見出し画像

やばい、まじやばい!  美咲さんの破壊力がすごかった (Rewrite)

やばい、まじやばい。
何がやばいって、職場の先輩の美咲さん。もう無敵。破壊力抜群。

美咲さん、美人でいつもバリっとしてて、一見仕事も超できる系。
でも、とにかく機転とか想像力とか言葉の裏を読むとか、そういったことが苦手・・・というか、そういうセンス皆無。持ってない。
言われた事をそのまんま受け取る。文字通り受け取る。
冗談とか皮肉とか全然わからない。 

この前、うちの取引先の吉原製菓に美咲さんが行ったのよ。
美咲さんが担当だから。
うちのコピー複合機を全社で使ってもらってるじゃん。
その一斉更新時期なのね。5年に一度の。
うちとしては大きな取引き。
部長、課長も営業かけて力入れてた。

で、相手の窓口が総務の梶原課長。
共栄大の体育会ゴルフ部のキャプテンだった人。昔ね。
ばりばりの体育会系。
めちゃきついこと言う人。
部下にも出入り業者にも。態度とか言葉遣いとか最低。

「お宅のところまだ高いんだよ。F社より。ったく、価格どうにかならんの? え?」
てな感じで、リース期間終了ぎりぎりで、美咲さんに価格交渉しかけてきたわけ。梶原課長。
そういうことするのよ。女だからって軽く見て。

「はあ、無理ですね」と美咲さん。
強面の梶原課長にそう言われると、普通の営業だとビビるけど、
美咲さんはそういうの全然わからない。

「無理って何んだよ。このままだとF社に決めちゃうよ。それっていいの? え?」

「御社がF社に決めることが、いいことか、悪いことか・・・ですか?」

「そうだよ」

「御社は悪くないと思います」 
美咲さんはこういう質問苦手。全然意味わかんない。

「はあ? じゃあ、F社にしちゃうよ」

「F社にしちゃうんですか?」

「そうだよ。俺も部長も役員も今のままならF社。みんな同じ考え。あんたの判断で値引きできねーなら、上と相談しろよ」 

「上と相談してこの価格です」

「じゃあ、話になんねーよ。くそ高くても我慢してつきあってきてんだよ。ずっと。それならもうお終い。お宅とのおつきあいは」

「おつきあいがお終いというのは、うちと取引を終了するという意味ですか?」

「それしかないだろ。お宅は品質も二流なら会社も二流、社員も二流。価格ぐらい頑張らないと、うちの取引先としてふさわしくないってことだよ」

「はあ、取引先としてふさわしくないんですか?」

「そうだよ。会社帰って上の人にそう言えよ。吉原製菓がそう言ってるって。わかった?」

「わかりました」

って帰って来ちゃったんだな。美咲さん、粘るとかないから。
てか、そもそも梶原課長がそうやって美咲さんを挑発して、値引き交渉してるって全く理解できない。

で、うちの課長に報告した。ど直球で。録音したスマホといっしょに。
美咲さんメモすんのメンドイとか言って、時々スマホで録音してんだよ、客の言うこと。 
「吉原製菓さんですが、取引終了とのことです。うちは品質も二流なら会社も二流、社員も二流なので、価格で頑張らないと取引先としてふさわしくないからだそうです。これまでくそ高くても我慢してつきあってきたけど、取り引きはお終いとのことです。」

これが役員レベルに上がって大問題になった。
吉原製菓って、うちの全国の事業所の食堂や売店で大量に菓子パンやお菓子入れてるじゃん。
あれぜーーんぶキャンセルになった。
あとうちの代理店を春と秋に集めてやる全国代理店大会のお土産にもあそこのお菓子を使ってたけど、それもぜーーんぶキャンセル。

うちは品質も会社も社員も二流でお宅の取引先としてはふさわしくないそうだからって、うちの役員が向こうの営業部長呼び出してそう言った。
その部分の音声エビデンス付きで。

で、向こうは社を挙げての大騒ぎになった。
向こうの常務の営業本部長が慌てて飛んで来て、きっちりうちに詫び入れたって話だよ。

梶原課長? どっかに飛ばされたみたいよ。 

美咲さん、梶原課長って飛べたのねーって能天気なこと言ってたから。


よろしければサポートよろしくお願いいたします。