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プロ 音楽編 text by ナカノ no.2

 ここで、私が「アマ」として活動する音楽について話しをさせてほしい。

 私も、中学生のころから始めたファゴットの演奏をなんだかんだ続けていて、今年で四年目になる。音楽の複雑な構造の中で自分の役割を考えること、美しい音を出すために姿勢、道具に関して研究すること、曲の中で一緒に演奏しているほかの楽器を思いやり、思いやられること。これらは一例に過ぎないが、個人的なことから百人以上のチームプレイに至るまで、美しい音楽を作るために試行錯誤を重ねることは、常に悩ましく、そして楽しい。今思えば、年数を重ねるごとに苦しみも楽しみも反比例するように深まっていて、とんでもない沼に足を踏み入れたことよ、としみじみ思いながらも、引き続きずぶずぶはまっていく日々である。

 このようにアマとして音楽活動をする中で、好きなプロの方の演奏を聴いたり、CDを買ったりすることもある。まだ楽器を始めたころは、「こんなにも魅力的で、完璧な演奏ができたらどんなにいいだろう。」「言葉も使わず、音の連なりだけで人をこんなにも感動させられるのか。」などと自分が抱えるファゴットに秘められた可能性に気づかされ、心が震えた。

 そして何より私が感じたのは、「こうやって音楽で食べていけたら、どんなに幸せだろう。」ということだった。自分もお金をもらいながら大好きな音楽を続けられ、しかも人を感動させられる。こんなにもいい人生があるだろうかと夢見たものである。

 結局、私は進路選択の際に音楽をとらなかった。それでも今も音楽は常にそばにあるし、好きな気持ちは変わらない。しかし、たまに考えてしまう。もしもプロの奏者を志していたら、今と何が変わっていただろうか。


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