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やんわりNOの文化

日本には「ツーカーの仲」とか「雄弁は銀、沈黙は金」という言葉があって、みなまで言うなという文化が根強い。
事細かに説明しなくてはいけないより言葉なしで伝わった方が圧倒的に楽だしその点でいいよなあと思う。

私は現在フランスに住んでいる。外国に住み始めた当初、きっぱりとした「no」の言い方に気圧されたり密かに傷ついていたことは記憶に新しい。


例えば、フランスのジャパンエキスポでおにぎり屋の屋台で働いていた時。レジを担当していて、お客さんがはけたなーなんて思っていたら、つーっと30代くらいの女性が屋台にやってきた。「おにぎり?って具体的にはどういうものなの?」とその女性。「お米の中に具を入れて握って、海藻を巻いているの」と伝えると、
“D’accord! Je n’aime pas trop!”(なるほどね!あんま好きじゃないわ!)
とビッグスマイルで去っていった。そのあけすけな言いように面食らったが、彼女の嫌味のない様子に、そんなに悪い気はしなかった。

私は外国暮らしより日本で過ごした時間が圧倒的に長いのに、最近日本人の発するnoが察知できずに困ることが増えてきた。


なにかの会がお開きの雰囲気になり、一緒に参加していた友達に「そろそろこの会から帰る?」と聞いた時。

友達「うーーん、私は、まあ…うん…(にこっ)」
私(あ、この子決めかねてるんだ!いいよ、考えて考えて!私時間あるし)にこっ
友達 にこっ
私 「…えっと、どうする?」
友達 「え?(私は帰らないってば)」
私 「え?」

という。

勝手に察するに、帰る気まんまんの私に、はっきりnoと言いづらかったのだろう。


日本と欧米で文化のギャップがあるが、

言われてないことを察する、見えないものを見ようとする分、「日本→欧米」の適応より「欧米→日本」の適応の方がよっぽど難しいのではないだろうか。



また、バイト探しの時なんかは尚悪かった。

バイトがしたいけれど募集は出ていない。メールアドレスも見つからない。ダメもとで、「上記に該当しない質問はこちらに」というお問い合わせフォームにお伺いをたててみる(少なくとも他の会社では取り次いでもらえることはあったのだ)。

私「求人が出てないのは分かっているんですが、バイトさせて貰えませんか?」

◯◯社 「直接回答しかねるんですけど、求人はこちらのサイトにご案内が〜」

私 「(断られていることに気づかず、)フォームにも入力した通りそのサイトはもちろん見ていて、それでも見つからなかったのでこちらに…。」

◯◯社 「しつけぇな!ここでは答えられないっつってんだろ!!(意訳)」

私 えーーん じゃあ1ターン目でそう言えばいいじゃーん。

という。



最近気づいたが、フランス式でぱっきり断られて傷つく事象と、日本式にやんわり断られて傷つく事象では、胸の痛む部分が違うようだ。日本式の方が傷ついた時に尾を引くような。「…え、あれ私が悪かったの…?」みたいな。 



まあ本当、文化というのはどちらが良い悪いというものじゃないけれども。

他の国では、どうなんだろう。

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