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40歳になりました/IT業界における年齢と持続可能な成長

3月12日に40歳になりました。遂に汎ゆるアンケートの年代選択が一つ上の枠になってしまいました。ITエンジニアで40代というと諸先輩はインフラや大手SIer界隈には多いのですが、ことWeb系企業になると少ないです。

汎ゆる未来予測の中で、一番身近で且つ見えていないのは自身の加齢による変化ではないだろうかと考えています。「概念としては理解していた各ライフイベント」が眼前に迫ることで解像度が上がり、具体的な懸念事項と向き合うといった趣でしょうか。今回はそんなよしなしごとについて触れていきます。

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40歳が不惑なのか?

論語では「不惑の歳」と言われますが、果たして現在のIT業界でもそうなのかというのは疑問です。

終身雇用型を力強く約束できる組織であれば不惑も叶うのかも知れませんが、そんな企業は年々減っています。中小企業の場合は身元の保証も無いわけで、キャリアチェンジも含めたスキル更新が必要です。「生涯このスキルだけで生きていく」というには専門職として想定される労働期間が長過ぎますし、各スキルの寿命のほうが先に来るのがIT界隈では厄介です。惑いながらキャリア成長させないと厳しいと捉えています。

ミドル・シニアの生存戦略のヒント

時折聞くスカウトのポイントというので下記のようなものがあります。

  • 20代はポテンシャルを褒める

  • 30代はスキルを褒める

  • 40代は経験を褒める

色々なお仕事に関わる中で、年輪(経験)で食っているような節は年々感じるようになる一方で、スキルは継続して伸ばしていかないと需要が続かない感触もまたはっきりと感じています。更に経験の経験の次に求められてくるものは何かと考えていくと「人脈」なのではないかと過ぎったりもします。基礎となるスキル、重ねていく経験、そして人脈。このあたりが三位一体となってミドル・シニアのキャリアになるのだろうなと感じます。

気になる業界内のメンバー層年齢バランス

漫才師・落語家界隈だと40代でも若手と言われ、60歳くらいでようやく認知される世界があります。最近耳にしたところですと宝石鑑定もこうした風潮があるらしく、60歳くらいまでは「ぺーぺー」扱いとのことです。後進育成の観点からなかなかの歪を感じます。これらに共通するポイントとしては、下記の点があるのではないかと考えます。

  • (今現在はともかく)放っておいても志望者が来る状態

  • 業界内において経験年数という軸が強い存在感を放っている状態

  • 年長者の現役期間が長い

技術革新の早いIT業界ではこういうヒエラルキーは無縁かというとそうでもありません。IT革命の影響が残る2000年代初頭のインフラ研究職界隈では年長者集団であっても40代だったのですが、30歳を越えるかどうかでワカモノ・オトナの線引があり「ワカモノは○○をしろ」という論調が横行していました。徒弟制度感が強く、「ワカモノはWindows禁止」と言われてLinuxやBSDをクリーンインストールさせられる一方で、PowerPointを作成しないと行けないという変な風潮でした。条件が揃うと局所的にではあれ、経験年数を縦軸にとったヒエラルキーの構築は可能です。

ここに来て日本では労働人口の少子高齢化が発生しています。下記の記事でも触れましたが、既に情報通信業の従事者というカテゴリで見ると半分以上が40歳以上です。40代の転職に特に苦労しなくなってきた今、数年後には50代でも現役感と柔軟性があれば転職できるようになるでしょう。その次は60代に拡大されるでしょう。言い換えるとメンバー層のまま60代まで活きていける状態はできるでしょう。

フリーランスプログラマも一般的になっているので、進んでメンバー層のまま70歳くらいまで活きていくというキャリアパスもまたマジョリティになるでしょう。

10年・20年後の日本のITエンジニアの年齢分布を考えると40代以上の比率はより高まっているでしょう。そのときに雇用者側・発注者側がどういう意識に着地しているかは非常に興味があるところです。IT業界では今現在は技術の現役感が尊ばれる世界ではありますが、局所的に利用される技術がテンプレート化されないとは限りません。経験年数を縦軸にとったヒエラルキーが成立する領域では、50-60歳くらいまでは若手と認識される風潮が出てくる領域が出てくるかも知れません。

疑わしいハードワーカーの「人生100年時代」

人生100年時代と言われていますが、万人が等しく寿命がストレッチされていくのかと言うとそうでもないように思えます。同級生と再会しても、訃報の話を聞くようになってきました。20代のときは交通事故や自死などだったのが、30代後半に差し掛かると病死の話が出てくるようになりました。どこか遠い話だったように思えた健康の話が日に日にリアルに響きます。

こちらの「社員が病む職場、幸せになる職場」にはアメリカを中心にIT企業の不健康列伝が並んでいます。日本のIT界隈も例外ではなく、メンタルもフィジカルも一定の病む人が居られます。私がビジネスに転籍してきた10年前、取引先の方が過労で亡くなり、上場準備を取止めた企業というのがありました。そこからハードワーカーだった20-40代の人の突然死についての話をチラホラと耳にします。最近も「脳卒中を患いながら残業するスタートアップ」の話を耳にしました。

ILOとWHOの研究論文では下記のような労働時間と死亡の関係について書かれています。

ILOと世界保健機関(WHO)がこの度まとめた研究論文 によれば、長時間労働によって虚血性心疾患及び脳卒中で亡くなった人の数が2016年に74万5,000人(2000年比29%増)に達したことが判明しました。2000~16年の期間に長時間労働によって心臓病で死亡した人の数は42%、脳卒中によって死亡した人の数は19%増加したとみられます。
 この二つの疾患による人命と健康の喪失を長時間労働と関連させて行った初の世界規模の分析からは、2016年の脳卒中を原因とする死亡者39万8,000人と心疾患を原因とする死亡者34万7,000人が週労働時間が55時間を上回っていたとみられます。週労働時間が55時間を超えると、35~40時間の場合と比べて、虚血性心疾患と脳卒中のリスクがどちらも高まることを示す十分な証拠が得られました。
 死亡者の72%が男性であり、45~74歳の年齢時に労働時間が週55時間を上回っていた60~79歳の年齢層が特に影響を受けているとみられます。長時間労働に従事する人の数は次第に増えてきており、得られる最新の統計では、世界人口の9%に当たる4億7,900万人に達していると推定されるため、これは特に懸念される事態であり、労働に関連した障害や早すぎる死亡のリスクを抱える人々が増えていることを意味します。

国際労働機関
長時間労働が心臓病と脳卒中による死亡者を増加させる可能性をILOとWHOが指摘

https://www.ilo.org/tokyo/information/pr/WCMS_792277/lang--ja/index.htm

人生100年時代という言葉が先行する昨今ですが、果たして現在の自身の働き方を踏まえた際に100年あると思って良いのかということは勘案するべきなのではないかと感じます。車でも高回転で長時間回り続けられるエンジンなどありませんからね。

持続可能な成長と、機嫌良く働ける組織づくりの探求

自身の将来需要を考えるとやや踏ん張ってのキャリアアップが必要です。また企業の成長と生き残りを考えても、従業員に成長してもらうというのは前提のようなところがあります。暗に青天井に働くことを奨励している企業もあります。しかし、度を越えると「実は100年もない人生」というのが明らかになりつつあります。

ファッションのような扱いが感じられるSDGsですが、労働と、個の成長こそ「持続可能な成長」を意識するべきではないかと考える今日このごろです。

私もハードワーカーではあるので注意したいところですが、少なくともショートスリーパー自慢をしている諸氏についてはご自愛されることをおすすめしたいところです。

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