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プロ 音楽編 text by ナカノ no.3

 この疑問は私の中の片隅にあり続け、だんだん形を変えて、「プロではない私が音楽をする意味とは何だろう」という疑問までわいてきた。どうしたって、プロよりうまい演奏ができない私がプロと同じ曲を演奏して、お客さんに何が届く?自己満足で終わる演奏を音楽といえるのか?お金をいただく演奏会になると、お金をいただくのが申し訳なくなる時もあった。

 このように悶々としながらいつの間にか大学生になり、初めての演奏会を迎えた。その演奏会では回生ごとにオーケストラを編成し、順番に演奏する幕があった。一回生の演奏の後に演奏された上回生の演奏は、一回生のそれよりよっぽど洗練されていた。悔しいというより、自分たちが演奏してよかったのか、不安になった。

 後日、私はその演奏動画を、演奏活動に関して相談に乗ってもらっていた方にお見せする機会があった。私はその方が下さった言葉を忘れることができない。

 「粗削りだけど、溌溂として、初々しくて、愛おしい今しか出せない音なのよ。伝えたいことがありすぎて、ばーっと話してる感じ!」

 ぱんっ!

 この言葉は、私を包んでいた、周りが歪んで見えるシャボン玉の膜のようなものをはじけさせた。それはそれで、価値なのだ。使っている楽器や楽譜は一緒でも、生み出す拍手の質は別物なのだ。

 この私の発見は、我ながらこの類の「プロ」と「アマ」という関係において、本質的な部分の一つだったかもしれない。なんて思う。

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