見出し画像

明日から留学するあなたへ(フランスの大学で1年生を終えた私の記録)

フランスの大学の文化人類学部でなんとか一年生を終えた、2023年の夏。どうにか2年生になれるらしい。よかった。

自分が既に、この1年のことを忘れかけている(忘れようとしている)ことに気がついた。
この1年間を振り返って主に思い出すのは、主に3つ。
病に伏せってベッドの中で丸くうずくまる私。教室で講義を受けている私。そして図書館にこもって何か勉強している私。

それ以外はあまり覚えていない。
うーん、既に暗い。

普段は自分のしんどかったことはそんなに人と共有しないようにしているけれど、なんだか記録に残したくなったので、書いてみる。

夏は、留学を始める人が多いシーズン。新天地での新生活。ドキドキすることだろう。その人たちに、私の経験をそっと共有したい。


一時帰国を終えて9月にフランスに戻り、燦々と輝く太陽の下、陽の当たらない部屋の中で、大学が始まるまでの時間を恐々と過ごした。
フランス語を勉強し始めて2年もたたない私が、どうしてこの国で大学生活を修められるだろうか、と。

在仏暦の長い日本人の方にはよく、「日本人学生がフランスの大学に来て留年するのはよくある当たり前のことだ。できることを頑張ればいい」というお慰みの言葉をよくいただいた。「私も留年するのかしら」とぼんやり思っていた。「留年したら、やだなあ」とも思っていた。

大学1年生が対象の授業オリエンの週が始まった。まだまだ気温の高い9月初頭、エアコンが無くて外よりも暑い講堂で、説明を受けた。
笑えるくらい、何を言われているのか分からなかった。パワーポイントに写し出される情報などの目で得られる情報にすがって、過ごした。この日に既に何人か友達ができて嬉しかったが、やはり何を話されているかあんまり分からなかった。そういえば、このときに出会った友達のひとりはいつの間にかいなくなっていた。退学したらしい。

次の週から授業が始まった。一コマ120分。もちろん全てフランス語。何を言われているのかよく分からない、120分。長いこと、長いこと。
全ての授業の初回時に、「私は外国人学生で、授業を全て理解するのが難しいんです。何か授業前に準備できることはありますか?」と教授に聞きに行った。
「あっそ」みたいな対応の教授や、「あらあ、そうなの〜」みたいな対応の教授がいた。別に特別扱いしてもらえるわけではない。「授業前に、プリントのデータとかサイトにあげるから見たらいいよ〜」ということをほとんどの教授に言われた。でもここはフランス。そんなに手際よく計画的に毎回授業前にプリントを上げてくれる教授はほとんどいなかった。

当時私がよくズームをしていた人が言っていたのだが、この頃の私は「授業は1、2割分かる」と言っていたそうだ。1、2割しか分からない講義を毎日数コマ受けていたのは、しんどかっただろうなあと思う。
毎日授業を終えて家に帰ると、服も着替えずに倒れこんで眠っていたことだけ、覚えている。毎日、毎日、家に着く頃には余力が無くて、倒れるように眠った。空きコマがあれば、その間も眠った。だから、この1年で大学中の眠りやすいスポットはたくさん見つけた。

そんな中で、初めての発表する授業があった。「時事問題やニュースと報道のされ方にどう向き合うか」という授業だった。聞いても聞いても分からない講義を何週間も受け続け、はいそれでは発表のターン、という感じだった。

発表はグループで行われた。この1年の間ではグループ発表がたくさんあった。言語的に、私はみんなの足を引っ張ってしまいうると思うのだが、私を避けたりするクラスメイトはいなかった。むしろ積極的にグループになってくれて優しいと思った。
まあ、今振り返って考えれば、フランス語ネイティブの学生でも当日にぶっちするような輩はたくさんいるので、その点私は少なくとも極力真面目にベストを尽くしていたので、そんなに悲観的に考えることはなかったよなと思う。

日本語では人前で話すことに少し自信があったのだが、もちろん上手くいかない。
まず、カンニングペーパーなしで発表に臨むことができない。あったところで、音読に詰まる。発表の前は、友達に私が作った原稿を添削してもらって、それを読み上げてもらってそれを録音する。
ひたすら聞いて、練習した。自分でもスラスラ読みあげられるようになってきたと思ったら、自分の読み上げを録音してみる。聞いてみると、完璧からは程遠い発音。これで意味が伝わるだろうか、というレベル。辿々しく文を読み上げるのにも時間がかかって、録音時間は友達のそれの、倍近く。

それでも、音読、音読、音読。
そして、本番。やりきりはしたが、たかだか2、30人の前で発表するだけなのに、うまくいかなかった。それでも同じグループの友達は、「私たち、いい仕事した!あなたも、よかったよ!」と。

完璧にはできなかったけど、達成感はあった。


こんなところで、ざっくり1年生の前半戦終了。テストについては前の記事で書いたので省略。

何事も大体、やれば出来るし、やって出来なかったらしょうがない。
そんなことを、学んだ。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?