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「もしもあの時違う選択をしていたら?」〜『パスト ライブス/再会』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『パスト ライブス/再会』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)



美しい映像に包まれて心地よい感覚になる、優しくてほろ苦いラブストーリーでした。
特に大事件が起きるわけでもないのに、淡々と心の機微を繊細に描き出す表現に、映画の最後まで惹きつけられました。
監督の実体験をベースにした物語だそうですが、多くの人の胸に届く普遍的な物語になったのは、「もしもあの時違う選択をしていたら?」という誰もが一度は思い浮かべる問いを、「縁」を軸にロマンティックに描いているからだと思います。

なんといっても印象に残っているのは映像の豊かな美しさです。35mmフィルムカメラで撮影されたことにより、温かみのある粒子感が生まれていたと思います。また、どのシーンを切り取っても、そのままポストカードにして手元に置いておきたくなるような詩情溢れるカットばかりで、見ているだけで幸せな気分になりました。

グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロなどの演技も、細かい表情やセリフの言い方の一つ一つから、様々な感情が伝わってきて、見応えがありました。

監督・脚本を務めたセリーヌ・ソンの次回作が楽しみです。

映画を見ていてふと思ったのは、観客が懐かしく思うものや時代はアップデートされていくのだなあということです。
例えば、Facebookで昔好きだった人を探すあの感覚。
ちょっと前までは、疎遠になった人をFacebookで探すという行為は現代的な事象だったと思いますが、今作では、懐かしいこととして描かれていたと思います。「10年くらい前にみんなやってたよねー。」というような感じでしょうか。

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