【ネタバレ感想】放課後保健室

水城せとな作「放課後保健室」

ネタバレありです。

評価:あまり好みには合わない作品でした。

主人公・真白は上半身が男性、下半身が女性という特異な身体を持っています。普段学園では男性として過ごしていますが、先日初潮がきてから性自認が揺らいでいる状態です。
主人公はある日、妖しい女性(保健の先生みたいな格好)に呼び出され、学園の地下にある保健室を訪れます。先生が言うには、学校を卒業するために「特別授業」を受けてもらうとのこと。

その「特別授業」というのが、夢の中を舞台に他の参加者と激しく戦うというもの。「特別授業」を受けている生徒は他にも何人かいるのですが、夢の中では本当の心を象徴した姿で現れるため現実の姿は不明です。ニョロニョロした長い手だったり、黒い鎧姿だったり、大きなキリンだったりします(主人公はなぜかスカートを履いている)。
参加者だれか一人の身体の中に鍵が入っていて、それを使って扉を開ければ卒業です。ただし卒業した人のことは皆忘れてしまうようです。
心に一定以上の強いショックを受けると現実世界で目が覚めます。今回の授業は残念だったね、また来週、となるわけです。

ここまで読んでいただければ分かる通り、わりと重めの作品です。ギャグ要素はほとんどなく、少女漫画にしてはグロいシーンもあります。ダークファンタジーに分類されるのでしょうか。

個人的にうーん、と思ったのは二点です。まずキャラクター。というか主人公の真白。
いくら男と女で揺らいでるからって周囲の人間を振り回しすぎなのでは?

紅葉(ザ・女の子という見た目の可愛い女子)と深い仲になったかと思えば、次の話ではもう蒼(なぜか主人公に突っかかってくる系の遊び人イケメン)のことが気になる……! でも黒崎先輩(部活の先輩で優等生イケメン)にもときめいちゃって……みたいな。

しかも作中でも言われている通りかなりの無神経。例えば、みんなに注目されたくて嘘の噂話を流す女子に「誰?」「ごめん他のクラスのことは分からなくて……(※クラスメイト)」的なことを言うレベル。

他のキャラも最初はだいたい性格が悪いのですが、話が進むにつれて成長していきます。主人公にだけは最後まで共感できませんでした。

そして二つ目にうーんと思ったところはオチです。
そもそも「伏線回収が素晴らしい」と聞いて読んだのですが、その点については確かに良かったです。

ネタバレをしてしまうと主人公含め学校の生徒たちはまだこの世に誕生する前の魂です。学校そのものが仮想世界であり、生徒たちが抱える悩みはそれぞれの宿命を想定して設定された模擬試験のようなものです。

特別授業をクリアして卒業する=現実世界で産まれるということらしいです。主人公は本来男女の双子なのですが、母親の入院先が火災に見舞われてしまい一人しか産まれることができないため、生きる権利を賭けて男の自分と女の自分が争っていた。上半身が男性、下半身が女性なのもそのためです。

上記については確かに伏線が張られていて、あーなるほど、うまいな、と思いました。でも物語の〆はあまり好みではありませんでした。

主人公が卒業しようとする直前に学園が少しずつ崩れ始める(仮想世界の崩壊。火事の影響?)→残されたメインキャラ+モブが主人公の卒業を祈る→主人公(女)無事誕生、みんなのことは忘れて現実世界で育つ→部活に向かう途中、駅で蒼(↑のイケメン)に似た人物とぶつかるが互いに気づかない。というもの。

結局メインキャラたちは産まれたの? 産まれなかったの? という感じです。謎を残す終わり方は余韻が残るかもしれませんが、最後があまりに駆け足すぎて余韻に浸る暇もありませんでした。

ここまで書いてて何ですが、話の展開自体はとても面白かったです。途中でダレる感じもなく、最後まで一気に読むことができました。それと同作者の「失恋ショコラティエ」でもそうなのですが、人間性に少し難がある登場人物を動かすのが非常に上手いなぁと思いました。

多感な十代の少年少女に共感できれば好きになれた作品だったのかもしれません。
もっと若い頃に読めていれば……_(:3 」∠)_

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