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【図解】ITエンジニアの就活事情:文系/非情報系就活生・就職課向け傾向と対策

 先のエンジニアキャリアについてのトークイベントでは、就活生の方にもご参加頂いていました。そう言えば文系.非情報系の方々に向けたコンテンツがなかったなと思い、取り上げることにします。

 私自身は新卒としての扱いを受けたことがないのですが、転職市場、特に未経験エンジニアの処遇を見ると新卒というカードの圧倒的なレアリティには眼を見張るものがあります。新卒カードを有効に使うためにも何かヒントになれば幸いです。

複数の大学の就職課の皆様からの依頼事項

 前職の人材紹介会社時代、大学時代の繫がりで教員になった周囲の人達を伝って複数の大学就職課にご挨拶に行きました。

 中でも印象的だったのは文系大学の就職課の皆様からの「学生がエンジニアになりたいというのだけども、就職課としては業界理解が乏しくアドバイスが難しい。頑張ってねと送り出すのだけど、後から進路届にある企業名を検索したら『ブラック企業』と出てくる。この状況は看過できないが放置もできず、困っている。」というものでした。

 IT業界は流動性が高く、トレンドも人気も変わります。調子が良かった企業が衰退するケースもザラにあります。それでいて専門性が高いのでトレンドが追いにくいという特徴があります。

 IT業界そのものの動向は中途の場合だと1シーズンもあればすっかり変わるほどです。新卒の場合は1年単位で変わらないはずがないというものです。私も新卒就活に関わる際は「今年の動きはどうですか?」と料理人みたいな質問をほうぼうの紹介会社でしています。

図解:【比較】ITエンジニア就活 2014

 昔、ASCIIで連載を持っていたことがあり、そこで新卒の皆さんの就活傾向についてお話したことがあります。2014年ということでちょうどアベノミクスが始まる前年です。

 この記事を見ていただくとお分かりになるかと思いますが、当時のITエンジニア就活はプログラミング経験者が少なく、目立ったエンジニア採用イベントもなく、現状に比べるとフラットさがありました。私は2012年に博士修了とともにビジネスに転向してきたので「こいつは新卒?中途?」と珍獣を見るような扱いで両方の就活を経験しました。

 資金力が桁違いだったソーシャルゲームの会社さんについては別格で、当時から学生相手にプログラミングテストや濃いめの技術面接をしていました。私もある超大手ゲーム会社さんを紹介会社さんの勧めで受けていましたが、全体でWEBテストを受験し、突破したら説明会に呼ばれます。その後、個別に呼ばれて個室で「テキストエディタに次の設問に従ってプログラムを書くか、これまで書いたソースコードを出せ」という問答が行われていました。今振り返ると感情設計もへったくれもない買い手市場でした。

 それ以外の会社は適性検査がせいぜいでした。就活生の方も学生時代からしっかりとプログラミングをやっていた人や少数のプログラミングバイトをしていた人を除けば、今の総合職採用と同じく知名度順で片っ端から受けていく傾向がありました。上記の記事でも「業界研究をして知らない会社から『合う会社』を探そう」という内容を話しています。

図解:ITエンジニア就活2015-

 2015年のアベノミクス以降、新卒採用シーンが大きく変わります。ハッカソンイベントが新卒採用イベントで実施されたのもこの頃でした。結構な値段を企業側が払って週末に企業数社、学生20人くらいが集まっていました。私も企業側で参加。当時はハッカソンという言葉の馴染みも薄かった頃で、高額な費用と週末を犠牲にした結果が「どのチームも完成せず」「かろうじて1組だけできたHTMLを皆で見る」という軽い地獄が広がっていたのを覚えています。

 そこからサマーインターンの一般化などを経て、ある程度書ける人材が就活生の中でも一定数現れます。よりできる層は渋谷のメガベンチャーで就活などせずにアルバイトをしていたりする状況になりました。そして2018年ころからのデータサイエンティストブームへと繫がり、少子化と相まって「できるプログラマ」の希少性は増していきます。詳細は以下のコンテンツに譲りましょう。

 その結果、ITエンジニア就活生にも区分ができるようになってきました。

A)データサイエンティスト(論文誌・国際発表あり)
B)データサイエンティスト見習い(授業でやった)
C)WEBプログラマとして有名メガベンチャーで働いていた
D)WEBプログラマとしてスタートアップ、小規模SIerで働いていた
E)サマーインターンで目覚めた
F)プログラミングスクールに課金している
G)ITエンジニアになってみたいと思っている

 補足ですが情報系の学生についてもA-Gのどこかに居ます。

 2018年の就活イベントに行くとBがやたらと居ました。Bはデータサイエンティストこそが21世紀で最もセクシーな職業だと疑っていなかったのでデータサイエンティストの募集枠に殺到していました。中には「データサイエンティスト」で母集団を形成後、オファーの段階までにプログラマとして着地させる大手企業もちらほらありました。

 既に第一線のプログラマであるCはそのまま就職する傾向が強く、ほぼ就活市場では見かけません。たまにハッカソンイベントで無双しています。

 勢い、プログラマを新卒採用しようとするとA-Eの奪い合いになっていました。A-Cはほぼ指向性が固まっているのでなんとか振り向いてもらうためサマーインターンやハッカソンがズラリと実施されていたわけですが、図にすると下記のような感じです。

就活企業ヒエラルキー (2)

 国内において絶対王者はGoogle様。次に渋谷六本木紀尾井町あたりのメガベンチャーがずらりと並びます。2019年には連合軍も組織されていました。事情を推察するにこの頃はEの層を中心にサマーインターンを7社くらいハシゴするのが常態化していたので、日程の被りを防ぐためにも大手同士が手を組むというのはありえなくないなと思ってみていました。しかしこのクラスに組まれると付け入るスキマはほぼないですね。実際のところ、青の集団なのだけども昔のイメージとプライドで赤の集団だと思っている企業はあるので、別に青集団の選考が楽というわけではありません。そこが難しい。

 このように渋谷六本木紀尾井町の動きが激しいので、その次の集団は苦戦を強いられます。イベントには呼ばれる。良い人も居る。その場の満足度は高い。しかし後日見向きもされない。なかなか世知辛い戦いがこの後続集団にはあります。よく見るとかつては誰しもが受けていたような大手SIerがこの集団に居ることに気づきました。クチの悪い有名大学の先生に言わせると「優秀層上位10%は御社ではなくメガベンチャーに行く。SIerにはその次の層が行く。優秀な層が欲しければもっと頑張りなさい。」とSIerのリクルーターに檄を飛ばしていたとも聞きます。

ITエンジニア就活を有利に進めるには

 これまでお話してきたように、ITエンジニアで就活中の皆さんは就活生も企業側もそれぞれが天下一武道会のようになっているのを意識しておくべきです。有名なベンチャーだからと順番に受けていくと何も起きないと言えましょう。2年次くらいからプログラマのアルバイトをしておくことをオススメします。

 そうでない場合、緑の集団で自分にあう会社を探すために業界研究をしましょう。ここを怠って就活後期になると破れかぶれになって違う職種(プログラマ志望なのにインフラエンジニアに行くとか、情シスに行くとか)で妥協する人が現れます。妥協すると半年で辞める人がここ1-2年は多いので気をつけてください。無駄に履歴書の行数を増やすこともないでしょう。

 プログラミング学校は既卒の未経験エンジニアが職務経歴書に書いても厳しいですが、新卒の場合は「お金をかける覚悟がある」と評価されるケースがまだ残っています。必須ではないですけどね。

 もうそんな時間がない場合もプログラミングの勉強はしておいて損はないです。個人的には「週5日、毎日8時間プログラミングをしてみてどう思うか確認しておいてほしい」と伝えるようにしています。

 プログラミング経験のない場合は、適性検査だけで入れる企業になると思いますが、業界研究だけは怠らないようにしてください。

 非常にポジショニングが興味深いのがレバテックカレッジです。既卒未経験ではなく新卒。言語はPHP。学生側に覚悟を求める(一般的なプログラミングスクールよりは控えめな)月額制。これはつまりE-Fの層を育成して青の層に渡すという取り組みだと捉えています。一円も入らないので紹介に全くの他意がないのですが、私のボヤキに近い業界開設を彼らなりに形にしたのかなと思っています。

 では、続いて過去記事を引き合いに出しながら各職種をざっと触れていきます。そういえばデータサイエンティストがないですが、既にポジションが埋まりつつある上、体系だった学習済の上記Aの層の存在もあったりするので何らかのバックボーンなしでは厳しいと思います。TJOさんの記事あたり読んでみてください。

職種を理解する:自社サービス・メディア、SIer、SES

 Twitterのやりすぎで「SIerとSESってやつにはなりたくないです。なんかダメなんですよね?」という就活生が一定数居られます。現場によります。そして(是非はともかく)フリーランスを目指すならSESが最短経路です。

職種を理解する:インフラエンジニア

 未経験エンジニアがプログラマの就活に疲れて行き着く傾向にあります。全くの別ものなので注意が必要です。私は好きですよ、インフラ。

職種を理解する:情シス、社内SE、コーポレートエンジニア、ヘルプデスク

 エンジニア就活をしていると「システム部」という言葉が出てきます。「IT企業に限ったものではないらしい。要件も違うような気がする。」そして迷い込んでいく方が一定数居られます。求められるものはインフラエンジニアとも違います。システムも人も好きでないとできません。

業界を理解する:企業のフェーズ

 先の2014年のASCIIでもお話しましたが、就活が後期になり余裕がなくなってくると「なんか内定が出た」「集団面接会で優しく声をかえてくれた企業」「学生時代に出入りしていたスタートアップ」などに入るケースが多く出てきます。その結果良いように転ぶことも当然ありますが、後から帳尻を合わせるのが難しいのが「企業のフェーズ」です。

 大手からスタートアップに転職するのは難しく、スタートアップから大手に転職するのもまた難しい傾向にあります。後々響いてくるポイントなのでここは押さえましょう。

まとめ:まずは業界を理解しよう

 再掲ですが、何よりも業界を理解し、自身が応募しようとしているポジション、及び応募先企業が求めているポジションでの働き方を把握しなければなりません。

 IT業界から遠い専門分野の方には難しいことかも知れませんが、複数の情報ソースをあたり、働き方のイメージを掴むところから始めましょう。需要があれば第二回、第三回と就職相談会をするかも知れません。

 最後になりましたが、インターネットの恐ろしいところは自分にとって聞こえがいい情報が、それが例え事実と違っていても転がっていて信じてしまえるところです。すごく明確だったり力強かったり、それでいて妙に集金システムが発達していたりするタイプの情報には特にお気をつけください。

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