechが出てくるのですが、投資を力強くできるコアコンピタンスなのかなと思わなくはないです。


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