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一筋縄ではいかない風刺劇〜『アメリカン・フィクション』感想(ネタバレあり)〜

(以下、映画『アメリカン・フィクション』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)



一筋縄ではいかない様々なレイヤーが重なった複雑な味わいのある風刺劇で、とても楽しめました。

何気ないセリフやカットの一つ一つに複数の意味やユーモアがこめられており、特に文学賞の会議において、「今こそ黒人の声に耳を傾けなきゃ」と言いながら、その場にいる黒人の意見を無視した決定を下すシーンは、皮肉が効いていて最高でした。

主人公が生み出した架空の人物が一人歩きして大事になっていく様は、映画『シモーヌ』(アル・パチーノ主演)や『あなただけ今晩は』(ビリー・ワイルダー監督)、『トッツィー』を連想させるような設定で、ウェルメイドなコメディとして笑えました。
そして、白人に迎合するような小説は「リアル」じゃないと思いつつ、自分の家族という「リアル」から目を背け続けていた主人公が、母親の病気や兄弟との確執に真剣に向き合っていく様は胸にグッときました。しかし、そんな「リアル」さえも、最終的にはハリウッドの白人男性のプロデューサーによって、ステレオタイプな「黒人的な」物語(曖昧な結末やラブストーリー風の展開は否定されて、主人公がFBIによって銃殺される結末が採用される)に回収されていくというラストには笑わせられながらも、ゾッとさせられます。

また、ジェフリー・ライトの演技が素晴らしかったです。目の動き一つで、悲しみや喜びや、戸惑いを表現する様には心奪われました。

今年のアカデミー賞の脚色賞を受賞したのも納得の出来の今作。脚本・監督を務めたコード・ジェファーソンの次回作が今から楽しみです。

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