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DXが叫ばれる中、情シスをどこに置くか?

DXの話題が深まり、情シス(社内SE、コーポレートエンジニア)に対する期待値が業種を問わず高まっています。

下記のコンテンツでは複雑化する情シス業務を整理し、企業側のニーズ整理と候補者のスキルセットを整理した上でマッチングしないとミスマッチばかり起きてしまうことをお話しました。

今回は情シス部門を企業のどこに置くのが良いのかということについてです。他社の情シスの方々や、面接などを経て見えてきた各メリット・デメリットを合わせてお話します。

パターンA)管理本部情報システム部

王道の選択です。管理本部の中にあるため、バックオフィスの一つに数えられます。

管理本部配下全般に言えることですが、全社的に見て明確にコストセンターになってしまうことがデメリットとして挙げられます。DXを推進することで事業の効率化をするわけですが、それにはSaaS導入を始めとする何かしらのコストが発生します。これに対して投資をしなければならない一方で支出も気になるため、他部署の顔色が気になるところです。

ポイントは管理本部長はどこの畑から来た人なのかに寄って明暗が別れます。そのことも視野に入れながら管理本部内の他部署に置いたケースを見てみましょう。

パターンB)管理本部総務部

こちらもよく見るパターンです。多くの場合において総務業務を兼務しており、何屋さんかよく分からなくなる傾向があります。PCの設定をする一方で購買や物品補充をしていたりしがちです。総務業務に時間を取られることが多く、専門性が危うくなるケースを多々目にします。勢い、待遇が伸び悩むのがこの座組です。

パターンC)管理本部財務経理部

最もコストセンター扱いされやすいのが財務経理部付です。

情シスを評価しようとすると下記の2点に基づいたものが王道となります。

・業務効率化による当該業務に必要な時間、及び人員の削減
・コストカット

後者が特に厄介でして、コストカットを続けていくと最後は自身がコストになるという壮大なジレンマを抱えます。情シスの退職理由を集めていく中でも

「コストカットを進め、これ以上は削れないと上長に報告したところ、『最後は君だね。ハハハ。』と言われたので辞めることにしました」

というケースがチラホラあります。最後はペンペン草も生えなくなるという点で、やり過ぎてはならないのがコストカット施策です。

パターンD)開発本部

社内インフラの延長でサービスインフラも面倒を看るケースや、エンジニア評価の一環でプログラマと並べて扱うという文脈で開発本部付になるケースです。

開発部隊が他組織と独立している場合、組織内におけるエンジニア全体の社内政治における地位が問題になります。開発本部そのものが事業と離れていることで本来は売り物をエンジニア全体がコストセンターだと数えられることもあります。

逆にエンジニアが力を持ちすぎている一方でセールス部門が弱すぎて儲かってないケースもあり、営業・マーケティング・エンジニア/デザイナー・バックオフィスのバランスが重要であることを感じます。

これらを差し引いて尚、問題になるのはプログラマと情シスの評価差です。他職種から感謝されやすいのが情シスな一方で、外貨を稼いでくるという観点ではプログラマの方が優位だったりします。フラットな評価は難しく、市場感を鑑みながらプログラマの評価を高めにしていたらDXの波が来てできる情シスの採用と定着が難しくなってしまったというのが、現在よく聞こえてくる嘆きの声です。

パターンE)事業部付

事業部が大きくなることで事業部内にバックオフィス業務に類するものがあると、その中に情シスがつくことがあります。

事業部に入ってしまうことでコストセンター扱いされにくくなるというメリットがあります。その一方で全社的な動きはしにくいです。事業部で利用するCRMなどは面倒を看るものの、勤怠管理システムなどは管轄外になるなど、企業全体のラストワンマイルのピースが埋まりにくいのがこの座組です。社内売買や工数管理が重要になっていきます。

パターンF)社長直下

DXの本懐を紐解いていくと「デジタル化を経てのビジネスのアップデート」が主目的であり、つまるところ経営層の意識のアップデートに行き着きます。それ故に雰囲気だけでSaaSを導入してみるなどのDXはスタート地点から誤っています。

その観点から、ビジョンがある社長の手元にDXの要となる人材を置いておくのは理にかなっています。ただ使いこなせるかどうか、ビジョンが妥当かどうかは別問題です。

しかし「社長の下で自由にやってるけど何をしているか分からない単価の高めの人達」という社内評価は生まれがちなためどうしても避けねばなりません。他部署への説明を入念に実施する必要があります。

配置するタレント、リーダーシップ、経営層の移行によって変わる適切な解法

経済産業省が発表した2021年8月6日DX認定制度の概要及び申請のポイントについてでは、下記のようにデジタルトランスフォーメーションを定義しています。

デジタル技術をつかって繋がり方を変えて本当にやりたかったことをやる
経営戦略とデジタル戦略は一体

「経営戦略とデジタル戦略は一体」とあるように、DX「デジタル」が含まれている言葉ではありますが、必ずしもDX人材だけが頑張れば良いというものではなく、経営戦略と紐付いたアウトプットが求められています。

デジタル時代の人材政策に関する検討会では、「何のためにDXに取り組むのか」という戦略を示すことが第一だと明言されています。DXの登場人物は数あれど、どこに向かうのかという目標を掲げるべきは経営層であり、諸々のシステム導入や事業改革、業務改革の結果は経営に反映される必要があるのがDXとなります。DXにはDX人材によってもたらされたシステムや業務フローを利用することができる社員・作業者という働く人そのものをアップデートするという概念も含まれます。

DX人材の定義を見ていくと、単に情報技術に明るいだけではなく、リーダーシップを持って改革できる人材を指していることが分かります。これまでお話をしてきたように、明らかに不利な配置はあるものの、正解はありません。経営層のビジョンと、実際に入社し情シスに配属された人のスキルセットとリーダーシップ次第というところでしょう。

組織にも依りますが、式年遷宮のように新陳代謝も視野に入れた定期的に転換するのもありかも知れません。

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